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【完結】後輩がまた違うバイトしてる〜なんで俺の行先知ってんの?〜  作者: 仮面大将G


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第39話 遊園地

「やっぱカップルばっかりだよな……」


 入園ゲートが見えて来る頃には、もう周りは楽しそうな若い男女や、子どもを連れた家族などで埋め尽くされていた。まあそりゃそうだよな。1人で遊園地なんて来るやつ普通いねえもんな。

 でも俺には成し遂げなければならないことがある。それは、ジェットコースターの克服だ。


 そんな見た目でなんでと思われるかもしれないけど、俺はジェットコースターが苦手だ。小さい頃に1回乗って大泣きして以来トラウマになってるジェットコースター。でも社会人になる前に克服しておきたい。そう思って今日は遊園地に来たんだ。


 従って、ジェットコースターで泣き叫んでいる情けない姿を友達に見せるわけにはいかず、1人で来ることになったということだ。

 なんとか今日でジェットコースターを好きに……いや、とりあえず乗れるようになればそれでいい。それだけでいいから、克服に近づきたいな。


 入園ゲートまで来ると、予め買っておいた電子チケットのコードをかざし、園内に入る。入るやいなや、元気な女の声が俺を出迎えた。


「豚汁なー! あ間違えたこんにちはー!」


「どんな間違いだよ! 腹減ってんのか!」


「ジェットコースターが名物の遊園地、『こをすたあ』にようこそ!」


「どんなネーミングだよ! 創作居酒屋か! ……って心音!?」


 誰がデカい声でアホなこと言ってるのかと思ったら、そこには見慣れた茶髪ボブ。探検家みたいな格好で、入ってくるゲストに挨拶している。


「やっほやっほ健人先輩! 1人で遊園地なんてどうしたの? 自殺?」


「違うわバカ! どうやって遊園地で自殺すんだよ!」


「そりゃあれだよ、サウナスーツ着て着ぐるみに入るとか」


「なんで俺着ぐるみ着て働いてる側なんだよ! ゲストで来たんだよゲストで!」


「ペスト?」


「ゲストだわ! お前今日ボケが不謹慎だな!?」


 いつになくブラックな心音に呆れながらも、俺はとりあえずジェットコースターへ向かう。心音も言っていたが、この遊園地はジェットコースターが名物だ。園内を1周するほどの巨大なコースを、物凄いスピードでコースターが駆け抜ける。途中で1回転まで入る豪華仕様だ。


 いざ乗り場の前まで来ると、足が竦んでしまう。やっぱ怖いなあ。なんか他の乗ってこの怖さを和らげてからにしようかな。

 この近くの乗りものは……お、メリーゴーランドがあるな。とりあえずあれに乗ろう。


 メリーゴーランドはかなり空いていて、並ばずに乗り場まで来られた。よし、じゃあ適当な馬に乗って……。


「あ、お兄さんはこっちでお願いしまーす!」


「え? あ、ああ、はい……」


「はい、じゃあこのクマに乗ってマサカリを担いでもらって!」


「いや金太郎じゃねえか! 何やらせてんだ! ……って心音!?」


「やっほやっほ健人先輩! 1人でメリーゴーランドなんて寂しいね!」


「やかましいわ! ほっとけ!」


「それじゃ、頑張ってクマと相撲取ってね〜」


「だから俺金太郎じゃねえって! クマと戦って勝てねえよ!」


「それでは乗りもの動きまーす!」


「聞けよ!」


 何故かクマに跨り、マサカリを担がされてぐるぐると回った。うんなんだこれ。金太郎体験コーナーじゃねえか。ウマに乗りたかったんだけど。


 メリーゴーランドから降りると、心音が俺の方に寄って来る。


「健人先輩! 次はあっちのアトラクションがオススメだよ!」


「あっち……? 何があんだよ」


「観覧車! 高いところから人を見下ろせるから楽しいよ!」


「言い方! そんな悪役みたいに楽しむもんなの!?」


「あ、でも健人先輩は普段から人を見下ろしてるから楽しくないか! スカイツリーと身長一緒だもんね!」


「そんなデカくねえわ! バケモノじゃねえか!」


「え? バケモノだよね?」


「うるせえよ! 誰がバケモノなんだよ!」


 とりあえず騒いでいる心音を置いて、俺はもう1度ジェットコースターの乗り場まで来た。今度こそ乗ってやる。見てろよジェットコースター。俺は子どもの頃とは違う。強くなったところを見せてやるよ。


 そして数分後、げっそりとやつれた俺は、フラフラとベンチに座り込んだ。


「やっぱ無理だジェットコースター……。まあでも、とりあえず乗れただけ良しとするか……」


 目的は果たしたから、もう帰ろうかな。これ以上何かに乗ったりする元気は無い。

 ゲートに戻って退園しようとすると、またしても心音が現れた。ん、なんか箱みたいなの持ってんな。


「健人先輩、もう帰っちゃうの? 最後にクジ引いていきなよ!」


「クジ……? なんか当たんのか?」


「この遊園地にちなんだ色んな景品が当たるよ! ほらほら引いてみて!」


 心音に急かされてクジを引くと、紙に1等と書いてある。え、1等? なんかもらえんのかな。


「わ! おめでとう健人先輩! 1等じゃん!」


「おう、なんか出たわ。何がもらえんだ?」


「1等はこちらのマサカリでーす!」


「マサカリ要らねえよ! こんなもん人にあげんな!」


 心音が俺にマサカリを押し付けようとしていると、30代くらいの男が慌てた様子で走って来た。


「ちょっと心音ちゃん! それ何!?」


「何って、マサカリですけど」


「なんでそんなもの持ち込んでるの!? ゲストでさえ危険物の持ち込みは禁止されてるのに、キャストが持ち込んでどうするの!」


「でも金太郎ゴーランドを演出するには必要で……」


「金太郎ゴーランドって何!? いやもう危ないからそれやめて! もうクビ!」


「ええ〜!?」


 ガックリとうなだれながら、心音は俺にマサカリを渡そうとしてくる。いやだから要らねえって。なんでそこまでして俺を金太郎にしたいんだよ。

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