23 強ぇ杖
森の館へご到着お客様一名ご案内という所だろうか。
館の主が出迎えた。
「陰気なジジイ」という表現がぴったりな、冷めた目をした魔術師だった。
手にはどこかで見覚えのあるような模様を刻んだ杖を持っている。
見ただけで尋常では無い魔力を持っているのが伝わってくる。
「遅い到着だのぉ。
まあ良い、早々に次の仕事に取りかかるだけじゃ。
さあ、こっちへ来い。」
僕は奥の部屋へと案内された。
「ルディンはどこですか?」
まずはルディンの無事を確認したい。
「ルディン?
ああ、あの子供なら、ほらここじゃ。」
奥にある祭壇に棺のようなものが置いてあった。
僕は急いで駆け寄り中を覗き込むとルディンの姿がそこにあった。
「ルディン、大丈夫?」
ルディンの様子を確認した。
息をしていない、そして・・・心臓も止まっていた。
僕は一瞬だけ頭が真っ白になりかけた、しかし持ち直す。
「ルディンをいったいどうしたんだ!」
僕は陰気な魔術師に叫ぶ。
「それは魂を失った抜け殻じゃ。
さっきから『ここ』と言っておるじゃろ。」
魔術師は手に持つ杖を掲げた。
それを見て僕は言葉を失った。
「いったい何をしたんですか?」
僕は心をできる限り平静に戻して聞いた。
「魂を力に変える実験じゃよ。魂を物に定着させて力を与える・・・な。
王国でほとんど完成というところで、無能な馬鹿共が邪魔をしてきおった。
儂がおればたとえこんな辺鄙なところでも、材料さえ揃えられれば完成に至るという事じゃ。」
瞳に何か苦々しげな物が宿った。
「その杖にルディンの魂が・・・という理解で正しいんですか?」
「うむ、正解じゃ。」
弟子が課題を一つクリアしたような、そんな態度をとる魔術師。
「魔族の入れ知恵でこんな事をしているんですか?」
「魔族・・・。
彼奴が儂を利用しようとしていることは知っておる。
しかし研究は儂の成果じゃ。決して入れ知恵などでは無い。」
急に機嫌が悪くなる魔術師。
僕の言葉でプライドが刺激されたのだろう。
「この杖は賢者の杖、今までの魔術回路の構成を覆す究極の杖じゃ。
賢者の杖を使えば、魔王種にも匹敵する魔術回路を編むことが出来る。
そしてお前の魂を使い、これから賢者の石を生成する。
魔力を生み出す究極の石じゃ。
色々な動物や魔物、そして人間で実験した結果、幼い人間の子供を使うのが、最も効果が出たのじゃよ。
この二つがそろえば、儂は魔王をも超える存在となり得るのじゃ。」
こんな辺境でずいぶん大変なことが起こっている。
そしてこの老人は魔王種について語っているが、目の前にいる存在がそれの子供だと気がついているのだろうか?
僕は魔術師がそのことに気がついているかどうか観察していた。
それを勘違いして、別の解釈をしたようだ。
見当違いなことを勝手に語り始めた。
「ふん、所詮は子供、理解出来ぬであろう。
王国でも人間を実験に使うことに目くじらを立てる者がおってな。
なにも虐待が目的で実験しているわけでは無い。
大いなる成果のためには犠牲は付きものじゃ。
家畜が憎くて殺すわけでは無い、食べるために殺す、それと何も変わらんのじゃ。」
どうやら僕のことは、ただの子供だと思われているようだ。
ルディンは魂を杖に封じ込まれた。
事実上、体が死んでいることを考えると元に戻すのは不可能だ。
ルディンの事を思い返す。
僕とジキルにくっついてきて、一生懸命に仕事を手伝ってくれた。
彼は言葉が話せなかった。
原因は分からない。
しかし完全に声が出なかったわけでは無い。
いつか話せる日が来るといいと思っていた。
僕はいくつも失敗をした。
僕は彼を助けられた。
致命的なのはルディンの姿が見えなくなった時。
チャンスはあったのだ。
しかし正しい行動をとらなかった。
今、僕が出来ることをやろう。
今度こそ、全力を出す時だ。
怒りで覚醒無双・・・が、出来るといいな。




