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塩対応の騎士が甘すぎる  作者: 北里のえ
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腕輪の秘密

カントル宰相を始め王都から避難してきた人々は、次第に辺境伯城での生活に馴染んでいった。特にクレメンスは男女問わず人気がある。


「どんな悪い男性かと思っていたら、とても魅力的な方で驚きましたわ!」


ディアナ様の言葉に昔のクレメンスを知っている面々は苦笑いを浮かべるしかない。


アガタもモニカさんも少しずつクレメンスを認めるようになり、ティベリオも友好的に接している。


ルークはそれが面白くないようだが、ユリウスとラザルスは仕方ないと見守っている。


ある時、サルト騎士団長とモニカさんが話しているところに出くわした。


「ユリア様! ごきげんよう。お疲れさまですわ」

「ユリア嬢、お忙しそうですね。どうか無理なさらないでください」

「いえ、全然。私なんて……。できることは限られているので」


モニカさんと騎士団長の温かい言葉に私は控えめに微笑んだ。


「そういえばクレメンスも頑張っているようですね。辺境騎士団との合同演習にも参加していたようですし…」


私が言いかけるとサルト騎士団長の顔が曇った。


「ええ、クレメンスは剣術も頑張っていたし本来なら魔力も非常に高い。あの腕輪が取れればもっと強いはずなんだが……」


モニカさんが突然「お兄さま!」と騎士団長の腕をつねった。彼は『しまった!』という顔をする。


え!? 今の会話で何か問題があった?


腕輪のこと……?


そういえばクレメンスの手首には今でも変わらず魔力を吸い取る腕輪がつけられている。いつも手首が隠れるシャツを着ているからつい忘れがちだけど。


あれがあると魔力は吸い取られるし会話も制限されるはず。


ここでクレメンスは誰とでも自由に話をしているから、その制限は設けられていないようだ。女王が裁量できるってことなのかな? なんかすごい都合の良い腕輪だ。


腕輪を外せないから魔力は奪い取られてしまう?


モナさんは私の腕輪をあっという間に外してくれた。


彼女にお願いしたらいいんじゃないかしら?


それを提案しても、サルト騎士団長とモニカさんの顔色は冴えない。


どうしたんだろう? 


「ユリア嬢の腕輪を外すことができたのは、非常に特殊な事情が関わっていたためだと聞きました。ですから、他の人には有効ではないと」


サルト騎士団長が申し訳なさそうに説明する。


え!? そうなの?


単にモナさんが凄腕の魔術師だからなのかと思っていた。


そういえば腕輪の事情については聞いたことがなかった…。どうしてモナさんはあんなに簡単に外せたんだろう?


「あの…じゃあ、モナさんに頼んでもクレメンスの腕輪は外せないということですか?」


サルト騎士団長とモニカさんが躊躇いがちに頷いた。


「その…特殊な事情というのを教えていただけませんか?」

「いや、私たちも詳しくは知りませんから」


食い気味に騎士団長から言われて私は戸惑った。


どうして!? どんな事情があるの? 私に関係があるの?


その場を去った後も私の脳はせわしなく動き続けていた。


私の腕輪が簡単に外せた理由はなに?


あの二人の態度からして私に関連するものに違いない。


何かを知っているのに言いたくないのは明らかだった。


なんだろう? それを知らなくちゃ、という気持ちでひたすら気が急いた。


ユリウスを探して腕輪が外せた事情について単刀直入に尋ねてみる。


しかし、ユリウスは優しい笑みを浮かべながらも何も説明してくれない。


「ユリアはもっとやらなくちゃいけないことがあるだろう? 俺も忙しいんだ」


最後にはそう言って体よく追い払われてしまった。


ラザルス、エミリア、アガタ、ファビウス公爵、ティベリオなどなど、知り合いを片っ端から捕まえて聞いてみるが何の情報も得られない。


ルークは見つからなかったし、見つかってもさすがにルークに話しかける勇気はなかった。


直感だけどアガタとティベリオは本当に何も知らないようだ。


でも、他の人たちは絶対に何かを知っている。


どうして私に教えてくれないんだろう?


モナさんに尋ねるのが一番いいと思ったのだが彼女は再び城から姿を消してしまった。


モナさんが帰ってきたら聞いてみよう。彼女なら答えてくれるような気がする。


それまでは…モヤモヤするけど、仕方がない。


腕輪には何の秘密が隠されているんだろう…?




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