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張り切りフェネックは進む 7

 


『ええと、()()()()をするときは……まず、どうしたいか考えるんだっけ』


 魔素溜まり、と呼ばれている黒いもやもやの前で、レイシュは以前ダーカに教わったことを思い出していた。

 弱った花を元気にするとき。御守りに力を込めるとき。さちばぁのいたいいたいを治すとき。

 ただ、元気になってほしいだけではダメ。どうしたいかをちゃんと考える。


『あのときはお花の、のどが渇いたのとお腹すいたのとを治したいって、あったかくしてって考えたんだよ』


 グレンとヒューゴは何と言っていただろうか。

 このもやもやは、魔獣をいっぱい作っちゃったり、強い魔物をよんじゃったりするんだったはず。

 だから、()()()()、とやらで破壊して無くさないといけないのだ。

 じゃあ、無くすのはどうやればいいんだろう。


『ん-と、もやもやが集まっちゃうからだめなんでしょ。魔素はもともと、そのへんにいっぱいあるんだって言ってた。でも集まっちゃうと悪いことしちゃうんだって』


 レイシュはとてもいいことを思い付いた。

 ならば、散らせばいいんだ!


『こわして無くさなくても、あったとこに戻せばいいんだもん。こわすより簡単だよ! あ、そうだ、あとぼくの足りない分にもなってほしいなぁ』


 空に近いほど無くなってしまった、ダーカに貰った力の分を補充しないといけない。

 ダーちゃんにあげないといけないし、これからは修行、にも必要なのだ。多分。

 祝い(いわい)に込める想いは決まった。ヒューゴはまじゅつ、とかまほう、とかよくわからない事言うけれど、レイシュは祝う方が慣れていて容易いのだ。まぁ、どちらも大して変わるまい。 

 よし、と気合を入れて立ち上がる。

 いつもなんとなくだけれど、祝う時にかっこいいポーズをとった方が上手くいく気がするのだ。


『魔素さん! あっちいってー! もう集まっちゃだめだよ! あとね、全部行っちゃわないで、ぼくにちょっとだけちょうだいー』


 言葉に力を込めて祝う。

 立ち上がってピンと伸ばした前足の先から、ジワッと力が抜けていく。

 そして、祝いが触れた先から、魔素溜まりはキラキラとした粒になって、空に溶けだし消えはじめる。

 それと同時に、ちょっとだけ、と言ったはずだが割と多めの魔素がレイシュのもとに来てくれたらしい。魔石を触ったときよりもよほど多い量が体内に入ってきた。


『ふおぉー! きれー。いるみねーしょん!』

「レイシュ! 無事か?!」

『ふわぁっ!?』


 キラキラと溶けていった魔素を、立ったままポヤッと最後まで見送っていると、急に背後から持ち上げられた。

 そのまま力強い腕と分厚い胸に挟まれる。


『むぎゅっ。だいじょぶよ、グレン。でも、つぶれちゃうからゆるめてぇー』

≪坊が潰れかかっている≫

「あ。すまない! 大丈夫か?」

『うん。もうへいきー』

≪無問題≫


 グレンにあちこちを撫で繰り回されて、無事を確認されているところに、今まで黙って立っていたヒューゴが、もう待てないとばかりに足早に近づいてきた。


「大丈夫なようであれば説明してくれ。眷属様はいったい何をしたんだ?」

『じょうか? だよー』

≪浄化である≫

「そんなはずがない! 聖騎士が浄化をした場合、魔素溜まりと聖魔力がぶつかり合って、辺りには相応の影響が出るとされている。一時的に魔物が興奮して飛び出してきたり、草木が枯れたりする場合もあると」

『ふぇっ?! じょうかってそんなにこわいの?!』

≪そんな危険な事を坊にさせるとは貴様、排除するぞ≫

「このクソ魔道具、今の絶対訳してないだろう! そうじゃない、魔物は寄ってこれないだろうし、来てもグレンが対処する。木が枯れても問題無いだろう。どのみち眷属様に危険はない」

「勝手に決められているが、まぁその通りだ。だがレイシュ、本当に何をしたんだ? ずいぶん綺麗に無くなっちまったな」

「そう、そこだ! あの光の粒子はなんだったんだ! どうみても破壊という表現には当てはまらない! ……何を考えて魔力を使った? それから眷属様にまとわりついていた光は?」

『えー。何っていっても……あっちいってね、って、もう集まっちゃダメだよっていったの』

≪総員、解散と命じた≫

「……はぁ?」

『あとね、ちょっとだけぼくにちょうだいね、っていったよ』

≪少量の譲渡を坊は願った≫

「……解散、だと? ……まてよ、魔素を分散させたのか。破壊したのではなく。それが粒子になって消えた……」

「譲渡ってのは、レイシュの魔力として取り込んだって事でいいのか? おい、ちょっと鑑定するぞ」

『いーよぉ』

≪諾≫

「……すげぇ急に魔力値増えてんな。Cになってやがる。こんな急激に増えて体調に変化は無いのか?」

『ないかなぁ。まだうすくていっぱいにはなってないけど、ちょっとはお腹がたまった感じ』

≪力の濃度は薄いが、多少の補充はなされた≫

「全部ではないとは言え、あの大きさの魔素溜まりを吸収して多少……」

「……ん? おいヒューゴ、あれ見てみろ。地面だ」

「なにか……ッ!? あれは……魔石か?まさか、光っている部分が全て聖魔石かっ!」


 グレンに声をかけられたヒューゴが振り返ったかと思うと、先ほどまで黒いもやもやがあった所にすごいスピードで駆け去っていく。

 そうかと思うと、奇麗なマントが汚れるのも構わずに地面に這いつくばり、そのまま素手で土を掘り始めた。


『あっ! なぁに、穴掘りするの? ぼくもやるー!』


 グレンの腕の中から飛び降りて、レイシュもヒューゴの元に走っていく。そのまま、キラキラが残った地面を掘り返し始めた。宝物を探しているみたいで、達成感があってとても楽しい。 


「おいグレン! ぼさっとせずにお前も手伝え! とんでもない量だぞ! 掘り尽くせ!!」

『はぁーい!』

「…はぁ」


 その後、2人と一匹は、レイシュがお腹がすいた! と騒ぎ出すまで、泥だらけになって魔石堀りを続けたのだった。






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