74 電撃戦で本当に電撃を放つ人がいる
毎回ピンチになるというのは僕もさすがに学習している。
だから可能性を考えて対策は練ってあるのだ。
その一つ、集団行動をする狼の魔物が大群で襲ってくるというケース。
もちろん想定済み。
ただ、確実では無いので出来ればやらずに済ませたかった。
「プランB。」
僕が声をかけるとリプリアがほぼ一瞬で隣に戻ってくる。
早すぎるよ。
エリッタも素早く僕の周囲へ駆け寄り、迎撃の構えをとる。
少し遅れてメリクル神父が到着した。
既に僕は魔術回路を編み始めている。
完成までの間、もう少し時間を稼いでもらいたい。
「さて、どうするんだ?
まさかこれだけの数を相手に一匹ずつ倒していこうとか考えているのか。
ほら、さっきみたいにやってみろよ。」
魔族の男がどや顔で挑発してくる。
すぐに攻撃してこない馬鹿さ加減が素敵だ。
「・・・。
なんだよ、来ないならもういいや。
死ね。」
そう言うと、魔族は人間には聞こえない笛を吹いた。
周囲を囲っていたギグウロフが一斉に突撃してくる。
このパーティーでも囲まれての一斉攻撃はさすがにマズい。
ギリギリになったけれど、編んでいた魔術回路が完成する。
「風魔法爆撃波。」
この魔法は名前の様な爆発系の攻撃力が無い。
ただ単純に凄まじい音が発生するだけの魔法だ。
味方のいる位置よりも外に対して発生させているものの、内側にも音が入ってくる。
自分の魔法ながら、難聴になりそうな音が聞こえてくる。
ギグウロフは狼の魔物だ。
その聴覚は人間よりも遙かに高い。
そしてその魔物が突然凄まじい音を食らったらどうなるか。
ひっくり返るギグウロフ達。
すぐに立ち上がろうとしている者もいたけれど、足がふらついている。
リプリアがギグウロフを中央突破していく。
まるで人間が稲妻になったかのごとく、光が伸びていく。
それに続いて突入していくエリッタ、道を広げていく。
メリクル神父は手近なギグウロフを吹き飛ばしまくる。
凄まじい爆音と突然の事態に唖然としていた魔族の元にリプリアが到達する。
「リプリア、奴を殺すな。」
僕が叫んだ時、既にリプリアが剣を納めた後だった。
倒れる魔族の男。
手遅れかと思った。
しかしリプリアが魔族の男の襟首を掴み持ち上げると、微妙に動いていた。
峰打ちだったようだ。
遅れて到着したエリッタが、落ちていた笛を拾う。
未だふらふらしているギグウロフ達。
魔族の男の様子を見て、蹌踉めきながら逃げ出していく。
再襲撃をかけてくる様子は無い。
なんとか勝った。
爆音攻撃がどのくらい効くのか未知数だったけれど成功して良かった。
僕とメリクル神父は魔族の男の近くまで移動した。
「さて、情報収集の時間ですね。」
僕がそう言うと、リプリアが魔族の男の顔を殴りつけた。
呻きながら意識を取り戻す魔族。
でもそれって一歩間違えると意識が戻らなくならない?
僕の言いたいことを理解したのかリプリアが言う。
「加減は心得ておりますのでご安心ください。」
怖ぁ、ご安心できないよ。
とりあえずそこを気にするのをやめよう。
「ギグウロフを増やして何をしようとしていたんですか?」
僕がそう聞くけれど、魔族は馬鹿にした笑みを浮かべて答えない。
その瞬間、魔族の体に光が走る。
「ぐがぁぁぁ。」
叫び声を上げる魔族。
リプリアの電撃魔法だ。
「うがぁぁぁ、ちょ。」
連続で入る電撃。
「うぐぅ、待って、ぎゃぁぁぁぁ。」
容赦ないよ、リプリア。
「いったん止めて。」
僕がそう言うと、電撃がやんだ。
「ひぃぃ、話す、話してやるから。」
リプリアが冷たい視線を送る。
「ぜひ、お話しさせてください。
お願いします。」
こうして僕達はこの魔族の男から情報を聞き出すことが出来るようになった。
でもね、みんなどん引きだよ。
拷問無双か・・・。




