15 愉快では無い誘拐
今日もグラマンさんの手伝いに4人で向かう。固定パーティー化してきた。
町を歩いていると、気むずかしそうな初老の男に声をかけられた。
「孤児院の子供か。お前達の年で町に来るには早い。
最近、怪しいよそ者が出入りしているようだ。
誘拐などされたくなければ、孤児院に帰るがいい。」
僕たちが町を歩いているのが気にくわないような言い方だった。
初老の男はそれだけ言うと、僕たちが返答を返すまもなく歩いて行ってしまった。
まあ、石を投げられないだけマシかと思いつつ歩く。
さっき言っていた「怪しいよそ者」というやつだろうか、四人の男女が目に入った。
大剣を背中に背負った男
布に包んであるが槍であろうものを持った男
メイスを腰に下げた男
大弓を背中に背負っている女
町中でクエストをこなすパチモノではない本物の冒険者だ。
特に背中に背負われている大剣には目がいってしまう。
刃は見えないが相当なオーラを放っている。
僕たち四人はポカンと見ていると、冒険者ギルドの方へ行ってしまった。
全員、ただ者では無い。
そう思った。
雑貨屋の手伝いをしながら、グラマンさんに初老の男と冒険者の話をした。
「初老で気むずかしい・・・その人は町長だよ。
キツい言い方だったかもしれないが、君たちを案じてのことだ。
悪くとらないで欲しい。」
グラマンさんのフォローが入る、態度が大人だ。
グラマンさんも町議の一人らしいのだけど、町長はかなりのやり手だという話をしてくれた。
インフラ整備を政策の中心に据えて、町の環境がかなり改善されたらしい。
町長とは今まで会ったことは無かったけれど、噂は色々聞いていた。
身近なところではカティアさんが、希望の家の助成金を削減されて町長の愚痴をこぼしていた。
豆スープの原因に町長か絡んでいるかと思うと、少なからぬ怒りが沸いて来なくもない。
食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
職人達からは、土木の仕事は町長が運営している組織で行われているため、町の金で私腹を肥やしやがってと憤っていた。
僕の周りの町長の評判はすこぶる悪い。
冒険者パーティーに関しても聞いてみたけれど、グラマンさんは知らないということだった。
町に来たばかりなのだろう。
機会があったら、色々と話を聞いてみたいところだ。
「実は町長からの頼まれものがあってね。
燃えやすい品なので、安全のために町外れの倉庫にしまってあるんだ。
鍵を渡すからとってきてくれるかな。」
パメラは店内の手伝いを続け、僕たち三人は町外れの倉庫に行くことにした。
三人で小屋を目指して歩いていると、道の途中にいかにもチンピラ風な男を二人見かけた。
ニヤニヤしながらこちらを見ている。
警戒する間もなく、前後を挟まれた。男の一人がナイフを取り出した。
「騒ぐなよ、分かってるな。」
ルディンがグスグス声を立てないように泣き出した。
ジキルはルディンを守るように背中に隠し、目に涙をためている。
僕は男二人の挙動を観察した。
相手は二人だ。
全員でバラバラに逃げれば一人は助かるかもしれない。
しかし捕まった者が危険にさらされる。
逃走は諦めた。
そして僕らは誘拐された。
この後、脱出無双が出来るといいな。




