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魔物資源活用機構  作者: Ichen
三つの供物
3052/3090

3052. 旅の五百五日から7日間中 ~町役場の地下道図・勇者の剣

 

 町役場を探しに出かけたドルドレンたちは、ミレイオの古い記憶を頼りに行ってみたたものの、ヘズロンの町役場は長い年月で庁舎を移転しており、探し回る羽目になった。



 飛べないのはルオロフだけなので、ルオロフはドルドレンが引き取る。

 大きな町だけに、都会育ちのルオロフ(※母国では)の意見を参考に、小一時間使ってようやく町役場を発見。


 ミレイオの記憶だと、昔は町の西側。今は、東側に移り、大通り沿いで町を横断する一本道。だけど、その一本道は新しく造った道だから、ミレイオは見覚えが無くて当然だった。



「わざわざ道を造った理由が分からないわ。それに東に移動したのも何でかしら。前のところは、趣もあって素敵だったのに」


 町全体を把握していたわけではなくても、ヘズロン東に住んでいたミレイオは、『確かこの辺って』と様変わりした道の両脇を見て、昔の風景を思い出す。


「もっと家とか店とか多くて。昔の石造りで良い雰囲気だったのに勿体ない」


 移転先の庁舎は大きく、新設した外観が目立つ。町の西で見る広場や建物の風景と、重厚さが違うのは一目瞭然。石畳の道に並ぶ建物も新しいものが多く、道を通すために壊した建物が相当だったと想像する。


 勿体ない、と何度も呟くミレイオを連れ、ドルドレンたちは人っ子一人いない町役場の階段を上がり、大きな壁に堂々と開いた扉―― 閉まっていない ――を潜った。中は整然とした・・・でもなく。



「荒らされたんですね」


 ロゼールが見当をつけて溜息を落とす。皆は暗い屋内を見回し、椅子が足りず、机が壊れ、棚にあったものが床に出された状態に、『屯していた悪人側が物を持って行ったのではないか』と話しながら、奥へ進んだ。


「(ル)扉が開いている時点で、そうですよね」


「(ド)あれだけの人数がいたら、こうした場所から家財を持って行くのは楽だろう」


「(ミ)でも、町役場じゃなくても・・・と思うけどね」


「(ロ)近かったんじゃないですか?」


 都合がいいからと、ロゼールが何となく言った言葉に、誰もが振り向く。言った本人も、自分の言葉に気づいて『あ』と入り口へ顔を向けた。


「この近くに、もしかして」


「そうだな。こっちへ上がる地下道の道があるのかもしれない」


 後で調べるとドルドレンは言い、今は役場の事務室へ。町民の対応をする部屋を抜けた壁向こうに事務室他、職員が使う部屋が並び、どこも荒らされた印象が否めない。でも書架は手つかずの棚も多く、ミレイオは早速、地下道の資料を探し始めた。


 ヨライデらしい、黒い木彫りの机と椅子。石の建物で床には敷物が敷かれ、壁は窓くらい。壁に使った石材の様々な色の組み方を、装飾として扱っている。


 ミレイオしかヨライデ語を読めないので、ミレイオが資料を探す間、他の者は建築見物。部屋の中を歩き回り、他の部屋も覗きに行く。ドルドレンも別の部屋に入ってみたところ、壁際に丸められた紙筒を見つけた。丸めた長さは1mほど。隣にいたルオロフと目が合い、何だか気になる紙筒を手に取った。


「これ。もしかして」


「いや。どうだろうな」


 さっと小さな一室を見回し、ルオロフはこの部屋だけが他よりも凝っている印象から『町長の部屋では』とあたりをつける。町長の部屋だと、町の遺産は飾られることが多いので、ドルドレンもそうかと思う。


「つまり、遺産だな」


「ですね。でも地下道の地図かどうかは」


 ミレイオに見せようと、広げた紙をまた丸めて、二人は事務室に持って行く。他を見に行ったシュンディーンとロゼールも戻っており、書架の向かいの机には、ミレイオの選んだ目ぼしい資料が積まれていた。



「ミレイオ。どうだ」


「あるにはあるんだけど、中身が。言葉でしか書いていないのもあるのよ。じゃなくて、見取り図が欲しいからさ・・・ 普通、あるもんだけどねぇ」


 装丁無しの綴り紐の資料を手に取り、パラパラと捲って『一部ならあるのよ』とミレイオは部分的に載っている図に指を置く。


「まとめ方がね。何か意味でもあんのかなって感じ・・・ 一冊にした方が見やすいだろうに、何冊にも分けて」


 奇妙そうに首を傾げるミレイオに、ドルドレンは持ってきた紙筒を見せ、これは地下道の地図?と尋ねる。ミレイオは地図の上部と、ところどころに記入されたヨライデ語に眉根を寄せて『そうかも』と呟いた。


「でも。小さいわよね?あんたたちが入った地下道って、こんな狭くは」


「うむ。広い印象である。これは全体ではないのか」


「違うわね。ええっとさ。ここに『8の水』って書いてあるんだけど、きっと区分だわ」


 地図の左が『8』で始まり、右側は『24』。上部は曲線止まりで、曲線下に数字があるが、24未満。下部に曲線はなく、そちらも8以降しかない。8~24の地区が入っているというミレイオは『どこで見つけたの?』と質問し、ドルドレンは先ほどの部屋へ案内した。


「町長室ではないか、とルオロフが」


「うん、そうね。だけど、町長の部屋にこれだけがあるって」


 宝探しとは違うが、少し考えたミレイオは宝探しの要領で、他の地図を探し始めた。



 庁舎内をあちこち見に行き、事務室に積んだ資料は一先ず後。

 だが、先に資料を見ておいて正解。合致する点を繋いだミレイオの嗅覚と勘は、分けられた地図を探し出した。


 書架の棚にも、番号があった。各部屋も、戸口付近に数字の板が掛かっている。


 その数字は繋がっていて、資料の納まった棚板の番号と、同じ数字を持つ部屋に地図があった。資料内容の『一部しか載せていない図』は、その部屋にある地下道図の一ヵ所である。


 こうしてミレイオは1~100までの区分、地下道全体の地図を見つけ出す。庁舎は3階建てで、1~7・8~24・25~49・50~65・66~82・82~93・93~100、の7枚が分けられていた。


「絶対、なんかありますよね」


 見られたくない感じがすると不審そうに呟いたロゼールに、ミレイオも『地下道の存在が危険』と認める。


「私が若い頃に、地下道の話なんか聞いたことなかったのよ。私も興味ないことは気にしないから、かもだけど」


 住んでいたのはあっちだしね、と昨日散々だった町向こうを指差す。それはともかく、集めた7枚の地図を番号に合わせて、事務室の大きな机に並べ、資料と確認した。


「あんたたちが入ったところは、町のどのへんだったの」


「町のどこかは覚えていませんが、地下道の形状で覚えているのは、ここです」


 ルオロフがミレイオに答え、25~49と区分された地図に手を置く。37の区に、ルオロフの見覚えがある地下道の辻があり、入ってきた場所を遡ると記憶に近いので、これだろうと教えた。


「さすが、狼」


「今は違います」


 ロゼールの褒め言葉に少し笑うも気を引き締め、五人はその地図を覗き込む。言われてみれば、ドルドレンもロゼールも『本当だ。ここを曲がった。向こうにも扉があった』と思い出す。


 ヘズロンの町の地図と比較し、ドルドレンたちが降りた地下道は町の南西と分かった。入ったのは28の区で・・・よく見ると、小さな斜線が三本、一ヵ所に書いてある。この三本の斜線は、地上に続く階段。


「持ち帰って、馬車で見ようか」


「借りるんですか?」


「ここで見ているよりは、落ち着くと思わない?今、何かに襲われて放って動くと思えば」


 ミレイオは自分たち以外のいない部屋を見渡すと、『ちょっと思ったこともある』と意味深に呟き、ドルドレンは意見を尊重。資料と棚番を忘れないように覚書きにし、7枚の地図と資料7冊を持って庁舎を出た。



「ここの区分」


「うん。それも馬車で話すわ」


 ぼそっと疑問を口にしたルオロフを遮るように、ミレイオは言葉を被せ、どことなく慎重さを感じた他の者もそれ以上は言わず、馬車へ戻る。



 探し回ったり、謎を解いたりで、馬車に戻るともう午後だった。

 昼はとっくに過ぎていて、留守番のレムネアクとシャンガマック親子に挨拶し、ロゼールは簡易昼食を用意。


 ミレイオはレムネアクの体調を訊き、『まだ重いんですよ』と体がだるいことを知り、今は彼に頼らず休ませた。レムネアクは、動かないなら大丈夫と言ったが、『頭使うのよ』と冗談めかして笑い、ミレイオは地下道の地図・・・この含む不穏の謎を一人で引き受ける。


 ロゼールに貰った、テイワグナの主食と豆の塗り物を食べながら、荷台で謎解きに入るミレイオは、なぜ庁舎が移動したのかも・・・薄々、想像がついていた。



 新教に買われた、古都ヘズロン。ミレイオが住んでいた時は旧教の町だったと思う。宗教も関心がないから、当時の町の状況など知らないが。


 レムネアクは以前、新教が『旧教の遺跡』欲しさに買い取る町の話をしていた。ここは地下道もあるから、新教はそれも掌握しただろう。でも地下道が、使いようによっては危険であると分かっていたら。


 買い取られた後の変化は町民にないとも、レムネアクは教えてくれた。

 だから町役場は、旧教で守ってきた遺跡―― 地下道を売るにしても、使()()()()()()()()()()()()()()()()かもしれない。



 移転した庁舎の区分は、84。東。ドルドレンたちが戦ったのは南西で、離れている。

 庁舎が荒らされたとすると、地下道東にも誰かが潜んでいる可能性があり、どこで聞いているか分からないと思って、ミレイオは馬車へ戻ることを急いだ。


「地図が、町長室に一本だけ出しっ放しだったのは、対した理由じゃなさそうね。馬鹿ばっかでしょうし・・・大方、『誰も来ねぇ』って感じで、あのまま放っておいた気がする」


 でも。私たちが庁舎に入ったと知ったら、逃げるのか。それとも襲いに来るか。



 7枚の端をきちっと合わせて、地上への通路を見落とさないよう、紙に書き写し・・・ ヘズロンの都の地下に巣食う悪党、その残りの片付けに作戦を練る。


「レムネアクが回復したら、彼にも見せないと。キダドの町で、王城の地下水路図(※2961話参照)を確認していたようだし。何か接点が出てくるかも」


 地下道ではないが、王城の地下水路図を記憶から調べた、レムネアクの話を重ねる。でも・・・レムネアクは具合が悪いままで、それも気になるが。



 *****



 この日は他に、ティヤーにいるタンクラッドから一報が来た。


 ヘズロン入り前夜に貰った連絡では、『うまく行っていない』だった。

 メダルはその日に使ったようだけれど、馴染みが悪く・・・そんな報告で、()()()()()()()()()は聞かなかった。イーアンは金属系の加工は縁がないので、応援しています~とだけ伝えて、終わった交信。


 でも、解決した報告が入り、詳しく聞かせてもらった。


 以前の世界で、金色の剣の出土品を写真で見たが、話を聞く分には、あれと同じ。タンクラッドたちは、剣の一部に金アマルガム法()で、メダル接合を試みた。


 イメージ『金メッキ』。だが、勇者のメダルはそんな量もないし、水銀の扱いもない(はず)の世界。これはサンキーの知識と技術で、古代剣を再現してきた経験がものを言った。が、そう簡単ではなかった出だし。



 ―――最初。イーアンは、金属に溶かし込むのかなと、それくらいしか思わなかった。


 この世界は、以前の世界と違うところがちょくちょくあり、剣を作るに通常使う金属と、魔物金属を混ぜても、融合してしまう。


 それに、イオライセオダでは、ブロンズでもない金属を使い、鋳造で剣を作っていた。

 鋳造で作った剣を叩き、強度を上げる。ブロンズ剣と同じだな、と思ったことがある。強度はハイザンジェルが誇る頑丈な剣で、実用に長く持ち応えてくれる質である。

 魔物性の金属は、大半が鋳造プロセスで強度合格のレベルに達していたので、融合もさほど気を遣っていなかった。


 ミレイオの『高炉』を使うヨライデの武器は、鉄同様の金属を熔かせるので、こちらは熱した塊を叩く鍛造らしいが、製造過程を見たことはない。


 ギデオンのメダルも、()()()()()()()()()()可能性があるし、毎度の如く混ぜてしまうか、もしくは鍛接で一部継ぎ合わせるのかと、ぼんやり考えていたのだが―――



 タンクラッドはサンキーと相談し、メダル金属を少し取り、試しに剣の素材と同じ金属に、熱して叩き込んだそうだが、それはあまりうまく行かず、何度か試してみて却下したそう。・・・これは、象嵌の範囲だと思う。


 それでサンキーが、『もしかするとメダルの金属は特殊かもしれない』と言い出し、試し用に取った少量を温度を変えてまた熱し、単刀直入、金メッキ的な使い方を試みたところ、上手く行った。

 要は、メダル金属単体で金メッキ状態の加工が適ったという。


 どんな金属ですかと質問したくなるけれど、うまく行ったならそれで良い話。イーアンも突っ込まない。

 金属の質や科学的な説明を誰かがする世界ではないので、答えは多分、永遠に知る由ないだろう。



 タンクラッドが、夢で見たお告げは。


 勇者の剣は『金と銀の色』だった。

 金は樋にあり、本体は銀色。これまでドルドレンが使っていた魔物性の剣は、本体は銀、中心が黒の鍛接(※256話参照)。イオライセオダのサージが初めを引き受け、タンクラッドが完全にした剣。


 モデルは、イーアンの絵で・・・ それが今、色と材質を変えて新たに生まれ変わった具合。


 この世界の材料を本体にして、勇者のメダルを接合した剣。

 塗布したら広がり、焙ったら燦然と輝いて定着した。試しを実行したのはサンキーだったが、本番はタンクラッドが行って成功。


『剣に使う。その示すところは分かっていても、夢と同じ状態に出来るかは、やってみないと分からなかった』とタンクラッドは笑った。


 イーアンは、プロセス報告を聞いて、ドルドレンに『メダルは熔かしちゃうわよ絶対』と言い切った自分が、何となく情けなかったが(※知識少な目の恥)忘れることにする。



『近い内に、戻る』


 タンクラッドはすぐ戻ってくるわけではないようで、理由は言わなかった。イーアンも、聞かなかった。彼はまだ何かする気なのかなと、そう思ったところで交信は切れた。



 滞在二日目は、他に大きなこともなく、これで過ぎる。

お読みいただきありがとうございます。

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