エイプリルフール
「皆さま、お聞きくださいまし!このわたくしのアニメ化がけっ」
「嘘や!!」
「ハイッ嘘でした!!!希望的観測とか夢とかあったらいいなを声に出してみましたわ!!するなら当然正ヒロインのヒナタでしたわ!わたくし端役なの忘れてました!!うっかりうっかり、うっかりユリエル★」
嘘を言い終わる前のロットさんの最速ツッコミにドヤ顔で嘘を伝えれば、なんだか疲れた顔でヘナヘナと座り込み、「その前にアニメってなんや」と、初歩的なコメントをくれた。
せやったですわ。この世界にアニメはまだ出来てませんでした。なのにツッコミくれたロットさん。流石としか言えません!!
「ほら、でも大丈夫ですわ。どこかの世界の乙女ゲーからシブリとかディスンニーとか?なんかそんな感じのが拾ってくれてて世界的なホラ、なんか凄いアレになってるかもしれませんわ!知らんけど!ですわ」
「いや、姉さん……、全然わかんないけど有り得なさすぎる気だけ感じる」
「シルクも流石ね!!つまりはシルサス!!」
「なんなのそれ……?」
ツッコミの2人に感謝を胸の中で唱えて、ふと今年もエイプリルフールが失敗したことに気がつく。
「う〜ん。嘘は難しいですわね」
「ユーリはそんな嘘をつかなくてもいいだろう。無理をするな」
「ロイさん、これは無理につく嘘ではなく、今日というこの日を楽しみたいんですの」
「そうか……?」
よくわからんとばかりに首を傾げたロイさんに、国同士で化かし合いのような貴族の会話で疲れているロイさんに、嘘が面白いなんて失礼だったかと言おうかと思えば、シルクが声を掛けてくれた。
「姉さんはそうだね。それに嘘って本当のこと混ぜるとわかりにくくなるよね」
「エイプリルフールにそこまでガチの嘘だと笑えなくなるじゃない。楽しい嘘がいいのよ」
「その辺のこだわりはあるんだね……」
なんか呆れたようなシルクは「まず嘘なんてつかなきゃいいのに」と、根本的なことを呟いた。だから違うそうじゃない。
「楽しむ嘘がいいじゃないの。ふふって笑える程度の」
「私は今、下着履き忘れてるよ」
「レイさん!ふふっ、そんなわけないですわよね」
「そうだね。履いてるよ」
「安心しましたわ。履いておりますのね」
小さな嘘がお上手なレイさんに「ホホホ」と笑えば麗しい笑みを返され、ユーモラスのあるビューティーメーンのギャグセンスは微妙なボケでも素敵さが相乗効果でなんかイケてると思うが、なぜかシルクとロットさんは微妙な顔でレイさんを見つめていた。
「ロットの下着は黒だよ」
ロットさんは一度驚いて一瞬確認すると「ちゃうわ!」と返す。
「シルクくんはグレーかな」
「…………」
一瞬空を仰いで何もコメントせずに視線を逸らしたのは肯定かしらツッコミ諦めかしらと、男の子同士のチャメッケに微笑んでいれば、レイさんがこちらを見ていることに気がついて目が合えば、
「ユリエルくんは黒と一部赤の入ったレースで上下お揃いかな」
「ホホホ、レイさんた……ら?」
手を前に出して手先を上下に動かして「冗談が過ぎますわ」と笑おうとして脳内に過ぎるのは自分の下着。
思わず服の上から胸を触り、お尻を触り、そのレースの感じは……、
「当たりですわ!!」
「おやおや」
「なっ……! ユーリ!!?」
「姉さん!!?」
「答えんなや!!」
みんなの声が同時に聞こえたが、それよりなぜわかったのかと驚いた顔のままにその目を見れば、
「エイプリルフールの冗談だったんだけどねぇ」と麗しく笑われてしまった。
「あらやだ、わたくしったら。でも何故そうお思いに?」
「ユリエルくんの服は今日は制服ではなく、濃い赤色ドレスだしね。それなら中身も同じように合わせるかなと。それなら赤か、黒。でもユリエルくんは意外と色合わせるの好きだからと思ってね
「ほぼ正解ですわ。まぁ選んでくれたのはアナですがわたくしのお気に入……むぐ」
シルクに口元を抑えられてレイさんから離されると、ロットさんは「思った以上に明確な理由やったわ」と頭を抱えているが、わたしはそのままシルクに外まで連れ出され、いつの間にかロイさん肩を抱かれて、馬車に乗せられていた。
「ちなみに嘘を紛れさせると分かりにくくなる例だよ。私は男の下着になんてこれっぽっちも興味ないからねぇ」
「紛れとらんしそれは嘘でもない!!」
そんなロットさんとレイさんの会話は、走り出した馬車の中の私たちの耳には届かなかった。