2.エネルギーの中枢
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〜前回のあらすじ〜
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神様の手により半強制的に転生させられた僕。
異世界へ足を踏み入れたところ。
歩いて数分で街に到着。なんとなく活気づいていることがわかる。賑やかで元気、それぞれが商売を楽しんでいたり、子ども達も笑顔で走り回っていて、気持ち穏やかになる。
これなら悪くないと思える。異世界物だから、殺伐とした戦いの世界だったらどうなっていたことか、今になっては冷や汗ものだ。無事な世界で何よりだ。
そうこう考えていると役所的なところを見つける。この世界ではギルドとでもいうのだろうか。まずは身分証明書みたいなものがないと、転生物では苦労しがちだ。
ギルドって怖いガチムチな男ばかりいそうなイメージで、あまり近づきたくない。そんな予想をしつつギルドっぽい建物に入る。
カランカラン、と音がする。その音に釣られ、建物内にいる人たちがこちらを見てくる。
想定では屈強な男戦士見たいな人たちで溢れていて、睨んできたり蔑んで半笑いされることを踏まえていたが、そんなことはなかった。
「おぉきたきた! ようやくいらっしゃったぞー!」
なんか歓迎ムードだ。
「実はですね、数日前に神様からお告げがあったんです。新入りが入るよって」
神様は事前に僕の存在を告知していたようだ。
この村は、頻繁に人が出入りすることはないらしい。村内で自給自足すべてが循環するようになっていて、住む人々も欲深くなく、今の暮らしに満足している。
あまりにも欲深い人が多い環境は、エネルギーが澱み重くなり、この異世界を保つバランスを取ることが難しいらしい。しかしこの村はバランスが極めて良く、神様も積極的に介入している、ということだ。
つまり、この異世界は極めて高度なエネルギーバランスの上で存在しており、この村はしっかりと共存できている、という解釈で間違いないだろう。
安易に新入りを入れないのは、神様がこの村のバランスを乱さないように吟味しているからかもしれない。
そのため、新入りが入るということはとても珍しく、村では神からの采配と喜ぶそうだ。揉めることがなく、穏便に進みそうで何よりだ。
「君はどこか別の街からきたのかい?」
人集中央の人が話しかけてくる。
「地球、日本というところから来ました。ご存じでしょうか?」
ここの人たちは信用できそうだし、とても穏やかだ。神からのお告げなんてそうあることではない、オープンに話したほうが良いだろう。
「おぉ! 君もかね! 私たちお年寄りは全員、日本から来たんだよ」
驚いた、おじいちゃんおばあちゃんの世代の人は、全員日本からの転生者だったとは。
話によると、時代がそれぞれ違うとはいえ、ご高齢の方は皆日本からの転生者ということ。そして例外なく、神様からの依頼により転生しており、前世での生活に割と満足していた。
その子どもや孫たちはこの村で生まれ育てている。若い状態で転生した僕は珍しいみたいだが、この村の人々は神様への信仰が深く、僕の素性を疑わず、受け入れてくれている。
「この村はね、この世界のチャクラの中枢なんだってさ」
チャクラの中枢ということは、すなわちエネルギーの中枢ともいえる。この村を起点にして、この世界は成り立っていることになる。
そして意図的に人を転生させている、共通項まであるならば、神の狙いがあると考えることが妥当だろう。
そして、どうやら地球ではないらしい。正確には地球を模した別の文明のようだ。ここの住人も深くは知らされていない。
外に出るとポカポカ気持ちいいが、にしても日差しがすごい。日射病になるんじゃないかと思うほど日が強いが、なぜか汗が出てこないし直視しても目に違和感すらない。前世なら気温30度越えは間違いないくらいなのに。
「ここの太陽、不思議ですね。あんなに強い光なのに、汗も出なければ目もなんともないんですよ」
「この太陽はね、余分な紫外線がカットされているんだ。だからシミとかシワはできないし、浴びれば浴びるほど健康に良いだけなんだよ。当然、目にも優しいんだ」
素晴らしいではないか。
「では、セロトニンは作れるのでしょうか?」
「もちろんだよ」
セロトニンとは、人の精神を安定させつつ気分を良くしてくれる物質のこと。いろんな方法で出すことはできるが、太陽光を浴びるという方法が手っ取り早い。
先程から、第七チャクラ目掛けて太陽の光エネルギーが入ってくる。どこにいようと頭頂に飛んできて、全身を駆け巡り、足裏から出ていくらしい。その間に全身の浄化や活性化も同時に行われる。便利すぎる。
とすると、この異世界の太陽は神様が用意したものと考えて良いのだろう。セロトニンだけで人の性格を決めることはできないが、大きな影響を与えることは確かだ。エネルギー調整という観点からも理に叶った仕掛けといえる。
ここの太陽は毎日規則的に動くとのことだ。早朝4:30頃に出始める頃に鐘を鳴らし朝を知らせ、18:00頃に降りていく。
天候の変化がないから毎日安定して日が出て、日をたっぷり浴びれる、しかも副作用がない。
まるで人々の精神を安定させ穏やかなエネルギーを発生させたいがため、と自然に思ってしまうくらい状況が出来すぎている。
こんな世界があってもいいよね、というイメージを書いてみました。