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愛のカタチ  作者: 夕崎まほろ
<本編>
10/56

エヴァンの回想-歪みの始まり-

 十三歳になった三人は、貴族の少年たちが集う全寮制の名門男子校に入学した。彼らの父も通ったというこの学園は、長い歴史に見合うだけの慣習の多さと理不尽さで有名だが、それを乗り越えた青年達は一生ものの思い出と強固な同輩達との絆を得られ、さらに社交界でも一目置かれることから、貴族たちはこぞって息子を入学させたがったのだ。

 ジェイソンは入学当初から持ち前の明るさと行動力でたくさんの友人をつくっていた。運動神経が良く、スポ-ツ大会などで華々しい活躍を見せていたが、その一方で今でも語り継がれるほどのとんでもない騒動を引き起こしたことも一度や二度ではない。良くも悪くも注目を集める生徒だったが、学業でも優秀な成績を修め、監督生候補としても名前が挙がっていたことから、そこそこ順調な学生生活を送っていたように思う。

 クリストハルトはその優秀さから特待生として扱われ、教授から気にいられていたし、生真面目な性格と、アイリスとの交流の中で培われた面倒見の良さで周囲からも慕われていた。しょっちゅう問題を起こすジェイソンの尻拭い役だったことも、風当たりが少なかった理由の一つだろう。

 そんな二人に比べて、エヴァンはあまりにも平凡だった。突出した才能も、人を惹きつけるような魅力も持っていない。そんなエヴァンが彼らの傍にいることを快く思わない者も多く、執拗な嫌がらせをされた。それに気付いたジェイソンが怒り狂って報復に行き、不品行で退学処分になりかけたこともある。クリストハルトとエヴァンが頭を下げることでなんとか許してもらえたが、この一件で彼が監督生になる未来は完全に潰えた。

 エヴァンへの嫌がらせも止んだわけではなく、むしろ一層陰湿になった。冷ややかな視線と悪意ある囁きが常にまとわりついてきて、安らげる場所はどこにもなかった。クリストハルトとジェイソンの隣でさえ。

 彼らが大切な友人であることに変わりはなかったけれど、常に格の違いを見せつけられているようで、息が詰まった。自分とは違う存在なのだと割り切れればいっそ楽だったのだろうが、それをしてしまえば本当に孤独になってしまう気がして、それもできなかった。ときどき送られてくるアイリスからの手紙と、それを囲んで三人で話す時間だけが、エヴァンの唯一の癒しだった。

 ジェイソンの報復事件以来、クリストハルトがかなりエヴァンに過保護になったことで、さらに周囲の目は厳しくなったように感じられた。クリストハルトの心遣いすら煩わしいものに思えて、一時期は彼から逃げ回っていたこともある。

(あのとき、クリストハルトが僕を見つけなかったら……)

 ふっと、そんな思いが頭をよぎる。誰もいない教室で、窓の外を見ていたエヴァンに、特に何を言うでもなく近づいて来て、並んで外を見ていたあの日がなかったら。

 —自分達は今も、ただの友達でいたのだろうか。


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