16 尻を狙う知り合いなど知りません
僕達は町の外へ連れ出された。
向かっている方角は、カティアさんから絶対に行っては駄目だと言われた場所だ。
何故駄目なのか、近づくにつれて何となく理解した。
懐かしい匂い、これは瘴気の匂いだ。
途中二人組の男に質問を投げかけてみたけれど、黙って歩けと言われるだけだった。
歩きながら考る。
まず何故こんなところへ連れて来られたのか。
金持ちの子息というわけでは無い。
魔王の息子だと突っ込みは、今回無しにして欲しい。
身代金目的は考えられない。
僕達のナリで裕福だと思う人間がいるとしたら、頭が沸いている。
人身売買という可能性。
この国に奴隷制は無い。
そんな国で子供を連れ回して売り買いするのは、リスクが大きいので考えにくい。
そもそも子供が欲しければ、きちんと手続きを踏めば孤児院から養子にとることが可能なのだ。
これはお尻のピンチと考えるべきだろうか?
しかしこの二人の雰囲気から何か違う感じがする。
既に道といえるような道が無い。
かなりの時間歩いたところで小さな小屋が見えた。
「とっとと中に入れ。」
僕達は小屋へ連れ込まれた。
奥へ押し込まれる。
「大人しくしていれば何もしない。黙って待ってろ。」
「俺は手筈通りに。ちょっと出てくる。」
「分かった。こんな仕事、とっとと終わらせようぜ。」
一人が小屋から出て行った。
もう一人の男は扉の前に椅子を移動させる。
そして椅子に座ると、木製のボトルに入った何かを飲み始めた。
アルコール臭がする、酒だ。
この小屋には窓が無い。
あるのはテーブルと椅子、そして唯一の出入り口である扉だけだ。
ここから逃げ出すためには、小屋に残った一人を何とかするしか無い。
チンピラ風のこの男は、あの冒険者パーティーに比べれば、明らかに底辺もいいところのレベルだろう。
しかし残念ながら僕達の力は、その底辺にも劣る。
「僕達をこの後どうするつもりなの?」
歩いている途中にも聞いた質問を再度投げかけてみる。
「この先に館がある。
お前達は、そこにいる陰気なジジイのところに行ってもらう。
それで俺たちはそれでお役御免だ。
その後のことは知らねえ、せいぜい幸せに生きろよ。」
しかし未だに誘拐の理由が分からない。
そのジジイの目的がまったく推測できない。
尻の危険度の推移は微妙だ。
ショタコンで無いことを祈るばかりだ。
ルディンは相変わらず嗚咽を漏らしている。
ジキルが自分が震えながらも、一生懸命ルティンの頭を撫でて大丈夫と励ましている。
オーガーの咆哮を体験した身としては、この程度の状況ではさっぱり恐怖感がわかない。
この感覚の鈍さがマイナスに働かないことを祈るばかりだ。
さっき出て行った一人は、謎のジジイに話を通しにいったのだろうか。
そいつが再び小屋に戻ってくる前に何とかしたい。
扉の前に陣取った男は酒を飲んでいる、
位置的に考えて、逃げだそうとすれば簡単に対処されてしまうだろう。
僕は二人の方を見て言った。
「まあ、何とかなるよ。
今は大人しくしておこう。」
無抵抗を装って、男から見えにくいテーブルの陰へ移動した。
そこで魔術回路を編み始める。
以前、狸に使った沈静魔法だ。
魔法を男に向かって使用するが、相変わらず酒を飲んでいる。
かなりの時間、魔法をかけたはずなのに変化が見られない。
人間には効果が薄いのか・・・と考えた瞬間、男の酒を持つ手が止まった。
ボトルを持つ手が下がり、床に落ちそうになる。
僕は急いで近づき、そっとボトルを押さえた。
僕は指先を鼻にあてると、静かにするよう二人に合図した。
「ここから出るよ。慌てずゆっくり静かにね。」
僕達は男の座っている椅子をよけ、扉を開く。
椅子が邪魔だが外開きの扉なのは幸いだった。
キィィという音が鳴る。
男がぴくりと動いた。
ルディンが絶望的な顔をし、ジキルがより一層ガクガクと震える。
男の顔を覗き込んでみたが、その後の反応は無かった。
僕達は脱出に成功した。
次はスネーク無双が出来るといいな。




