表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/107

エピローグ

セリカがランディの店を始めて8年後、記念すべき日がやって来た。


「まさか10年にならないうちに、貸した金に利子をつけて返してもらえるとはな」


「頑張りましたから。でも、子育てや普段の生活にダニエルの応援があったおかげよ。本当にありがとう、お父さん」


「ありがと! お父ーしゃん!」


腕に抱いていた娘にもお礼を言われて、ダニエルは苦笑している。



「おいおい、ドルーは意味がわかって言ってるのか?」


「それはわからないけど、ありがとうの気持ちは僕も一緒だよ。お父さん、誕生日おめでとう! これ、マイケルと僕からのプレゼント」


「カッコいいやつなんだよ!」


長男のダグラスと次男のマイケルは、ランディの店で使い走りの手伝いをして貯めたお金で、父親のダニエルにハンカチと靴下を買っていた。


ダニエルはドルーを下におろして、ダグラスからプレゼントを受け取ると、男の子二人をギュッと抱きしめた。


「なんて嬉しいんだ。ダグラスもマイケルもありがとう! 開けてみていいかい?」


「「うん!!」」



二人がジッと見守る中で、ダニエルはリボンをほどいて、包装紙を開ける。


「うわ、これはすごいな。こんなカッコいいハンカチや靴下を持てるなんて、お父さんは幸せ者だな」


本当に嬉しそうなダニエルを見て、子ども達も安心したようだ。



セリカはそんな夫と息子たちの様子を見て、改めて幸せを感じていた。


ハイハイしてきて、セリカの足につかまり立ちをしている1歳のシェリル赤ちゃん。

今日は何か楽しい日だと朝から興奮している3歳のドルー。

浮遊魔法が得意でいつもタンジェントを困らせている5歳のマイケル。

ダニエルに似て、冷静で頭のいい7歳のダグラス。


女の子と男の子が2人ずつ。

4人もの子どもに恵まれて、ラザフォード侯爵家は大家族になった。



ダルトン先生は暇があるとうちへやってきて、子ども達と遊ぶのを楽しみにしている。

足腰は弱ってきているが魔法量は相変わらず多いので、足が痛い日には浮遊魔法を使って移動しているようだ。

次男のマイケルはダルじいを英雄視しているので、いつも側にくっついて歩いている。

どうやら親に隠れて、魔法も習っているらしい。


ダルトン先生は後継ぎがいないので、マイケルを養子にくれないかと聞かれたことがある。

セリカは成人後に本人が望むのならと答えたが、本当はどこにも行ってほしくない。



長男のダグラスは貴族の基礎学校に行く時に困らないように、今年の春からデクスター先生に勉強を教えてもらっている。

勉強もできるのだが、ピアノを弾くのが好きらしい。

これはセリカの侍女のエレナの影響だと思われる。


この夏、ダニエルが魔法科学研究所で電気で自動演奏ができるピアノを作って、セリカの店へプレゼントしてくれたのだが、これがダグラスには衝撃的な代物だったようだ。

それ以来、お父さんに魔法科学研究所に連れていってくれとせがむようになった。

この子もダニエルのような研究者になるのかもしれない。


「電気」を使う電灯などは、セリカが店の平民の従業員が扱いやすいようにと頼んでダニエルに作ってもらったものだが、思いもかけないことに店の客の口伝えから、ファジャンシル王国全体に広がっていった。

今では都市部にはどこの家でも電灯がある。

貴族の魔法量が少なくなっているので、貴族社会にも電気製品が受け入れられていった。



長女のドルーは生まれてすぐに、ジュリアン王子の息子のアーロン殿下から結婚の申し込みがあった。

セリカは目が点になったが、それはほんの序の口だった。

ダレニアン伯爵のところのティム君とジョシュ君をはじめ、コールマン公爵、ディロン伯爵、マースデン伯爵……等々、数えきれないところから嫁に欲しいと言われている。


せめて基礎学校が済む10歳まで相手を決めるのを待ってほしいと、セリカはダニエルに頼んだ。

ドルーにも最低限、好きか嫌いかぐらいは、選ばせてやりたい。


今では派閥も統合されつつあって、貴族もジュリアン王子の下にまとまりをみせてきている。

オディエ国との国交も盛んになっているので、国際結婚をしたという話をよく聞くようになってきた。



そして姉の例にもれず、よだれを垂らしている次女のシェリルも、ジュリアン王子の息子からプロポーズを受けている。


早すぎない?


― 子ども達もみんな、魔法量が多そうだからねぇ。


ダニエルが自分の結婚を避けるために、あんなことを言うからよね。


― でも、セリカも第三夫人とかにならなくて良かったじゃない。


……まあね。



「お母さん! 飛び竜が来たよ! ダレーナのおばあちゃんたちから手紙が来てるかも」


ダグラスが窓の外を見て、興奮して叫び声をあげた。

その声にすぐさまマイケルとドルーが反応する。


「おにいちゃん、きょうは小人をどっちがさきにみれるかきょうそうだよー!」


「あたちも、いくぅー!」



上の三人が走って部屋を出て行ってしまったので、ダニエルもシェリルを抱っこしてセリカを促した。


「セリカ、どうやら誕生日の食事は、もう少し後になりそうだぞ」


もう、三人とも飛び竜が好きなんだから……


「ピザが冷たくならないうちに、戻ってこなくちゃね」


セリカはダニエルの腕にそっと手をかけて、子ども達の後を追って一緒に食事室を出て行った。


そんな家族の仲睦まじい様子を、従業員たちも微笑みながら見守っていた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もっと続きを読んでいたい!と思う物語でした。 ランディのお店のご飯のこと、刺繍教室のこと、ランディに働きに来た貴族のその後…、気になることがたくさん。 でも、ダラダラ続くより、続きが気になるくらいです…
読んでとても楽しい気持ちになる作品でした。とても面白かったです。 お話が始まる前は自分の魔法がバレないよう、色々と抑えていたものがあっただろうに、そんな中でも友人達や家族に恵まれて良い子供時代を過ごし…
[良い点] 楽しく読ませていただきました。 [気になる点] こんな指輪があれば、結婚に失敗しないかも。 [一言] イチャイチャが好きです。デレる旦那様にほっこりするよ。笑顔になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ