表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放アイドルは最強闘士をおとしたい  作者: 須藤 晴人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/37

幼馴染の試合 #1

「強さだけを追い求め、人に仇なす忌まわしき殺戮機械M45! このわたくし、ドリーミィメロディアが真の強さとは何か、あなたに教えて差し上げます!」


 腰に下げた細身の剣をサイボーグの頭部すれすれにピタリと付きつけ、ドリーミィメロディアが高らかに宣言する。


「小娘、お前が真の強さを持つというのなら、私はお前を倒し私が最強であることを示そう。全てはプロフェッサー・タキトゥスの理論の証明のために」


 殺戮機械が冷ややかに、どこか合成音らしい不自然さの残る声で答えた。


「えっ、ちょっと待ってなにこれ? 唐突に茶番始まったんだけど……。てか誰プロフェッサーなんとかって。あいつ何言ってるの?」


 突然始まったマイクパフォーマンスについていけない莉愛は目をぱちくりさせていた。中身は幼馴染であろうサイボーグは、普段の彼からは全く想像もつかない謎の口上を述べている。それも結構堂に入ったものである。自分の持つ幼馴染のイメージとのギャップに別人だったのかと莉愛は訝しむ。だが、今までの状況から考えれば彼なのだ。


「茶番って……。上位の闘士は皆何かしらのキャラ設定があるんだよ! 殺戮機械M45は悪の科学者プロフェッサー・タキトゥスが作ったサイボーグなの。プロフェッサーの築いた最強理論が正しいと証明するために、強者を屠り続けるの」


「ええ……。何その変な設定……」


「ちなみにM45はスーツの供給元の丸楠電機と一緒に研究開発してるどっかの大学の研究室がやってるんだよね。スーツもそこで研究中の特別製みたいだよ! だから設定もセリフもあながち嘘じゃないんだよ!」


「そ……そうなんだ。でも特別製のスーツって、良いのそんなの? ズルくない?」


「レギュレーションを守っていれば問題ないし、上位の闘士はみんな何かしら調整しているものだよ。メロディアだって、専属スタッフが調整しているみたいだよ。ついでに専属トレーナーとかもいるらしいよ」


「へえ……色々奥が深いんだね」


 莉愛と飛鳥がそんな話をしている間に、歓声がパタリと止んだ。


「ドリーミィメロディア対殺戮機械M45、試合開始!」


 開始が告げられるや否や、殺戮機械が地面を蹴り、メロディアに飛び掛かる。 またわっと歓声が上がった。


「うわ、速っ!」


 殺戮機械は莉愛が想像していた以上のスピードでメロディアに迫る。その拳でメロディアを突こうとする殺戮機械に対し、


「そう簡単に、捕まえられると思わないで下さる?」


 メロディアは余裕の笑みを浮かべて後ろに飛びつつ、すっと剣を横に振る。


「え、あれじゃ当たらな……あれ?」


 莉愛からすればどう見ても空振りな一撃だったが、しかしサイボーグの胸の辺りに細い傷が走っていた。


「ファーストアタックはメロディアだっ!」


 実況の声が上がり、客席がどよめいた。


「あれ、剣と見せかけて魔法系⁉」


「そうそう。魔法っていうか遠隔攻撃もできるんだよ。でも……M45なら即近づいて攻撃できるかと思ってたけど、躱されて反撃までされるなんて……。しかも反撃されて、し返せないなんて!」


 驚く莉愛に飛鳥が解説する。そして彼女はお気に入り闘士の思いのほかの苦戦に顔をしかめた。


「動きは確かに良いが、それでもメロディアは完全に見切っているようだね。メロディアの方が攻撃範囲が広い分もあるからね、彼が多少速かろうと、分かっていれば対応できてしまう、というわけだ。そして彼女の反撃のタイミングも絶妙だから、それを避けることも難しいだろうね」


 対する哲は贔屓のメロディア優勢ということで満面の笑みを浮かべている。解説も随分と饒舌だった。

 その間にも、ダメージを顧みず距離を詰めようとする殺戮機械に対して、メロディアはギリギリで躱し、様々な太刀筋で剣を振る。振るった剣の先から細い衝撃波のエフェクトが発生し、殺戮機械を襲った。


「おおっと、メロディアの攻撃がまたもヒット! 衝撃波を躱すこともできないM45! 無敗の殺戮機械も成す術なしか⁉ 正義の美少女の前に悪はついに潰えるのか⁉」


 実況の声はどこか嬉しそうだった。会場の多くを占める彼女のファンたちも大盛り上がりだ。彼女の攻撃が当たる度に歓声が上がる。


「ってかさ、殺戮機械も遠くから攻撃したらいいんじゃないの? あのキャラなら、指先に機関銃とか目にビームとか仕込んでないの⁉」


 あまりにも一方的な試合に、どちらかといえばメロディアを応援していたはずの莉愛もついそんな文句を言ってしまう。


「えー、そういうキャラじゃないんだって! M45は接近戦専門。武器ではなく、己の運動性能だけで敵を倒す事、なんだよ! そのストイックさがいいの!」


「何その変なこだわり! 強くなるなら手段を選ばなきゃいいのに! 普通そういうものじゃないの?」


「メタな発言になってしまうが、先程羽鳥君が言っていたように彼らはスーツの研究をしているんだ。だからスーツの性能を使い切ることが第一なんだよ。遠距離攻撃を組み込むと、レギュレーション上スーツのアシスト性能が落ちるからね」


「なるほど……」


 哲の解説に莉愛は大きく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ