99 鴨がいるかもしれない
再び四人となった僕達はその後、何事も無くフェイベル王国との国境までたどり着いた。
僕達は警戒していたけれど、王国側の砦も特に阻まれること無く通過できた。
エリッタの件があるので、てっきり師匠が手を回して邪魔してくるかと思ったんだけど。
僕達は砦から出た。
乗り合い馬車を探す。
エリッタとリプリアの目撃情報があると良いんだけれど。
その時、僕と同い年ぐらいの少年に声をかけられた。
「笑わないお姉ちゃんからこれを渡してって。」
笑わないって、リプリアか。
僕は少年から筒を受け取る。
中を確認すると、僕に宛てた手紙だった。
エリッタは神の遺跡方面へ向かったらしい。
やっぱりという気がしている。
フェイベル王国の神の遺跡にはほぼ間違いなく師匠がいるはずだ。
神魔砲の実験に立ち会っているのだろう。
そしてエリッタは師匠に賢者の杖を渡しに行ったんだ。
神の遺跡と賢者の杖、まさに鴨がネギを背負っている状態だ。
そんな好条件ではあるのだけれど、障害になるのは師匠だ。
正面から戦った場合、こっちには勇者がいるけれど勝てる気がしない。
策は一応用意してあるけれど、引っかかってくれるかはかなりの賭けだ。
けれど神に喧嘩を売ろうというのに、人間の師匠をどうにか出来ないのでは話にならない。
やるからには必ず目的を達成する必要がある。
リプリアからの手紙には続きがあって、遺跡のある山の麓の村で協力者と合流して欲しいと書いてあった。
恐らくブリゲアンもしくはその仲間がいるのだろう。
そして僕達はフェイベル王国の神の遺跡を目指した。
途中にこれと言った問題も発生せず、麓の山までたどり着いた。
この辺りまで来ると、かなり雪が積もっている。
僕達が村に入ると待っていたのはペイストンだった。
リプリアに電撃拷問を食らった悲惨な魔族の男だ。
僕にぺこぺこしながら神の遺跡までの道案内を買って出た。
どうやら僕が前魔王の息子だというのに薄々感づいているようだ。
以前のようにリプリアに強制されたような態度では無くなっている。
ちなみい当のリプリアは神の遺跡付近で偵察を行っているという。
こんな雪の中、素晴らしく仕事熱心だ。
ペイストンはギグウロフを連れてきているので、戦力として活用することも出来るという。
今回は総力戦で攻め込みに行くつもりは無い。
師匠と戦力と戦術で張り合ってもたぶん負ける。
だから違う方法をとるつもりだ。
そのために神の遺跡に行く前にやらなければならないことがある。
途中の街で購入した材料を利用して、あるものを作るつもりだ。
そのため、途中にある神の遺跡をスルーし、いったん山の峰付近に登ることにした。
前世では登山が趣味だった。
さすがに人が踏み入らない雪山のルートを通るようなことは無かったけれど。
今回はペイストン率いる、雪に強いギグウロフがルートを確保してくれるので、迷うことは無さそうだ。
雪が積もる山道を見て思い出す。
僕は冬の登山中に、突然の山の噴火に巻き込まれ、彼女と共に死ぬことになった。
本来なら逃げることは可能だったのだけれど、僕がしようとした人助けに彼女を巻き込んでしまったのだ。
ずっと思い出したくなかった記憶。
けれど彼女はこっちに転生している。
そして僕が助けた人物はその後も生きていて、きちんと生きていてくれたのだ。
あれは無駄では無かった、ようやくそう思えるようになった。
この山は、それほど標高が高いわけでは無い。
天候も多少小雪がちらつく程度、風もほとんど無い。
クレバスがあるようなおっかない場所でも無い。
先導する狼の魔物もいる。
村で整えた登山装備もしっかりしているので、それほどの苦労も無く目的地にたどり着いた。
僕は必要な物を設置する。
そして時間まで待ってテストをした。
ばっちりだった。
準備は完了だ。
僕達は神の遺跡に建設されている研究所へと向かった。
久々に作戦無双が出来るかな。




