所詮意趣返し
「げほッ、ゲホッ……」
カルエは喉の器官を焼かれ、激痛に悶える。首元を改造していなかったのが、仇となってしまった。原作のカルエは、「おれの首を刎ねられる馬鹿はいねェ!!」と粋がっていたからだ。敵を侮った態度が、結果としてカルエの中に入り込んだ少年にも写されてしまったのである。
「さて、処刑だ」
カルエは立ち上がれず、ほふく前進するかのように地面を這いずる。当然、アラビカから逃げられるわけがない。拳銃の安全装置が解除された音が聴こえた。
そのとき、
「──うおぉぉおッ!!」
アラビカの悲鳴が、背後から聴こえた。カルエは息切れを起こしながら、振り返る。
そこには、同盟を結んだマルガレーテがいた。
「マルガレーテ……」
「ああ。助太刀来たぜ」
涼しげな態度で、マルガレーテはアラビカとの交戦を始めた。
といっても、あれだけ削った相手だ。明らかにマルガレーテのほうが優勢である。炎の槍が数十本とアラビカに襲いかかり、アラビカはかろうじて風でそれをかき消すも、身体改造しているマルガレーテはそれを読んで、彼との間合いを狭めた。
「カルエ!!」
そして、もうひとり救援が現れた。ルキアだ。
彼女はカルエに肩を貸し、彼を無理やり立たせる。
「逃げましょう! あとはマルガレーテが請け負ってくれるわ!!」
「いや……、マルガレーテは──」
「ぐぉッ!!」
刹那、マルガレーテの悲鳴が響いた。カルエはルキアの肩を振り払い、立っているのも精一杯なのに、アラビカと間合いを狭めていった。
「女のプライドなのかなんなのか知らねェが、てめェは胸周りを改造してねェよな? おれがそれを知らないとでも?」
ナイフで刺されたマルガレーテの胸元に、雷撃が走った。彼女は悲鳴を張り上げ、吐血した。
「同じランクAAAだからって、同格だと思ってるんじゃねェぞ!!」
アラビカはそう叫ぶ。まだ戦意を失っていない。しかし、その声は慟哭のようにも聴こえた。
「か、カルエ……」
ルキアはカルエを止めようとするが、足がすくんで動かない。あのマルガレーテが一瞬で大ダメージを負うような化け物相手に、カルエは本気で挑むつもりだ。
こうなれば、もはや一蓮托生。ルキアはその場から動かず、カルエとアラビカの最終決戦を見届ける。
「クソガキィ!! てめェはおれを怒らせすぎたなぁ!! ぶち殺しても殺し足りねェくらいだ!!」
「殺しても殺し足りない? はッ……、だったら殺してみろよ」
(このガキ、なんで喉の器官が再生してる……?)
カルエはふらふらと、しかし確実にアラビカとの距離を狭めていく。再生した喉とともに。
「──上等だ!! 2億ボルトの電流で焼き殺してやる!!」
天空はすっかり真っ暗になっていた。曇り雲の所為だ。その状態を築いたのは、他でもないアラビカである。
そんな中、アラビカは宣言通り、2億ボルトの雷撃を繰り出した。
だが、カルエは薄い笑みを浮かべるだけだった。
「これは、オマエに踏みにじられた者からの意趣返しだ」
カルエは雷撃をくらった。そのまま電気をまとい、アラビカの胴体へ左手で触れた。
そして、アラビカは巨大な電流に耐えきれず、その場にへたり込むのだった。




