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魔物資源活用機構  作者: Ichen
整い
3117/3124

3117. 旅の五百十八日目 ~ファタス他示された道・心臓取り、供物、決戦前配置『段取り』・レムネアクの役目

※明日の投稿をお休みします。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 歌が終わり、奥に立っていた人々が姿を消す。

 彼らが霞んで見えなくなる方に気を奪われて、はたとすれば、上方を包んだ煙もなくなっていた。三人のクノキアは客人の座に戻り、ゆっくりと皆の反応を見てからドルドレンに話しかける。


 でもそれは、話しかけるというより、解説。


 ドルドレンは相槌を打つが、質問を挟まずに聞いた方が良さそうで、合間なく代わる代わる話す三人の話を丁寧に()()()


 その場にいた誰もがドルドレンと同じ感覚であり、歌の途中でもらった答えは、邪魔してしまった後ろめたさもあり、黙って聞くに徹する。



 祈祷師の占いは、ざっくばらんな回答投げっぱなしが多いが、クノキアは、歌声の返答した個所を取り上げて、占いの説明してくれた。


 地図を側に引き寄せ、ファタス島がどの辺りにあるのかを教える。ファタスは北部の海にあるが、島という形より、地続きの浅瀬伝いで行けそうな場所にあった。


 旧教の外伝に、このファタスとエハリディオ、両方の名が出てくるという。


 ボニメツァ初期(※ヨライデ昔の呼び名)に、意訳の傾向が強いとして研究を放棄された分派の書で、『片目しかないエハリディオ』という墓守が登場する。


 三つの供物を携えた人が主役・予言書フーレソロ(※2978話参照)、その数章前に登場し、エハリディオが殺されると、死を知らせるように()()()()()文がある。


 誰に殺されるのか。

 殺した何者かがどうなるか。


 それらの記述はないそうで、『墓守のエハリディオが殺され、海が割れる』ことも、供物が別の世界へ行く前兆の一つだった。



【 光が弾け、世界が揺れ、大きな衝撃によって、これまでが終わる時・・・ 】(※2978話参照)フーレソロ出だしの一文は、エハリディオの死が関わると、クノキアの住人は教えた。



 *****



 この後、具体的な話には至らないものの、いくらかの問答はあった。


 城への道を先にした場合。心臓への道を先にした場合。この違いと比較は、それらしい説明に触れていない。


 重点が置かれた地名・何者かの名前・場所の出来事・風景・場所の特徴から、推察するように促されているのと同じ。ドルドレンは勿論、『城を先にしたら、心臓を先に求めた時とどう違うか』を直接聞いたが、繋ぐ予想の答えは得られなかった。



 手取り足取り、教えてもらうわけでもないのか。

 占いに出てきた重要事項に注意して、自分たちで選ぶもの。二通りの占いは、見えた風景が異なり、重ならない。重なったのは言葉のみで、ファタス島とエハリディオ、そして心臓と棺桶。


 謎解きに長けるタンクラッドも、じっと黙って考えていたが、タンクラッドが想像するにも要素が足りなくて、適当なことは聞けなかった。

 仔牛の中のヨーマイテスだけが、唯一、あらすじを理解したけれど。



 料理も食べ終わった頃に、バロタータが立ち上がって暇を告げる。


 不思議な時間はここまで。ドルドレンたちも、もてなしと貴重な占いに礼を言い、家を出る。外は夕暮れのままで、表に待たせた馬たちを馬車に繋いだ。クノキアの三人は表にいると霞んでしまい、声だけのお別れ。


 帰り道はバロタータが導き、来た時よりずっと早く里を抜け、夕焼けの鮮烈な眩しさが解けるや、真っ暗な夜に出くわした。

 でも精霊の犬は淡く光を保つので、立ち往生ほどの暗闇でもなく、淡い光に従って馬車を進める。


 傾斜から入った、摩訶不思議な夕焼けの道と里は、振り返っても影形なく、進む地面は若干の傾斜を伴うも、雑木林は過ぎたようだし、()()というほどひどくなかった。


 数分、馬車が進んだ時。夜空に、きらっと白い二つの星が輝き―――



「どこへ行ったかと思いました」


 風を起こして翼を返す、イーアンとフォラヴが降りてくる。待っていたんですよと言われたドルドレンは、彼女と部下に『おかえり』の挨拶・・・でも笑顔は出なかった。


 さほど進んでいないが、日付も越えたらしいと二人の挨拶から知り、馬車は停止する。馬車を止めたものの、では戻った二人を迎えて就寝・・・とはならず。



「話しておくことがあるのだ」


 笑顔少ない理由を、ドルドレンは持ちかける。他の者たちも馬車を降りてきて、イーアンはもう真夜中で、挨拶して就寝だろうにと、皆を見渡した。

 取り巻く表情に浮かぶ、緊張感。バロタータはいつものように静かで、透明な妖精姿のフォラヴを眺めていた。


「今から・・・?急を要するのですか」


 イーアンが聞き返すと、ドルドレンは頷いて御者台を降り、向かい合って立つ。なんか、そんなすごいこと?と目で驚きを伝える女龍に、ドルドレンは『決戦に関わるのだ』と息を吸い込んだ。



 *****



 クノキアの情報を聞いたイーアンは、先に心臓の偽場所を叩かないと()()()()になると理解――― 城へ直接行ったら、棺に手が出せない可能性が高い。


 ドルドレンの説明に沿い、イーアンの角の光の下、ミレイオが簡単な絵を描いてくれた。クノキアの祈祷術で見た煙る風景でも、ミレイオは要所を掴んでおり、イーアンも理解を深めた。


 気になった絵は、石造りの建物内にある墓室で、石棺のど真ん前に目がある。


 これがサミヘニの教えてくれた『オリチェルザムの目』とすぐに解り、『人間の血』を使う対象と知ったが(※3040話参照)、こんな()()()()にあって、バレないように血を掛けられるわけがない。


 『二つの棺に目は一つ』のヒントから、つまり守り人が、両方を見張っている意味を理解した。オリチェルザム本人ではなく、管理下の下僕といったところか。


 なので。魔物の王と戦っている間―― ドルドレンが対戦し始めた頃合いを見計う→心臓を取る、その方法は却下である。心臓にまさかの『二段階』が用意されていたとは。



 ―――『エハリディオ』は守り人として、心臓を狙う者を撃退する。

 到達しやすいファタスに来る強奪者を片付けることで、王城へ行かせないようにしているのかも。


 守り人を殺すのは、誰か・・・ これは私?と思ったが、二段階を踏むなら、実際の心臓を狙う私は王城近くで待機必須。ファタスで守り人を討つのは、()ではないことになる。


 二手に分かれて、囮の棺桶へ行く組と、王城へ入る組が必要とあれば。


 魔導士の話した過去では、東の洞窟から城の地下へ行くと、もう出られない。そこで仲間は、収集された魔物退治に明け暮れるよりないという。その間、ドルドレンはオリチェルザムの決戦に臨む。ということは。


 勇者→魔物の王決戦。

 仲間の一部→城の異時空で、魔物退治組。

 仲間の一部→ファタス島で、エハリディオ対戦組。

 女龍→心臓入手・獅子→心臓運び。


 ・・・の図が浮かぶ。仲間の誰が、エハリディオと対決するのか。

 クノキアの占いで『この世の半ばの存在、で。光を投げ、受け止めることが出来る誰か』とは。


 光はシャンガマックも魔法で出せるし、シュンディーンも使える。しかし、『半ばの存在』は妖精である。彼らは精霊の影響多き世界で、彼らの世界を桟橋に繋ぐように行き来する。

 それと、フォラヴの持つ『鍵』の立ち位置に連想が傾いた。



『閉ざされる異界の門の鍵、すなわち精霊の血族』『精霊の鍵ドーナル』(※370話参照)・・・フォラヴ。彼の代名詞。


 エハリディオを引き付けて倒すのは、妖精フォラヴなのではないか。センダラも妖精だが、彼女は『鍵』ではない。『癒す者』として表現されていた―――



 ザっと考えたイーアンは、少しのだんまりを終えて見守る皆へ顔を向け、心臓奪取(※女龍と獅子)についてはちょっと濁すことにして・・・

『エハリディオを倒す者』を中心に、クノキアの占い風景から思ったことを伝えた。



「それは、フォラヴでしょうか。と思いましたのは。別の場所にある二つの石棺、一方は、魔物が集中しているわけですから、王城内と捉えて良いです。そして、孤島を望む荒れた磯は、正しくドルドレンの立った場所から見据える、決戦の道」


 まず、ここで区切る。この話は魔導士から聞いていたが、皆に話さなかった。でも占いで知った後なら、告げる時期の到来と思えた。


『王城と決戦』の言葉で皆に緊張感が走るが、反対意見はない。イーアンは続けた。


「そうしますと、私は女龍ですから、王城に付き添う位置でしょう。

 魔法で精霊の光を放つシャンガマックも、最後まで勇者と一緒に進む役割でしたし、きっと王城で良いはず。

 ここにいる旅の仲間で、『光を操る』『半ばの存在』にふさわしいのは、妖精。センダラも妖精なので、光は自在です。でも、彼女とフォラヴの違いがあります。精霊の鍵と呼ばれたのは、フォラヴの方」



 白いナイフ、白い棒、最初の導きを担った道具には、フォラヴが鍵として示されていた。それを話すと、タンクラッドが一番先に『証拠だな』と頷いた。


 ドルドレンたちも言われて納得する。感覚的にそうではないかと思ったこと。ファタス行きに、フォラヴを想像した者は少なくない。

 バロタータは、フォラヴが戻った時に『間に合った』と言い、多くは語らない。今も何も言わずにいて、肯定している風に見える。


 皆の視線は、早々と決まってしまった妖精に集まるが、当のフォラヴは意外でもなかった。


 私が行くなら頑張ります、とあっさりしたもの・・・事情を詳しく話されていないのもあり、三つの供物の粗筋を聞いただけでは、フォラヴにさほど現実味もない。


 とはいえ、軽んじる性格でもないし、『決戦前の重要な任務』の認識はあるから、あっさり引き受けたのは、妖精の国で()()()()()による。



「・・・この場で決定してしまって良いものか。しかし、いつ追い込まれて相談もできないなど、無いとは言えない。イーアンの意見に反対する者もいない、俺もそうかと感じていたこと。これは満場一致とするべきか。だが」


 フォラヴ一人行かせるなど出来ないので、付き添いも考える。これは旅の仲間ではなく、同行者に振る。飛ぶ手段を持つミレイオ、そして、剣を渡してしまうルオロフが候補に挙がった。


 精霊ファニバスクワンが学びを目的に預けたシュンディーンは、決戦に関わる状況への参加は違うとされ、彼は外される。


 また、ルオロフ同様に武器を手放すレムネアクも、人間離れした動きは不可能なので、これは誰が言うより早く、バロタータが馬車へ残るよう言った。



 ただ、バロタータは―― 振り向いて頷いたレムネアクに『道を知るお前に、最後の道は開かれる』と妙なことを言い・・・・・・ 



 サワッと首を擦るような怖気に似た響きを感じ、イーアンが精霊を見ると、犬は女龍に『いつの舞台も、陰の功労者がいるのだ』と意味深に続け、はぐらかした。


 バロタータがそっぽを向いて、レムネアクについての問いかけは終了。しかしこれが、誰も想像しなかった未来の一部に変わる―――



 そしてホーミットも、ファタス島手伝いは外される。

 女龍が取った心臓を、供物として人間に届けるのだから当然だが、皆には隠していること。だからこれはイーアンが機転を利かせ、『ホーミットは途中まで、私の補佐について下さい』と頼んだ。


「私は、失敗してはならない場所へ入ります。知恵を頼りたい事態もあるので」


 非常に珍しい、女龍から獅子への頼み。誰もが『えっ?』と驚いたが、更に珍しいことで獅子が『分かった』と返した二つ返事に皆は引く。


 シャンガマックすら目を丸くしたけれど、仲の良くない二人の協力姿勢を茶化すなどなく(※効率に関わる)、それならそれでと了解。ホーミットは探られることなく、役目を維持。


 シャンガマックは旅の仲間で洞窟行き。ホーミットは、後から・・・()()()()行く。


 いつでも一緒がいいにせよ、世界の決戦に臨む日。

 勇者の仲間として選ばれている自分たちの務めを優先する。


 獅子は普段べったりでも、こういうとこがあるのよねと・・・当たり前かもしれないが、イーアンは心で褒めた。



 *****



 真っ暗な夜の話し合いは終わり、ドルドレンは皆に就寝を促す。


 お疲れ様、朝は少し遅くても、と声を掛け合い、午前にあった魔物退治・フォラヴが『血の祠』を対応するなどは明日に回した。

 で、タンクラッドは寝台馬車へ入る前に、イーアンを呼び止める。



「どうしました?」


「馬車の道と言い切られていた、クノキアだからな。お前に言っても、だろうが」


「私に頼みたいことでも」


「頼みというほどじゃないんだ。ただ、お前があの場所にいたら、俺と同じ意見だろうと思ったことがある」


 女龍が首を傾げ、タンクラッドは『サドゥの服』を伝える。尋ねたらピシャリと止められたことも気になり、イーアンに話しておきたかったそうで。


「顔つきは・・・人とは違ったのですっけ?」


「違うな。だが、龍のようでもない。精霊の力で守られたから、見た目も人間離れしたようだが、手もな。サドゥの鱗のある手に似ていた。もしかすると、お前が知っておくに良い相手かも知れん」


「有難うございます。気を回して頂いて」


 ニコッと笑った親方は、目で物語る。その目と笑みに、イーアンは『行ってこい』を感じ(※付き合いが長い)ちょっと固まった。

 タンクラッドは、理解したらしき女龍から視線を背後へ流し、『お前くらいになると、()()()()入り口が見つけられそうだよな』と・・・ 

 推すような一言を添え、黙るイーアンの肩をポンと叩くと、おやすみを言って荷台に入った。



 行ってほしいと、分かるけど。

 行ったところで会うとは限らないし、会えたとしても私は何を話すのか。


 タンクラッドは好奇心が強いから、きっとささやかな好奇心を満たせる話を聞き出してほしい、それくらいだ。


 たった今、決戦前段階の重要な話をした後で、コロッと切り替えられる好奇心に悩みつつ。

 イーアンも寝台に移動する。ドルドレンに、タンクラッドから聞いたことを話し、『気にしていたね』とお墨付きをもらい・・・もう遅いので、寝るのみ。



 それは、精霊サミヘニの手配だったかもとイーアンは思った。


 もしもサミヘニの手配で、ヨライデに残った人々なら。サミヘニは女龍の味方。もしかすると私も里に、入れてくれるかもしれない・・・


 眠りに落ちていく、途切れがちな意識で追いかけたのはそこまで。

 そして続きが、目覚めた後に待っていた。それも、未来予告の詰め合わせになるなんて。


お読みいただき有難うございます。

明日18日の投稿をお休みします。

この前、連続で休んだ時の仕事が、まだ全て片付いていなくて、また数日休まないといけない場合は、早めにこちらの前書きでご連絡します。

ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。


いつもいらして下さる皆さんに、心から感謝します。

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