夜ふかし
人間の三大欲求「性欲」「食欲」「睡眠欲」
私は欲の大半を睡眠欲に振っている人間だ。学校に通っていた時は毎日眠気で授業に集中できず、居眠りをしたことはないものの、先生や同級生からの質問に的外れな解答をして恥をかいたことは何度もある。
睡眠時間を多く取ろうと意気込んでも日中完全に拘束されている私にとって心休まる時間は夜しかない。そのため、ついついスマホいじりに時間を取られ睡眠不足を余儀なくされていた。
引きこもりを始めてから私の睡眠習慣は一変した。
好きな時に眠り好きな時に起きることができる生活。前述した通り睡眠に強いこだわりがある私にとって、多くの引きこもりと同じように昼間眠り夜に活動する昼夜逆転生活は耐えられなかった。
朝太陽の光を浴びることによって自律神経が整えられ、日が落ちた後健やかに眠ることができる。就寝時刻が多少前後しても確実に8時間程度の睡眠時間を確保することによって頭が冴え、引きこもり以前よりも健康的な生活を送ることができるようになった。
そんな私にも夜更かししてしまう時がある。それは、寝る前にスマホを見た時だ。
寝る前にブルーライトを浴びることは身体に悪影響。これはストレス社会に生きる現代の日本人に広く知れ渡っている事実だろう。悲しいかな、それでもやめれないのがニートの性。
今晩の私もつい配信の続きが気になり、寝る前に暗い部屋で20分ほどスマホを凝視してしまった。ブルーライトを浴びたことにより休まらない脳は身体に「寝てはいけない」という指令を伝える。眠りたくても眠れないというアイロニーを孕んだストレスが私を襲う。
「寝れない。何で私はスマホを見てしまったんだ」
考えれば考えるほど熟睡から遠ざかってしまうことは理解しているが、身体を横にして何もやることがない状態で思考を無にすることは困難だ。
寝れなければ寝れないほど思考は深くなり、思考が深くなればなるほど眠れない。深夜の悪循環。「ブラック・vicious cycle」だ。
寝ていないのに悪夢にうなされる私。睡眠を試みて1時間が経った頃、徐に起き上がった私は用を足すことに決めた。
小便を出す。この策は意外と効果的だ。脳を一度リセットし、体内に残る老廃物を放出することによって睡眠を促進することに繋がるのだ。
「寝れない」
どうしてだ。いつもは夜小便を出せば特に苦労することなく眠ることができる。だが、今晩は出したにも関わらず眠りにつくことができない。
何もすることがないと、本来考えなくてもいいことを考えてしまう。もし親が働けなくなったらどうしよう。会社を辞めなかったら今頃何をしているのだろう。どうして自分は生まれてきたんだろう。
カーテンを閉め、閉鎖的な空間でひたすら自問自答をし、精神は擦り減る一方だ。早く眠らせてくれ。乾いた目を無理矢理閉め続け、活発に動く脳が見せる悪夢に耐え、絶望の一夜を明かした。
気づけば朝8時。もう起きても差し支えない時刻だった。あれだけ辛かった夜が遠い昔のように感じる。いつ眠りに落ちたのだろう。もう何の夢を見たかも覚えていない。睡眠は生物の不思議なメカニズムだ。生物は睡眠に寿命の多くを費やす。睡眠がなければ世界の経済は倍以上発展したのかもしれない。でも、睡眠がない世界には今以上のストレスが溢れているのかもしれない。
人体って、不思議だ。




