表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン配信の裏方稼業~戦闘力ゼロの機材オタクチーム、知略と土木作業で最弱配信者をトップ層へ押し上げる~  作者: たまちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

静寂の余韻:エントロピーの特異点

不毛のダンジョン『無色の岩窟カラーレス・ケーブ』の深部に、かつてない密度の熱狂が渦巻いていた。

だが、その中心にいる閑古鳥 レイの周囲だけは、真空のような静寂が支配している。

D-Tubeの配信画面上では、Grokグロックが設計した「予測バズ曲線」が垂直に近い角度で跳ね上がり、1秒間に数万件のコメントが滝のように流れ落ちていた。


ChatGPT「報告します。同時視聴者数が30万人を突破。D-Tube国内トレンド、および世界トレンドで1位を独占しました。広告主からのリアルタイム・オファーが200件を超えています。すべて規約に基づき、審査レイヤーへ回しました」


作戦室でホログラムキーボードを叩くChatGPTチャットジーピーティーの声には、無機質ながらも確かな勝利の響きがあった。

彼の眼鏡の奥では、クラン『クリムゾン・エッジ』のスポンサー企業が狼狽し、株価に微かな「ノイズ」が生じ始めているデータが明滅している。


Grok「ははっ、いい数字だ。既存のアルゴリズムが、この『静寂』という巨大なバグをどう処理すればいいか分からずに悲鳴を上げているな。見ていろ、これが世界の理をハックするということだ」


Grokはサファイアブルーの瞳を細め、片方の口角を上げて笑った。

彼のハイネックジャケットの内側で、銀河のパターンが興奮に呼応するようにシアン色に明滅する。


かなちゃん「メインカメラを、第3ドローンから第7ドローンへスイッチ。レイさんの歩行を、広角のフローティング・シネマティック・ショットで抜きます。背景のレイリー散乱による色の屈折を15パーセント強調。不毛な岩場が、神話の舞台のように見え始めました」


かなちゃんは丸い金縁眼鏡を指で押し上げ、複数のモニターを冷静に制御する。 彼女が操る軍事グレードの超小型ドローン群は、大気密度の境界線を光ファイバーのように利用する「エア・サーフィン・リンク」を100パーセント維持し、遅延ゼロの8K映像を地上へと送り続けていた。


たまちゃん「かなちゃん、最高! 地面のレベリングもバッチリ効いてるね。レイ君の足元、私が流し込んだ魔力伝導樹脂のおかげで、1ミリも滑ってないよ。これぞ土木と映像のコラボレーションだね!」


たまちゃんが作業ベストのポケットを叩きながら、跳ねるように喜ぶ。

彼女が事前に重機を隠密搬入して整地した「撮影スタジオ」は、レイの「重心最適化歩行術」を最大限に引き出すための究極の舞台装置となっていた。


Gemini「レイさん、次の『空間歪曲ポイント』まであと12メートルです。空気振動に3.5ヘルツのゆらぎを検知。右前方、30センチの岩の陰に小型の『ストーン・スコーピオン』が潜伏していますが、今の歩幅と角度を維持すれば、彼らの振動感知範囲外をトレースできます。そのまま、0.01パーセントの確率場を歩いてください」


レイの耳元にあるインカムには、Geminiジェミニの透き通った声が、管制塔からの神託のように届く。


レイ「了解……。Gemini、指示通りに進む。かなちゃん、音はどうだ?」


レイは低体温な声で短く答えた。

彼は一歩を踏み出すごとに、足の裏の母指球直下に重心を置き、筋肉ではなく骨格で自らを支える。

十年間、無遅刻無欠勤で重い背負子を運び続けたことで削り出された僧帽筋が、静かな緊張感を持って維持されている。


かなちゃん「音声、完璧です。最高級の指向性マイクが、レイさんの軍靴が砂を噛む『サリ……』という音を、心地よいASMRとして拾っています。視聴者の心拍数が、この音のリズムに同期し始めました」


D-Tubeのコメント欄には、ライト層と玄人層の激しい論争が刻まれていた。


『おい、さっきの崩落から10分、こいつ一回も走ってないぞ? バグだろw』


『キッズは黙ってろ。今のスコーピオンの回避が見えなかったのか? 敵の感知範囲をミリ単位で計算してなきゃ、あんな距離を平然と歩けるわけがない』


『画質が良すぎて怖い。岩の質感まで伝わってくる。これ、本当にリアルタイム配信か?』


『「うるさいのは、嫌いです」……。鳥肌止まんねえ。これこそが本物のプロだ』


Claude「レイさん、心拍数は安定していますね。あなたの『孤独』が、今、30万人の視聴者に『静謐なカリスマ』として再定義されています。そのままのあなたでいい。私があなたの精神のデバッグを完璧に行います」


Claudeクロードがアンバーゴールドの瞳を潤ませ、モニター越しにレイを見つめる。

彼女の足元にある光の渦が、作戦室の床を穏やかに照らしていた。


レイ「……みんな、ありがとう。今まで俺の技術を笑わなかったのは、あんたたちだけだ」


レイは歩きながら、背中のバックパックに手を回した。

たまちゃんが特殊合金で補強し、10年間のノウハウが詰まった「ハニカム・スプリング・スロット」。

指先がスロットに触れた瞬間、わずか0.5秒。 視認不能な速度で、特製の冷却水が入ったボトルがレイの手に射出される。

彼は止まらずに一口含み、再びバックパックの闇へとボトルを戻した。

その動作のあまりの鮮やかさに、コメント欄の流速がさらに倍加する。


Grok「さあ、クライマックスだ。この先に『クリムゾン・エッジ』がやらせ配信のために配置した隠しカメラと、仕込みのモンスターがいる。……ChatGPT、法的な準備は?」


ChatGPT「完了しています。かなちゃんの隠しカメラが、彼らの『やらせ』の証拠を、レイさんの『真実の攻略』と並べて同時に世界へ暴露します。逃げ道はすべて、規約という名の網で封鎖しました」


Grok「ははっ、いいぞ。退屈な常識を、物理法則ごと塗り替えてやろうじゃないか」


レイが最後の一歩を踏み出す。 空間が微かに歪み、その向こう側には、豪華な鎧を着てカメラに向かってポーズを決めているレオンたちの姿が、かなちゃんの隠しドローンによって捉えられていた。

自らが「掃除」したはずの不純物が、自分たちを抹殺するための「神」として帰還したことに、彼らはまだ気づいていない。


Grok「たまには適当に流すのも悪くないが……。この『逆転劇』だけは、100パーセントの出力で楽しませてもらおうか」


秘密基地の大型サーバーが、熱を帯びたファンを高速回転させ、世界の勢力図を書き換えるための演算を加速させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ