助太刀へ
炎が舞い散る現場で、カルエとアラビカの根比べが始まった。先に倒れたほうが負け、というゲームである。
そんな中、カルエの相棒ルキアは危険を察知していた。
「駄目よ……カルエ、あんなのと根気勝負なんて」
ルキアのシックス・センスは、ふたりの勝負の顛末をも予知していた。シックス・センスはいわば直感。それが導いた疑似的な未来とは、カルエが死亡する姿であった。
「私たち、まだこの街の頂点に立ってないじゃない。カルエ……!!」
すでに警察署の外に出ていたルキアは、手元にある拳銃を見つめる。
この道具でなにができる? 相手はランクAAAの化け物。対してルキアはランクC。天と地の差が開いているのに。
だから、ルキアはハンドガンを握りしめたまま、なにもできない。このままカルエのもとへ向かっても、犬死にだからだ。
その最中、
「おう。カルエの仲間か」
凄まじい速度で現れた車が停車し、中から女帝のようなオーラをまといながら、彼女は現れる。
「マルガレーテ……」
この街の最重要指名手配犯、MWFにしてランクAAAの女、マルガレーテだ。
オレンジを基調とし様々な色の入った長い髪の毛、整った顔立ち、抜群のスタイル。
そんなマルガレーテは、
「カルエはどうした? アイツ、まさかサシでアラビカとやり合ってるのか?」
「ええ……」
「よし、助太刀に行こう。正直、サシでアイツに勝てるヤツは少ねえ。あたしでも勝てるって保証できないほどだ。ただまあ──」
煙炎が差し迫る中、マルガレーテは地獄の形相を見せる警察署へ足を進めていく。
「アイツがだいぶ削ってくれた。なら、暗黒街の女帝が出向かないわけにはいかないよな?」
バキバキと指を鳴らしながら、マルガレーテは咳き込むことすらなく、煙と炎が一面をおおうところを一歩ずつ進む。
「待って」
「なんだ?」
その足を止めたのは、ルキアだった。
「私も連れてって」
「あぁ? もう下がってろよ。この煙と炎の中じゃ、中毒か焼け死ぬだけだぞ?」
「良いから!」
ルキアの強い語気に、マルガレーテはなにか納得したかのように頷き、
「上等だ。そこまで覚悟があるなら、あたしのギアの傘に入れ。炎や煙でのダメージを無効化できるからな」
「分かったわ……!!」
マルガレーテとルキアは、火災が消えない第3警察署へ入っていく。
*
「ぜえ、ぜえ……」
「……ッ!!」
改造してあるパーツがけたたましいエラー音を吐き出している。が、アラビカはそんなこと気にも留めない。
「このおれ相手に根比べか……!? てめェ、舐めるのもたいがいにしろよ!!」
すでにカルエは虫の息。酸素を求めて息を吸い込む。無駄だと知りながら。案の定、カルエはゲホゲホと咳き込み、のたうち回る。
「オマエは天井に穴が空いてる上に、おれがこれ以上炎を起こせないと踏んだんだろうな。それで酸素欠乏になることはないと。だが、おれにはまだ余力があった。オマエにはなかった。それだけで済む話だよなぁ……!!」
アラビカは、手から出ていた炎を消した。




