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シーン3:教師による最終確認
教師の執務室は、午後の光が斜めに差し込む、少しだけ事務的な空間だった。
机の上には書類が整然と積まれ、インクの匂いと紙の乾いた感触が、この場所の役割を明確に示している。
担任教師は、主人公を前にして椅子に腰掛け、成績表を開く。
視線は感情を挟まず、項目を順に追っていく。
成績は安定している。
突出しすぎてもいない。
欠落もない。
備考欄には、長い文章は存在しない。
特筆事項なし。
指導記録なし。
問題行動の記載もない。
教師はページを閉じ、短く息を吐く。
それから、事務的な口調で告げる。
「特に、申し送り事項はありません」
それは褒め言葉ではない。
同時に、否定でもない。
ただの事実確認だった。
主人公は、その言葉を静かに受け取る。
ここで、認められることはない。
失望されることもない。
期待や残念といった感情は、どこにも付与されない。
彼女はこの学園で、
規則を守り、課程を満たし、
何かを壊すことも、何かを成し遂げることもなく過ごした。
教師は成績表を所定の位置に戻し、形式的に頷く。
それ以上の言葉は続かない。
この瞬間に確定するのは、ただ一つ。
彼女は――
生徒として、正しく終わった。
それ以上でも、それ以下でもなく。




