九度
シリアス回です。
誕生してから初めて家族以外の人間に会ったからだろうか。
それとも寝る前に降り出した雪を見た所為だろうか。
その夜は深い悪夢を連れてきた。
ーーアンタも成人して就職も決まった事だし、お父さんとお母さん離婚する事にしたわ。
やっとあの人と一緒になれる。
ーーお母さん、何で私を生んだの?何で結婚したの?私は家族ではないの?
ーー私はあなた達の、枷だったの?
ーー悪い。けどお前は強いから俺が居なくても平気だろ?だけどアイツは弱くて寂しがりやで俺が必要なんだ。
ーー私は強くない。私だって一人は嫌だ。
ーーこんなことろで一人死ぬのか
ーー誰もいない
ーー寒い、雪だ。
ーー誰か、
ーー寒い、、誰か、
ーーーー寒い。
『セーラ、セラフィーナ』
ーーー誰?
『大丈夫、自分はセーラの側にいるから』
遠くから呼びかける優しい、透きとおる優しい暖かい声。
絹のようなものが優しく頬を撫でる。
誰?ああ、早く、早く起きなければ。
だんだん意識が浮上してくる。
待って。起きるから待って、一人にしないで。
涙で霞む目を開くと、
美しい闇の化身がいた。
黒い羽は銀砂を散りばめられ、まるで星空を切り取ったかのようだ。
同色の切れ長の瞳は深い英知と憂いを帯びている。
畏怖するような存在感と同時に何故か絶対的な安心感がある。
一瞬、守護鳥様かと思ったが羽は白だった筈だ。
「……だれ?…」
『自分はセーラを護るものだ』
そう言って目を細めると、頬に手を当てる仕草で羽を使い優しく頬を撫でる。
『自分だけでは無い。セーラの父も兄達も使用人もセーラの側にいる。
セーラは何も怯える事など何もない。
それでも寂しいのか?悲しいのか?』
セーラ、セラフィーナ。私の名前。
お茶目で優しいパパさん
穏やかで王子様みたいなルイス兄
いろいろな事を教えてくれる物静かなロン兄
大雑把でムードメーカーのダスティさん
ピヨとも鳴かないけれどいつも側にいてくれるエンニチ
寂しかったのは前世のワタシ。
泣きたかったのも前世のわたし。
私じゃない。
「…寂しいなんて思ったこと、ない。……セラフィーナは幸せなの」
『…そうか』
幸せで泣きそうな程に幸せで。
いつの間にか大切な宝物が出来てた。
寂しいなんて思ったこともなかった。
だって私は、セラフィーナなのだから。
『……もう寝るといい。自分はずっと側にいるから』
胸の奥が暖かい。
心が満たされるとはこういう事を言うのかも知れない。
ぼんやり霞む頭。
夢かもしれない。
でも、
きっともう悪夢は見ない。
◆◆◆◆◆◆◆
『……もう出てきてもいいぞ』
「エンニチ様、セーラは?」
『もう寝た。…寒さが苦手なのは知っていたが雪が嫌いなのか?』
「おそらくは。初めて雪を見た日は酷く怯えそのまま二日ほど熱で寝込みましたから。
原因は不明です」
「だからなるべく冬は窓に近寄らせない」
「夜に泣くんすよ。俺たちを起こさないように声を押し殺して。まだ小さな子供が、すよ……堪らんやら情けないやら」
『…もう心配は要らないだろう。セーラは笑っていた。お前たちが側にいる事を思い出したからな』
「我々が何時でも側にいる事を思い出してくれたあの子が眠れるといいんですが。兎も角ありがとうございました。ところでエンニチ様、そのお姿は」
『自分に様付けは不要だ。この姿か?自分ら神族には身体が成長するという概念がない。
単に大きくなる必要がなかっただけだ。
大きいとセーラのベッドで共に寝られぬ。
言葉を発すればその分セーラの声を聞く時間が減る。
小さい姿だと抱えられ可愛がられる。
それだけの理由だ』
「予想どおり過ぎる答えですね」
あれ?
最後まで持たなかったような?




