79話 ウェスト誕生の原因④
ぎりぎりすぎー!!
10時52分に書き終わりましたw
お楽しみいただけると幸です。
◆現在 流空達の家
「捕まってからは本当に早かった。
国王とシャーロット殿下だけは俺の元の人間を庇ってくれたが、元々平民の人間が勇者だと言われても気に食わない連中が貴族の殆どを占めたからな。俺の元の人間は投獄されて『隷属化』を何重にもかけられた」
ウェストはそう言って肩を竦めた。
そして、ウェストは目を閉じて話の続きを話し始めた。
「ここからは俺の記憶もかなり飛ぶ。俺の元の人間が捕まってから恐らくだが、1億年程は経っているだろう。しかも残りの記憶の所々は抜けている」
俺達はウェストの言葉に驚いた。
俺はウェストに聞いた。
「なあウェスト。記憶が飛んだのは、まあ2人になった?時に記憶が2つに分かれると言われるのは分かる。でも1億年も飛ぶのか?」
俺がそう言うと、ウェストは目を開いて悲しそうな顔をした。
「確かに2人に分かれた場合は、普通1億年も記憶が飛ぶ事は無い。まあ、2人に分かれるのが普通かどうかは置いておいてだけどな。
それでも1億年も記憶が飛んだのは、2人に分かれた時の比重が俺が0.1%でもう1人が99.9%だからだな」
ウェストがそう言うと、イルミが驚いた顔をしてウェストに聞いた。
「それは、つまり貴方ともう1人の差が999%あると言う事ですか?」
ウェストはイルミの言葉に頷いてから答えた。
「いや俺ともう1人の俺の差は99%だった。しかも厄介な事に、もう1人の俺が強くなろうと、俺が強くなろうと、この差は変わらない。つまり、お前達の敵は俺の99倍は強い力という訳だ」
ウェストがそう言うと、全員が黙った。
俺はそんな強い敵を倒さないと地球に帰れないと、聞いただけでも苦い思いを持った。
沈黙を破ったのは、ウェスト本人だった。
「お前達は、俺が何故会った事も見た事も無い『ナンバーズ』や【主器】を知っているかと聞いたな。俺ともう1人の俺は2人に分かれてから、100年程だったがリンクしていた。それも偶にではあるが、記憶すら共有してしまう程の強いリンクだ。
恐らくもう1人の俺は、分かれた後100年の俺の記憶や経験を全て持っているだろう。だが俺もただ記憶や経験を取られていた訳じゃなかった。それが会った事の無い『ナンバーズ』と見た事の無い【主器】の情報だった訳だ」
ウェストの言葉を聞いて、俺はなるほどと思った。
俺は2人に分かれた事が無いが、納得出来た。
俺はウェストにもう1人のウェストの事を聞いた。
「なあウェスト。もう1人のウェストは何が目的なんだ?」
俺がそう聞くと、ウェストは苦笑いしながら聞いた。
「ウェストは俺が勝手に名乗ってるだけだから、もう1人の俺の名前は違うと思うぞ。それで目的だったか、俺にも全ては分からない。だが1つだけ分かる。
奴の目的の1つは、奴自身の大切な人間を見つける事だろう」
ウェストの言葉を聞いて、俺は疑問に思った。
なので俺はウェストに聞いた。
「奴の大切な人間を見つける事?どう言う事だ?」
俺がそう聞くと、ウェストは待ったをかけた。
「まあ、待て。奴の大切な人間は、奴自身を大切にしてくれた人間だ。だが奴の大切な人間の話しに行く前に、俺が知っている記憶を話す」
ウェストはそう言って、話し始めた。
◆ウェストの元になった人間が捕まってから1億年後
俺は真っ暗な空間に居た。
俺は何の為に、ここに居る?
もう水も食べ物も何もくれない。
歳な男(国王)とどこか悲しい顔をした女(シャーロット殿下)が居なくなってからは、戦闘の時しか動けない。
それも200年に1度外に出れたら良い方だ。
酷い時は1000年間程、放置された。
その時は俺の『隷属化』の更新に100年程に1回くらいしか人が来ないので、誰とも話せなかったから、以外ときつかった。
後は俺が『不老不死』なのを良い事に、ストレス発散か何か知らないが、俺を殴ったり、剣で切りつけたり、薬物の実験をしたり、何かよく分からなかった実験(今はその効果を実感している)をされたりした。
800年程すると痛みも一切無かったので、特に辛くは無かった。
そう言えば確か1億年前にドラゴンが襲って来たが、その頃は『隷属化』が酷過ぎて、どうなったかは記憶が無い。
と言うよりも最近(ここ1000年)になって、やっとこうやって何かを考えられる様になった。
昨日は俺を管理していたの(俺の『隷属化』の大元の主)が死んだらしい。
体がかなり軽くなったから、分かる。
なので誰かは知らないが新しく『隷属化』の更新に来るだろう。
・・・もうどうでも良いな『隷属化』して来る奴を片っ端から殺すか。
今の俺は体をオリハルコンの鎖で雁字搦めにされて、その上から更にオリハルコンの鎖で雁字搦めにされて居るので、鎖の外には顔しか出て居ない。
まあ鎖を腕力だけで引きちぎるか、『隷属化』をしてくる時は俺に近づくので、口元のオリハルコンの鎖を床から引き抜いて、『隷属化』してくる奴を真っ二つにしてやろうか。
俺がそんな事を考えていると、真っ暗な空間に光がさした(文字通り)。
どうやら今回の『隷属化』の更新は、女らしい。
ああ、女と言うだけで俺をこんなのにしたゴミを思い出してしまった。
殺すしてしまっても良いだろうか?
・・・良いか、殺してしまおう。
あの女が俺を『隷属化』しようと、最大射程範囲(10m)で止まった瞬間、俺をこんな暗い空間に留めているオリハルコンの鎖を引きちぎり、奴を殺す。
俺がそんな考えに囚われていると、女が『隷属化』の最大射程に入った。
俺はその瞬間、オリハルコンの鎖を引きちぎろうとしたが、女の予想外の行動に思わず停止した。
女は『隷属化』の最大射程を超えて俺の方に近寄って来た。
俺は何故かと考えた。
・・・そうか、より強力に『隷属化』をしようとしているのか。
それなら奴が止まった瞬間に殺そう。
俺はこう考えた(ここまで0.1秒)。
俺は女が止まるまで待っていたが、女は止まらずに俺に触れる距離まで来た。
俺が力を全身に入れて、オリハルコンの鎖を引きちぎろうとした瞬間、女は言った。
「ごめんなさい。辛いですよね」
俺は『隷属化』の詠唱以外の声を久しぶりに聞いた。
以前は俺が居る暗い空間の近くでも話し声がしたが、1回だけ誰かの声真似をしたら誰も話さなくなったのだ。
そんな事は兎も角、女は俺に謝った。
しかも何故か泣いていた。
そして話しかけてきたのだ。
何か言った方が良いだろうか?
と言うよりも言葉は通じるだろうか?
いや、女の言葉が理解出来たし大丈夫か。
?
俺は女に何か言葉を返すつもりだったのか?
・・・止めよう、この先は考えたら駄目な気がする。
だがとりあえず、俺はまだ人間らしい?思考が出来るらしい。
女には、俺が人間だと思い出せてくれた礼をして、殺そう。
俺はそう考えて、オリハルコンの鎖を噛みちぎった。
バンッ!!
ガタンッ!!
俺がオリハルコンの鎖を噛みちぎると、何か吹っ飛んだ様な音がした後、俺が噛みちぎった残りのオリハルコンの鎖が床に落ちた音がした。
何やら外が騒がしいな。
どうやら『隷属化』を更新する時に1人しか入って来ないのに、足音が沢山するのは護衛か何かだったのだろう。
まあどうでも良い。
女に礼を言って殺す、それだけだ。
「おい、女。お前は俺に久しぶりに話しかけた人間だ。そのお陰か俺が、まだ人間だと分かった。礼を言うぞ」
俺はそれだけ言うと、俺の体を雁字搦めにしていたオリハルコンの鎖を引きちぎろうとした。
存外に固く、2秒経ってもひびが入る程度か。
だが次の瞬間には引きちぎれる。
俺がそう考えた瞬間、女は笑っていった。
「大丈夫です。私を殺したら外の護衛は逃げると思います。だからどうか遠くに逃げて下さい」
俺は女の言葉を聞くと、体を止めた。
こいつ俺に殺されに来たのか?
何故?
・・・ああ、こいつに興味を持ってしまった。
「お前、名前は?」
女は、俺の問に少し意外そうな顔をしながら答えた。
「私は■■■■・●●●●●です」
「そうか、何故俺に殺されたい?」
俺の問に■■■■は驚いた顔をした。
そして下を向いて肩を震わせて答えた。
「私は貴族です。ですが、男爵家です。そして私の親は、私を道具としか見ていません。しかも、私は公爵家のご子息に目を付けられてしまいました。
今回の貴方の『隷属化』の更新だって、私を公爵家に嫁がせる為の、そして公爵家がご子息にお気に入りを側室にする為に格を付けさせる為です。
私は貴方の『隷属化』を成功させようがさせまいが、終わりです。それなら貴方に殺されようと思いました。貴方を利用しようとして、申し訳有りません」
女はそう言って俺に頭を下げた。
俺は女を視ていた。
俺の目は相手の全てを視る事が出来る。
どうやら今言った事は、全て本当らしい。
それだけじゃない、こいつは両親にも姉にも妹にも弟にもさまたげられている。
こいつは子供の頃から家の掃除や料理等、家の家事をかなりやらされているらしい。
しかも理由はただ人を雇う金で、自分達が豪遊したいと言う下らない理由でだ。
それなのに下手に残り物の料理を食べて育ったせいで、スタイルが良く言葉遣いも丁寧で、男共から人気が出てしまった。
両親はこれ幸いと、出来るだけ上の貴族の家に嫁がせて金を貰って遊ぼうとしている。
姉も妹も弟も、両親の考えと同様だ。
しかも公爵家の長男(こいつの嫁ぎ先)は、王族以外は何でも思いどうりになると思っていると屑と来たか。
ああ、こいつを不憫に思ってしまった。
「お前は家族にさまたげれて、その後は公爵家の男におもちゃにされる。そんな人生で良いのか?」
俺がそう聞くと、■■■■は目を見開いて涙をためながら言った。
「いやですよ。でも私は貴族に生まれたんです。逃げられないんですよ」
「お前は俺を信じるか?」
俺がそう聞くと、■■■■は不思議そうに声を漏らした。
「え?」
「聞き方を変えよう。選べ、公爵家におもちゃにされる人生か。俺におもちゃにされる人生か。どっちが良い?」
「な、何を」
■■■■が不思議そうに眉をひそめると、後ろから音がした。
ガタン!!
ガタン、ガタン!!
どうやら扉が破られそうになっているらしい。
因みに俺がオリハルコンの鎖を噛みちぎった時点で、扉には俺が魔法をかけて開かないようにしている。
ふむ、ちょうど良い。
俺はそう考えて扉にかけた魔法を緩めた。
後少しで開くだろう。
俺は■■■■に言った。
「あの扉が破られる前に決めろ。公爵家のおもちゃか、俺のおもちゃかだ」
■■■■は俺の言葉を聞いて、その上で俺の事を考えて言った。
「私が貴方のおもちゃになれば、公爵家が黙ってない。私は公爵家のおもちゃにー」
俺は■■■■がそう言い切る前に、オリハルコンの鎖を引きちぎった。
「公爵家?お前は俺が公爵家如きに負けるとでも?それに俺はおもちゃを大事にする質だぞ?」
俺がそう言うと、■■■■は俺の言いたい事を理解したらしい。
まあここで■■■■が俺を利用しようと考えれば、俺のおもちゃになると言っても公爵家のおもちゃだがな。
俺がそんな事を考えていると、■■■■は泣きながら言った。
「私なんかの為にありがとうございます。・・・私は貴方のおもちゃになります。私は貴方に何処までも付いていきます」
どうでしたか?
かなり駆け足で書いたので、表現や言葉が間違っているかも。
■■■■・●●●●●の言葉遣いは「です・ます」です。
次の投稿は日曜日の9月6日の午後9時〜11時(基本午後10時)の予定です。
今後ですが午後11時までに投稿してなければ、その日は無しでお願いします。
その後の予定は、一応後書きで書いている、その時の投稿ペースの予定です。
ご感想、誤字、ここをこうして欲しい、こういう能力や展開、サイドストーリーやキャラが欲しい等など何でも送って頂いて大丈夫です。
送って頂いた物に関しては積極的に取り入れて行きたいと思っています。
ゆっくりと進んで行きますが応援よろしくお願いします。




