Story 40【響く痛みに】
「あー……やぁ。調子はどうだい?」
「僕は普通ですよ。見るからに先輩は悪そうですけど」
「はは、申し訳ない。頭痛が酷くてね。熱とかはないから風邪じゃあないと思うんだけど……」
今日も今日とて、街の郊外に存在する誰からも忘れられた墓地の中心で。
僕と先輩は話をしようとしていたのだが。
「どうします?今日は解散でもいいですよ?」
「いや、話そうぜ。意識すると痛みでイライラしちゃうから」
「そう、ですか。なら今日の話はタイムリーなものにしましょう」
「タイムリー?あぁ、成る程……頭痛の話ってわけか」
先輩はどこか元気のない笑みを浮かべる。
調子が悪いというのは本当なのだろう。
しかしながら、本人が帰らないと言っているのだから僕はその相手をするだけだ。
力尽くで帰宅させたら後日何をされるか分からないし。
「まず、頭痛の原因についてですかね。一応言っておくと僕は専門家とか医者じゃないので間違ってることもありますので信じすぎないように」
「了解。で、頭痛に原因ってあるのかい?まぁストレスがそうだってのは聞いたことがあるけど」
「実際、ストレスからくる頭痛もありますよ。ストレスによって筋肉が収縮し、そして頭痛に。そしてその痛みによってストレスを感じて……って感じに」
頭痛の原因は様々だ。
それこそ、今言ったようにストレスからくるものもあればそれ以外のものもある。
「成る程ねぇ。完全に悪循環じゃないか」
「そうですね。ちなみに他にも原因というか……先輩の頭痛の原因かなって推測できるものもありますよ」
「ほう?」
「まぁ実際にどうかはわからないんですけど……食品の中に頭痛を引き起こしてしまうものが存在するんです」
正確に言うなら、その食品に含まれる成分が、だが。
「へぇ、例えば?」
「そうですね……赤ワインとかチーズとか、あとはハムなんかもそうだった記憶があります」
「あー……うん、覚えがあるねぇ。あとで吐くのは分かってるんだけど食べちゃうなぁそれ」
「ちなみに最近食べたんです?」
「うん、それはもう」
頬を掻きつつ、先輩は笑う。
自身の頭痛の原因を知らず知らずのうちに自身が摂取していたのだ。
笑うしかないといった感じなのだろう。
「他にも……そうですね、喫煙とか飲酒とかも原因にはなるそうですよ」
「当てはまるねぇ……仕方ない、収まるまでは我慢するか」
「それがいいですね。先輩の場合、我慢したとしても主食が主食なんでどうなるかは分からないですけど」
「あは、人肉がダメなら私はこれまでずっと頭痛に悩まされてるはずだから問題はないさ。まぁでもきちんと養生するかなぁ」
周囲を見渡しながら彼女は言う。
恐らくは彼女の周囲に居るであろう悪霊達の事を見ているのだろう。
悪霊達は、恨みの矛先が向いているものを衰弱させ最終的には殺してしまう。
頭痛だけで先輩が衰弱していくとは思えないものの、弱っているという点では確かに彼女は今弱っているのだ。
だからこそ、彼女の口から出るとは思えなかった『養生』なんて言葉を発したのだろう。
「はは、まぁある程度は手伝いますよ。魔女学の方で薬なんかも作れますから」
「悪いねぇ、魔女後輩」
「それは言わない約束でしょう、カニバル先輩。……何ですかコレ」
「さぁ?ノリがよくて助かるぜ」
先輩から詳しい症状を聞き、僕はそれに効く薬を調合していく。
少しは彼女の役に立てているのだろうか、と少しだけ空に浮かぶ月を見ながら思った。




