73 ホームランで家まで走りたい
僕は後ろの人影に尋ねる。
「ひとつ伺いますが、あなたはギグウロフの育成が趣味の魔族ですか?」
僕の問いに答えが返ってきた。
「ああ、そうだ。
なかなか察しが良いな。
見所があるが、まあ餌になるんだから意味も無いか。」
見た目は人間の青年のような魔族が僕達の顔を確認する。
魔族は体から瘴気に近い魔力を発しているので、見分けるのは難しくない。
僕からは出ていないようなんだけど、たぶん魔領から逃げるときに爺が使ったアイテムの力なんだろう。
リプリアが同じ物を使っているのかは知らないけれど。
「子供まで交じってるとはな。
ちょうど良い素材になる。」
魔族がそう言うと、口に笛のような者を咥えた。
狼は全部で四匹。
一番大きな一匹を残して、三匹が僕達の方へ向かってくる。
笛からは音が聞こえなかったが、そういう周波数の音が出るのだろう。
メリクル神父が前に進む。
僕は攻撃魔法の準備に入る。
エリッタはメリクル神父の斜め後ろを付いていく。
リプリアは僕の横だ。
一匹がメリクル神父に突進する。
他の二匹が両サイドにステップした。
メリクル神父は突進してきた一匹にメイスを振り下ろすが、すんでの所で躱す一匹。
そして両サイドに移動していた二匹が同6時にメリクル神父に襲いかかる。
サイドの一匹が突然転ぶ。
エリッタの鉄串がヒット。
「余裕。」
エリッタが言う。
次の瞬間、メイスの攻撃を躱した一匹が鳴き声を上げて泡を吹いている。
気がつくと僕の隣にいたはずのリプリアがメリクル神父より前に出ている。
すれ違いざまに魔法剣の電撃を食らわせたようだ。
ロケットスタートか。
そのままもう一匹を切りに行く。
直線だけなら動きが準エリザさん級だ。
メリクル神父は残った一匹を迎え撃とうとするが、体制が整いきっていない。
リプリアがそこに割って入る体勢になったが、突然に構えを解くリプリア。
転がっていく一匹。
いつの間にかリプリアが攻撃を加えていたようだ。
リプリアだけレベリング無視で突出して強すぎる。
僕の見たままを伝えているんだけど、動きが追い切れていないので訳の分からないことになっている。
転がってきたギグウロフをゴルフのスイングのような体勢でぶっ飛ばすメリクル神父。
ホームランだ。
エリッタが攻撃を加えたもう一匹も神父がメイスを振りかぶって叩きつける。
グチャリと潰れる頭。
当たりさえすればすっごいパワー。
僕の出番が無い。
悲しいので火炎弾を相手の魔族に向けてぶっ放した。
そのまま魔族に当たるかというところで、四匹目のギグウロフが間に入る。
僕の魔法はギグウロフを直撃する。
炎に包まれて転げ回るギグウロフ。
魔族はそれを冷ややかに見つめていた。
ちょっと青ざめているようにも見える。
「なかなかやるな。
まあ、お前等がある程度強いというのは分かった。
だが、周りを見てみろ。」
その言葉に僕が周囲を確認すると、多数のギグウロフが周囲を囲っていた。
最初の三匹は完全に囮だったのだ。
ザル勘定で50を超している。
さすがに数の暴力はマズい。
エリッタとリプリアだけなら火力とスピードで逃走が可能だろう。
逃走しつつ迎撃するという戦法が採れる。
しかし僕とメリクル神父は無理だ。
たまにはピンチ無しで圧勝したい所なんだけど、なんでいつもこうなるんだろう?
数の暴力を者ともしない無双がしたい。




