依頼人はまさかの… 〜春花〜
〜前回のあらすじ〜
風紀委員になって初めての依頼が来た!
依頼人の名前に心当たりがある気がしてたけど…?
「「「もしかして、せーちゃん(ですか)!?」」」
びっくりして立ち上がってまで言ってしまいました。…なるほど、せーちゃんの幼馴染だから有矢さんのことを知っている気がしたということですね。納得です。
「だからか…同じクラスになってから、ずっと引っかかっていたのは…。」
せーちゃんと有矢さんにお茶を出してわたしの左隣に座っていた冬科ちゃんがつぶやきました。
「え?あの、今なにか言いました?」
有矢さんに聞かれそうになってますよって目で冬科ちゃんを見ると
「いやぁ、せーちゃんと同じクラスになれなかったなぁって思っただけ。」
わたしも萌夏ちゃんも
「もう七年?かな、同じクラスになれてないし」
「家も反対方向ですから会うこともないですし。本当に久しぶりですね、せーちゃん」
思っていたことを口々に言うと、せーちゃんが
「春花ちゃん、冬科ちゃん、萌夏ちゃん、久しぶりぃ〜!会いたかったぁ〜〜!」
と言いながら思いっきり抱きついてきました。こういうところは小さい頃と変わっていないですね。
「せ、聖ちゃん。久しぶりに会えて嬉しいのは分かるけど、依頼して来たこと、忘れてるでしょ?」
と有矢さんが言ったとたん、ギクッと聖ちゃんの肩が動き
「そ、そんなことないもんっ。……そりゃあ会えて嬉しかったけど…」
せーちゃんの目があっちいきこっちいきしてます。
「とりあえず、依頼内容を聞いてないから。聖ちゃんすわって。」
あ、すっかり忘れてました。萌夏ちゃんが持ってきてくれたノートに書かないと!
「…そ、それじゃあ、話す、ね…お、おどろかない、でね…」
――❀・❀・❀――
「………」
有矢さんやせーちゃんの話を聞いて驚きもありますが、それよりも二人が無事で良かった、という気持ちのほうが大きいですね。
――キーンコーンカーンコーン。まもなく…
下校終了時刻の五分前のチャイムですね。
「…あ、もうそんな時間か…有矢もせーちゃんも帰らないとだね、また明日!」
「相談、してくれてありがと。」
「今日は不安かもしれないですけど、二人で帰ってもらえると…」
二人は顔を見合わせたあと、頷いて
「「ありがとうございました」」
と言い、帰っていきました。二人の足音が消えたぐらいで
「……そろそろいいかな。兄さん達に連絡してくるね。」
と冬科ちゃんは奥の部屋に入っていきました。
「はぁー…普通の人からしたら、あれはキツイですよね」
「うん…、そうだよね…そうだよな…はぁー」
なんか萌夏ちゃんの様子がおかしいですけど、とりあえず秘密事項の書かれたファイルを棚の引き出しから取り出しまして…。
「とりあえず、情報収集からかな」
「そうですね」
なんて話していると、冬科ちゃんが帰ってきました。
「おまたせ。兄さん達、いいよってさ。」
「良かったです。まずは情報収集をしようって話になりまして…」
「最初、あたしが言ってもいい?」
こくん、と無言で頷いたわたし達を見て、萌夏ちゃんが言いました。
「一つ目、有矢とせーちゃんは本当の依頼人」
脅されたりして言わされたと言う線はない、ということですね。
「二つ目、内容も本当。でも、隠してることがあるね」
内容も本当なら対処しやすそうですけど…
「隠したことが何か分かりますか?」
念のため聞いてみると、
「多分、有矢が怪我してるね。冬科ちゃんの質問でせーちゃんの顔色が悪くなった」
いつも鈍感だけど、こういう時の萌夏ちゃんの観察力はすごいんですよね。わたしは気づきませんでした。
「三つ目、他校の人は相当頭の切れるヤツだよ」
はぁー…面倒な奴ですね。
「三つ目、証拠は?」
ずっと静かだった冬科ちゃんが聞きました。
「ううん、あたしのカンだよ」
……萌夏ちゃんのカンは百発百中ですからね。嫌な予感がします…。
「あたしからの情報は以上!」
忘れないうちに情報をまとめてくれている冬科ちゃんの合図で私の番になります。
「………まとめた。春花ちゃん、お願い。」
ということなので、手元にある「中等部生徒帳」という中等部にいる生徒の出席日数や内申、成績の書かれた風紀委員オリジナルファイルを見せながら言います。
「一つ目、せーちゃんの言っていた不良グループの主な三人は三年A組の問題児でして…そいつらが起こした問題は三十件。その中で二十件は学園、残りは学園外で起こしてます」
「…この生徒帳には件数しか書かれてないけど、どういう問題だったか分かる?」
萌夏ちゃんからの質問です。それはもう一つのファイル「生徒事件帳」と書かれたファイルを見せます。
「学校内ではカツアゲや授業妨害などのまだマシな方ですが、学園外では飲酒をしたり事故を起こしたりなどかなりヤバいことしてますね」
言いながら、かなりの問題児だと思います。なぜ、退学にならないんでしょうか?
「二つ目、他校の奴の服装の質問をして、せーちゃんが答えてくれたじゃないですか。それで多分ですけど、この「国立留戸学園」と姉妹校の「国立明夢学園」の制服と似てますね」
二人とも質問はないみたいなので…
「三つ目、多分ですけどナンパだけでなくて、ストーカーとかいたずらしてますね。せーちゃんの教科書がなくなったり、登校中に視線を感じたと言っていたのはそいつらです」
萌夏ちゃんは深刻そうな顔をしていて、冬科ちゃんは情報をまとめてます。
「わたしからは以上です」
わたしと萌夏ちゃんの情報だけでかなり大変な依頼になってきました。
「春花ちゃんの情報もまとめられたし、僕が言うね。」
わたしと萌夏ちゃんは目を合わせて頷きます。
「最近、ぼく達ぐらいの年齢の男子二人、スパイとして、ぼく達と同じ部署に来たらしい。…他校のやつの特徴とスパイ二人の特徴が一致したんだ。」
じゃあ、わたし達の大切な友達が裏社会の事情に巻き込まれそうになっているんですね。
…萌夏ちゃんの顔も引きつってます。
「コードネームは悠真、本名は三井悠希。もう一人、コードネームは銀河、本名は市井大河。通称、悪魔の双子。」
わたし達に似てますね。
「その二人の経歴から明夢学園の生徒で間違いなし。問題児かどうかは分からないけど、今日の仕事、その二人もいるみたいだよ。」
……え?
「ちょ、ちょっとまって…え、今、冬科ちゃんなんて?」
萌夏ちゃんもわたしも驚きで固まってしまいました。
「ん?だから、今日の仕事、悪魔の双子の二人いるよって言った。」
聞き間違えで済む話ではないですよね?…ほっぺつねって痛いので現実ではあるから…なんて考え事をしていると
「嘘じゃないよね?…だったら、ポジティブに考えて、今日の夜、その二人と話せばいいんじゃない!?そうすれば、有矢もせーちゃんも無事なんじゃない?」
…!たしかに、萌夏ちゃんの言うとおりです。
「そうだね。…そう、双子の二人が応じてくれればね。話の分かる人だったらいいんだけど。」
あー、そこまで考えてませんでした。さすが冬科ちゃんですね。…萌夏ちゃんが「詰んだ…」という顔をしていますね。
「ごめん…。ぼくからの情報、これだけなんだ…。」
「「充分すぎるくらい重要な情報ですよ(だよ)!この短時間でよく調べられましたね(たね)!?」」
萌夏ちゃんもわたしも思わず大きな声で言ってしまいました。冬科ちゃんの目が見開いて止まっています。
「…そう?なら、良かった。二人ともありがとう。」
ふにゃぁって冬科ちゃんが笑うなんて珍しいです。
「夜は仕事だし、宿題もあるし、お腹すいたし、家、帰る?」
「ぐぅーーーっ」
冬科ちゃんの提案に答えるかのように萌夏ちゃんのお腹が鳴りました。
「あわわ〜っ。ごめーん!」
「ふふっ。そうですね。家、帰りましょう」
こうして、わたしたちは風紀室をあとにしました。
〜次回予告〜
風紀委員の依頼もやらないといけないけど、夜には闇の三つ子としての仕事もある。
果たして、悪魔の双子に話をつけることはできるのか…
「あたし達にまっかせて!…ね!春花ちゃん!」
「そうですね!任せてください!」




