チャックの中と俺
有り得ない…俺は断じて信じないぞ!
俺は中原昭、20歳…そして其処でキャミソール短パンで無防備に漫画を読んでる女は桜井芳佳だ。
一応言うが俺らは恋人じゃあない、言うならば幼なじみだ、小学校の頃から…
俺は小さい頃は自分で言うのもあれだが、割りと正義感が強かったらしく、虐められてる子を助太刀している時に息があったのか、大人になった今でも一緒に居るような関係だ。
「なぁ、おい…仮にも女なんだから下着くらいはつけろ…」
「お前が女を襲う度胸はないと思うよ、アタシは」
「ですよねー…」
軽く言いくるめられて「やれやれ」と一言残して座布団を枕がわりにして寝転ぶと不思議な事に気付いてしまった。
普段なら…いや、普通の人間には有り得ない物だった、それは背中から腰までに付いている着ぐるみのようなチャックだった。
おそるおそるチャックを下におろしてみると、ずるりと人が出てきた。どこぞのホラー映画さながらに長めの前髪で顔が隠れていたので、男か女かの区別はつかない…と悠長な事を考えていたら、どすん!と俺の上に落ちてきた。
「あれ?芳佳じゃん、ちーっす」と俺の上で和んでいた、その前に俺から降りろ!と思って居たその時に「あれ?誰か座ってんじゃん、芳佳の彼氏?」と言ってたので堪らず「いい加減にしろ!」と俺はチャックから出てきた声からして男に言った。
「人からチャックって有り得ねえだろ!なんだお前!」と少々興奮気味で俺が問うと、芳佳も男も「うーん」と考えて俺に言った結果が「中の人」だった、なんだその気の抜けるネーミングは…
どうも芳佳曰く中の人とは自分の中に誰か居るとしたらこんな人…と言うイマジナリーフレンズ要素の強い人らしい、一歩間違えれば多重人格になり兼ねそうで俺は軽い恐怖を感じるが…ならばその存在して居ないはずの男が居るのに俺はかなり不思議だと思って居た。
ましてや親友の背中のチャックから誰かの上半身や下半身がぶら下がってる姿を見てる俺は…ハッキリ言ってシュールすぎる、多分この絵面は。
そして俺は見たくなっても来た、アイツのチャックの中身と言う物を。そしてチャックの向こうの暗闇を見てみようと気になった時にアイツの暗闇を覗こうとしたら「あ!何処触ってんだお前!」と芳佳が暴れてしまったせいで俺は暗い闇の中へ落ちて行った、断末魔を上げてももう光がドンドン遠ざかり、俺は意識をグルグルと失って行った。




