24 賢者の杖に剣じゃ厳しい
魔術師は複雑な模様の杯に鈍い光を放つ石をのせた。
「さあ、材料は揃った。後は魂を杯に注ぎ込むだけじゃ。」
注ぎ込まれる魂というのは僕のことだろう。
このまま待っていてもタイムオーバーだ。
行動に移るため口を開こうとした瞬間、何かが派手にぶつかったような大きな音が聞こえた。
「無粋な奴らが来おったか。まあ良い。
この杖の力を試す実験材料となってもらえば良いだけじゃ。」
衝撃音と爆発音が響き渡る。
そして四人が姿を見せた。
「オキス、君は無事だね。
ルディンはどこにいるのかな?」
槍の人、そういえばこの人だけ名前を聞いていなかったゴメン・・・が、一番先に突入してきた。
僕は首を振ると、状況を察したのか悔しげな表情を浮かべる。
魔術師が炎の玉を放つ。
それを大剣が吹き飛ばす。
「そんな魔法、俺たちには通じないぞ、この外道の魔術師が!」
カイデウスさんだ。
次の瞬間、目の前に強烈な光が発生する。
レイリスさんの弓が打ち込まれたのだ。
しかし魔術師の防御魔法に阻まれ、それが光となって霧散した。
僕は魔術師のすぐ横にいたため、光で目をやられた。
チカチカする目に大きな炎の塊をかろうじて捉えた、ポリテオさんの攻撃魔法だ。
しかし僕が近くにいるため放つことが出来ない。
槍の人が魔術師の目の前に現れた。
おそらくすごい早さで距離を詰めてきたのだろう。
しかし、ただでさえチカチカしている目では、この人の動きを捉えることは不可能だ。
槍の一撃が魔術師の防御魔法と接触する。
そして槍が押し込まれていく。
槍が魔術師の心臓を捉えた・・・かに見えた。
「去ね。」
そう魔術師が言うと、槍の人が消えた、否、壁に吹き飛ばされていた。
賢者の杖が発動したのだ。
魔術師の注意が彼らに向けられている隙に、僕は魔術師から距離をとる。
それを見たポリテオさんが巨大は炎を魔術師に向けて放つ。
魔術師が賢者の杖を迫る炎に向けた。
その瞬間、そこには何も無くなった。
ポリテオさんの魔法が消失させられた。
次の瞬間、ポリテオさんの周りに、大きなプラズマのような物が発生する。
危険を悟ったカイデウスさんが、ポリテオさんを突き飛ばす。
「うぉぉぉ。」
プラズマの中に飛び込んだカイデウスさんは大剣をかざし、そして床に打ち付ける。
石造りの床が吹き飛び衝撃波が発生する。
カイデウスさんが膝をついた。
プラズマをはじき返したものの、かなりのダメージを受けたようだ。
ポリテオさんにもダメージが入った。
レイリスさんが弓で魔術師を狙っている。
それを見た魔術師はレイリスさんに向けて杖を構える。
レイリスさんの周りに血しぶきが飛ぶ。
レイリスさんの革装備がぱっくりと切れ、中から血がはじけ飛んだのだ。
もはや何を発動したのか見ることも出来ない。
もしかしたら風系の魔法なのだろうか。
「ふん、この程度か。
杖の試しにも使えんとは、興醒めじゃ。
まだほとんど力を出していないというのに。」
賢者の杖を発動してから、魔術師の力は圧倒的だった。
僕が賢者の石にされていたら、どれだけの力を見せるのか想像も出来ない。
この冒険者四人は強い、それは確実にいえる。
しかし魔術師の持っている賢者の杖がチート過ぎる。
僕は魔術師を倒すための策に出る。
ついに僕が無双する・・・といいな。




