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「セイブザクィーン」は駄目なのです!

 卒業式の事は、10年経った今でも思い出せます。

 アレが学生時代で最良の記憶です。


 正直に言いますと、学生生活はずいぶん酷い青春だったと思います。

 もう少し甘酸っぱい恋愛をしたかったのですが、それでも私の大切な青春時代なのです。

 思うようにいかないのが人生で、その中でも最善を尽くし、何か望んだものが手に入った瞬間が喜びなのだと考えると、悪くはない時代でした。


 上を見てはキリがありませんし、今が幸せなのだからよしとしましょう。

 母として、過去を悔やんでぐちぐちという情けない姿など、子供たちに見せられませんからね!




「この者が、今よりこの国の王となる。

 文句のある者は、今この場で申し立てよ」


 本日は王子様が王様になる即位の日です。

 王太子であった王子様は、この10年でずいぶん成長しました。

 まだまだ至らぬところはありますが、それでも多くの人に支えられ、慕われ、良き王になると言われている自慢の旦那様です。


 お義父様、先王陛下は安心して引退できると、後進に道を譲る事を決意されました。

 よって、「ちょっと待ったコール」など、誰も言い出しませんでした。



 私もまた、これで王太子妃から王妃へと……え?


「これから、女王(・・)としてこの国を盛り立てていくがよい」


 はて?

 先王陛下は何故、私の頭に王冠を乗せたのでしょうか?


 私たちが頭を下げている間に、何が起きたのでしょう。

 隣を見れば旦那様は、その光景を当然のように笑顔で見ておられます。

 ほえ?


「さあ、新たな王よ。遍く万民に、その姿を示すのだ!!」


 私は二人に促され、訳も分からず城のバルコニーに連れて行かれます。

 そこには新たな王の姿を見ようと大勢の民衆が集っており、私に向けて「女王陛下万歳」と叫んでいました。


「君はこの国で最も強く、次世代に王の血を繋いだ女性だ。次世代までの繋ぎであれば、王位を授かる事もある。

 まぁ、例外的な措置だけどね」


 何も状況を理解できていませんでしたが、条件反射でみんなに笑顔を振りまきます。


 そうしていると、旦那様が種明かしをしました。

 全く説明された事はありませんでしたが、私にも王位継承権が発生していたのですね。知りませんでした。


 一度も聞いた事の無い話ですけど!

 こんな展開(エンディング)、ゲームにもありませんでしたけど!

 こんな不意打ちで私が粗相をしたらどうするつもりだったのですか!


「こうでもしないと、女王に即位するなど、辞退していただろう?」

「当たり前です!」


 私は裏切り者の夫に小声で怒鳴ると、旦那様は素敵すぎる笑顔を見せました。


「私は君にいつも負けてばかりだからね。たまには勝たせてもらうよ。

 それに、君が即位するというのに、誰も反対しなかった。その事を少しは理解して欲しい。

 みなが、私よりも君を王にと望んでいるのさ」


 ぐぬぬ、と歯ぎしりしたくなりますが、民衆の前です。タングステンの理性でそれを耐えます。


「女王陛下万歳(セイブザクィーン)!」

「女王陛下を守り給え(セイブザクィーン)!」


 民衆から、私の即位を祝う賛歌が聞こえるのですが。

 それは「ナイスセーブ」じゃないのですよ!? セーブ違いで……スペル、同じでしたね。

 ですがここはイギリスではないのです!!


 ちくせう(ちくしょう)。

 なんでこうなったのですかーー!!??

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