11 お菓子のせいでおかしいと思われる
グラマンさんが雑貨品を馬で持ってきていた。町の雑貨屋のおっちゃんだ。
いつもにこにこしていて、時々おやつをくれるので子供たちから好かれている。
荷物を配達し、希望の家から出てきたところだ。
そこに僕とジキルとルティントとパメラがすれ違った。
こちらから先に挨拶すると、挨拶を返した後に一声かけてきた。
「薪集めかい、重かったろう。そうだ、いいものがある。全員分は無いから君たちで食べるといい。」
グラマンさんは僕たちに袋を差し出した。
僕が受け取って中身を確認すると、ビスケットが入っていた。希望の家では超貴重品だ。
「グラマンさん、ありがとうございます。ええと・・・9枚。四人いるから一人2枚、ルティンに余った1枚を多くあげるよ。」
みんなにビスケットを配り、袋をグラマンさん返す。
大喜びでビスケットを食べる三人。
僕も食べようとした。
その直後、グラマンさんが変な顔をしていることに気がつく。
「どうしたんですか、グラマンさん」
「君、名前はなんて言うんだっけ?」
「オキスです。」
「オキス君、もしかして計算ができるのかな?」
「・・・。」
うっかりしていた。
この希望の家では勉強は教えていない。
文字すら読めない環境で、暗算で割り算の計算ができる子供などいるはずが無い。
しかも僕、四歳。
ビスケットを受け取った後の処置は、一人一人に1枚ずつ順番に配るのが正解だった。
「ここに来る前の記憶がないのですが、どうやら親が商人だったらしいので、その時に習ったのかもしれません。」
「そうか。うん。記憶が無いのか。受け答えもしっかりしているし、その年でそれだけできると言うことは、まさか貴族の子という可能性も・・・。」
なにかぶつぶつ言い始めた。あまり勘ぐられたくは無いんだけど。
「ビスケット美味しかったです、薪集めがまだ残っているのでこれで失礼しますね。」
みんなを連れて逃げた。
調子に乗りすぎたかもしれない。
しかし多少怪しまれたところで、こんな田舎で正体がばれるとは思えない。
目立ちたくは無いけど、生活環境の改善のためにやりたいことは色々ある。
あまり気にしないことにした。
まずは食糧事情の改善のため、裏山で食べられそうなもののリストアップ作業に入った。
この希望の家は栄養が少なすぎだ。
大人たちに聞いても、裏山で何が食べられるのかほとんど把握していなかった。
子供達の情報の方がまだ役に立った。
それぞれが色々と食料を調達していたようだ。
食べ物が増えると聞いて、みんな積極的に情報集めと実験に協力してくれた。
山菜、キノコ、木の実、果実。
食べられるのか分からないものは、パッチテストを行いつつ慎重に調べた。
子供の体力では危険なのは承知していたが、最悪でも腹を下す程度で重傷者はでなかった。
ババを引いた子には痛みを緩和するおまじないを懺悔代わりにしておいた。
胃腸が相手だと、本当に気休めにしかならなかったけど。
スープの具材が格段に増え、デザート付きになった。
サバイバル無双ができるかな。




