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十度

一部、グロい表現がありますので苦手な方はご注意下さい。

呆然としてしまった。


まごう事なき美少女が鏡に写し出されている。(いや、自分なんだが)

自画自賛(?)しかしこれ一歩外に出れば誘拐されるレベルで可愛いい。

元々整った顔立ち(よかった)だったが、プレゼントで贈られたドレスが可愛らしさを引き立たせ、まるでビスクドールのよう。持ち主の魅力を最大限に引き出す技は国一番と名高いリアンオネエさんの仕立てだ。

鏡の前でクルリと一回転するとドレスも動きに沿ってふわりと揺れる。



白を基調としたドレスは光の角度で煌めく色合いを見せ、緑や金の糸を使った刺繍やレースが清楚さと可愛らしさを更に引き出している。

月の光を紡いだかのような白銀色の髪は黒いリボンで複雑に編み込まれ銀と黒のコントラストに目を奪われる。

首に付けた黒いチョーカーには瞳と同じ色のパープルダイヤと耳にも同じ宝石を使ったイヤリング。

上から羽織るガウンは淡いピンク色のふわふわとした生地で作られており、胸には可愛らしいオレンジ色の大きなポンポンがアクセントになっている。

足元にいるエンニチの首にはドレスと同じ生地で作られた白いチョーカーに私とお揃いのパープルダイヤ。

光り物が好きなのか、お揃いが嬉しいのか、身体を左右に揺らし光の角度でキラキラ輝く宝石に満足気な様子だ。

ほのぼのとエンニチを鏡越しに見ていると、背後に写つる家族の満面の笑みに気付き、自然に笑みがこぼれる。




あの雪の夜後。

穏やかな気持ちで目覚めると家族たちが取り囲んでいた。

どの顔も心配気で、でも不謹慎だがそれが嬉しくて一人では無かったと安心して、恥ずかしい事に大泣きしてしまったのである。



泣き止んだ後、いろいろな事を話した。

私はセラフィーナ本人だが前世の記憶があること。この世界とは違う場所に居たこと。殺されて生まれ変わったことなど、分からないことも多かっただろうが黙って根気よく聞いてくれる。

ある程度話終わり喉が渇いているのに気付いた。かなりの時間が経っていたようだ。右側に置いてあるミルクを飲むと、すっかり冷めていたが渇いた喉にはちょうどよく一気に飲み干す。

正直、薄気味悪いと思われても仕方ないと思っている。それでも話したのは私が雪に怯えるのを家族たちが気に病んでいるから。なにより本当のことを言いたかったからだ。

物音一つしない静かな空間の中、眉間にしわを寄せていたパパさんが口を開く。


「……ふむ、異世界に行く方法はあるだろうか?」


……はい?


「いま存在する魔法では無理。でも禁呪を使ってでも必ず完成してみせる」

「よく言った、それでこそ私の息子だ。近いうちに大神殿と王室図書館の閲覧禁止区画を使用出来る様にしておくから存分に活用しなさい」


……異世界?禁呪?


「ロン、わたしも協力するよ。

セーラ、辛いかもしれないけど、後で前の君を殺害した大罪人の似顔絵を描いてくれるかい?」


……似顔絵?


「ふふふ。会ったら殺して下さい、と懇願するまで、いや懇願しても生かしてじわじわと半殺しにして、大事なところを切り落とした後で傷口に塩や唐辛子を擦り込んで、薬物実験して、斬り刻んで……」

「切り刻むのなら俺に任せてください。包丁の扱いは上手くなったんすよ。

こう指先からタンタンタンと」

「時空魔法の実験台。眼球や耳だけを移動させたり、斬り刻んだ身体を回復させてから巻き戻して傷を復元出来るか。それから…」


こわいこわいこわいぞルイス兄!王子様スマイルが怖いぞ!

ダスティさん、包丁の使い方間違ってる!

ロン兄、言っている事がエゲツなさ過ぎる!

ウォーミングアップなのか、膝の上にいる殺る気満々のエンニチの蹴りが七つのキズを持つ男の如く無数の残像さえ見える。……パパさん、助けて!


「お前たちはまだまだ生ぬるいね。まぁそれよりも早急に術式を完成させる事を第一にしなければ。お楽しみはその後だよ」


な、生ぬるいってパパさん、あれがか?

それよりもアンタら前世の私を殺した犯人に復讐する気か?気にするところはそこなのか?

落ち着いてくれーー!



憤慨する家族たちを秘儀!キス攻撃で宥め、改めて気味悪くは無いかと問えば、大切な娘に変わりはなく、二人分の知識と記憶を持っているなんてお得だね、と笑いながらぎゅっと抱きしめてくれる。そして自分たちがどれほど私を大切で愛しているかを切々と伝えてくれた。

不覚にもまた大泣きしてしまった。





腫れぼったい目を魔法で冷やし温かい飲み物を入れた後、今の私なら大丈夫だと、これまでの事を教えてくれた。



我が家は公爵家だったのは予想の範囲内だった。パパさん宰相様だしな。


ただ私が狙われていたのは驚いた。


元々女性が少ない上、我が家は魔力が高く見目麗しい者が生まれる確率が高いそうだ。

そして何より私が生まれた日、精霊たちが、


とっっっっても騒いだ。


お祭り騒ぎもかくや、の勢いで褒めちぎる褒めちぎる。詳しい事は割愛するが、可愛らしいだの魔力が綺麗で澄んでいるだの相当騒いだらしい。

話は変わるが覚えているだろうか?誕生と同時に精霊が安全の為、魔気の吸収を防ぐ結界を張るということを。そして三歳に神殿もしくは医者によって取り払われることを。

つまりそれは精霊の声や姿を感じれるということ。

神殿関係者や一部の医者、もしくは市井にもいるだろうが、その方々も驚いたことだろう。

いきなり精霊たちが可愛い子がいるぞ!魔力も凄いぞ!と騒ぎ出したのだから、気にするなと言う方が無理だ。

その結果、噂が噂を呼び神殿関係者は聖女が降臨したと神殿に引き取ろうとし、王族は勝手に婚約者にしようとし、裏では誘拐もしくは懐柔するべく様々な方々が送り込まれていたそうだ。

家が公爵家、いや親がパパさんでなかったら私はとうの昔に攫われていただろう。

因みにベビーシッターだと思っていたダスティさんは、私の護衛に雇われた金ランクの冒険者だった。

冒険者は上から金、銀、鉄、銅、青銅に分類され金のランクであるダスティさんは、心因的事情じょせいにふられたで一時休業しているが、実はかなり有名な冒険者だったのだ。

よく雇えたなと思っていると、

「権力は正しく使うものだよ」と笑いながら教えてくれたパパさんを私は尊敬する。

話は逸れたが、普通女性が生まれた家は絵姿をばら撒いたり、家に呼んだりと兎に角自慢しまくるものらしい。しかしパパさんは部屋から一歩も出さず使用人にも見せない溺愛ぶり。上二人の兄も似たり寄ったり。それが更に噂に拍車がかかった、と。


……良く無事だったな私。






先日の話し合いを思い出し、平和をかみしめながらも、軽く息を吐く。

今日は此れから大神殿に行き結界を取りに行くのだが、ここで一つ問題が。


私も女性だ。オシャレをすれば心が沸き立つし、それが大切な家族からのプレゼントになれば嬉しさは更に倍増だ。

しかし子供に宝石って。ガウンはふわふわで手触りスベスベ、これデパートに飾られていたん百万単位の毛皮コートよりも高いんじゃないか?しかもそれ以上に今着ているこのドレス、軽くて肌触りも良くて糸の一本一本がキラキラしていて素人目からしても絶対にいい生地だ。ソースなんか溢した日には……考えたくもない。元小市民としてはどれだけ散財したのだろうかとガクブルであり、泥で裾を汚さないかと今から胃が痛い。





◆◆◆◆◆◆◆





「リアンは本当にいい仕事をしてくれたね」

「ええ、私たち全員の希望していた色を全て使っていましたね」

「とても可愛かった」

「俺の意見まで取り入れてくれるとは思ってなかったすよ。……でも旦那はよく白いドレスで納得しましたね。手違いとか何とか言って絶対紫色のドレスにすると思ってたんすけど」

「一度か二度着るだけのドレスよりも、この先身につける物の方がいいと思わないかい」

「あ、あの紫色の宝石!父上卑怯です」

「ズルい」

「流石、旦那だ」





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