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18 論点のズレまくった話し合い

 俺たちは話し合いのため、ひとまず馬車を大通りから外れた邪魔にならない位置に停止させた。

 そして現在、俺、女神、ユユの三人全員が後ろの客車へと集まっている。


「で、魔物の襲来、か。それほどヤバい状況ってことだよな?」


 俺たちは冒険者カードにより、近くの街への強制召集を受けていた。

 どういう仕組みかは知らないが、冒険者カードが発光したかと思うとその裏面に召集の旨の文章が表示されたのだ。


「そ、そうですね。コッコ山脈と言えば多種多様の魔物が生息している地帯です。もしかしたら……スタンピードが起きたのかもしれません」


「スタンピード?」


「あ、は、はい。魔物の暴走のことです。魔物の生息域の環境が変化してしまった場合に起こりえる事態です」


 なるほどな。その魔物の集団に対応できないから援軍が必要になったということか。


「……うん? どうしたユユ」


 なんか知らないが、ユユがぼうっと何かを考えこんでいるような気がした。


「……へ? あ、い、いえ、ここまで急な強制招集というのも珍しいなと思いまして……」


「そうなのか?」


「あっ、と、と言っても別に何か分かったとかそんなんじゃないんですけど、ご、ごめんなさい!」


 何故か全力で誤ってくるユユ。

 うーん、冒険者としての活動歴が長いユユだからこそ気づく違和感というやつだろうか。

 もしかしたらとんでもない事態が起こってたりするのかもな。いや、実際起こっているからこうなってるのか?


「因みに……西って言ったか? 実際ここからどのくらい離れてるんだ?」


「そ、そうですね……」


 するとユユの手から、一瞬の間にパラリと音を立て地図が出現した。今のも収納魔法か……。手品みたいでカッコ良かったな。


「現在位置はここです。で、ここが山脈になっていて……」


 ユユが取り出した地図を覗き込む。

 ユユの説明によれば、問題のラガルドの街はこの街から二時間ほどで辿り着ける距離らしく、俺たちが今進行しようとしている方向とは九十度くらいずれた方角ということだった。


「そうですか。ならこれから進む道には魔物の暴走とやらの影響はないということですね」


「え? あ、まあそういうことにはなります」


 それに対しなるほど、と頷いた女神は次にきっぱりと言い放つ。


「無視しましょう。こんなもの」


 ……まあそう来るか。


「あのな。俺たちは冒険者として監視されてるんだぞ? 命令を破ったって事が一発でばれるんだ。そうだよな?」


「は、はい。そうなります」


「罰則というのはどんなものなんですか?」


 女神の質問に対し、ユユが顎に人差し指を当てながら考える素振りを見せる。


「えーと、恐らくですが超多額の罰金を徴収されるか、最悪の場合その上でライセンス剥奪もあり得るかと」


 マジかよ。超重いじゃん。


「それだけですか。なら問題ありませんね」


「はあ? 人の話聞いてたのかよ」


 何言っちゃてんのこいつ。

 どう考えても重すぎる処置だ。


「それすらも無視すればいいでしょう。一応聞きますがその場合どうなりますか?」


 女神の質問にまたもやユユはちゃんと考えて応える。


「その場合は裏部隊が出動して拘束されることになる……と思います。一度だけその裏部隊の方々を見たことがあります」


「その裏部隊とやらは強いんですか? ユユと比較してどうなんですか?」


 ……こいつ、絶対振り切ろうとか考えてやがる。


「そ、そうですね……見た感じはかなり手練れな感じはしましたが……」


「ユユなら勝てそうですか? 正直に答えてください」


 うん、なんか真面目な感じで討論しちゃってるけど、それ絶対この場面でする質問じゃねえ……。もっとスタンピードのことに目を向けろよ。なに裏部隊と戦うことを想定してんだよ。


「それは……たぶん私一人なら返り討ちにできるとは思いますが……」


 できちゃうんだ。流石ユユ様。

 でも『一人なら』ってことは、俺たちまでかばえるかどうかは分からないということか。


 俺たちが多少なりとも戦えればいいんだが、残念ながら俺たちの戦闘力はミジンコ同然。俺などに至っては人を殴ったことすらないし、サッカーで思いっきりボールを蹴った際に足をつりかけたことすらあるレベルだ。戦闘において足手まといになること間違いなしだろう。


「私を守りながらでは厳しいということですか?」


「う、うーんと……ちょっとその辺はよく分かりませんが、もしかしたら無理かも……って感じです」


「そうですか。ではもう冒険者自体をやめてしまいましょう。そうすれば規則には当てはまらなくなるはずです」


「そ、それは申し訳ないんですけど……このタイミングでは厳しいと思います。脱退には冒険者ギルド本部まで赴いて水晶による契約を解いて貰わないといけないので……」


 なるほど。そりゃ相当脱退条件が厳しいな。

 本部とやらに行っている間に命令を無視したことになってしまうだろう。

 というかそれでは結局寄り道していることになり、本末転倒だ。


 ……はぁ。もういいだろ。


「……あのなあ。そんなことに頭を悩ませるくらいなら、つべこべ言わずに加勢しに行ったらいいだろ。追われるのは普通にだるいって」


 俺がそう言うと、女神は少しだけ黙り込んだ後ふぅ、と溜息を吐いた。


「……最悪な機関に囲われてしまったものです。ぶっ潰したい気分です」


「なんちゅうこと言うんだ……」


 それだと毒舌女神というよりもただの破壊神だ。

 てかそんな機関にわざわざ入りに行ったのは俺たちなわけだから、自業自得な部分はある。


「じゃあ、ひとまず行くって事でいいだろ? こればっかりはしょうがないぞ。冒険者としてのルールなんだから」


「……仕方ないですね。なら極力ゆっくり行ってください。事態が収まったころに到着するのが理想です」


「……こんなにサボりたがる奴も他に見たことねえよ……」


 というわけで俺たちは結局現場へと向かうことになった。

 いや結局かい、って感じだ。




 ……てかマジで俺の周り極端なやつしかいねえな。


 めちゃくちゃサボりたがる奴と、めちゃくちゃ流される奴。


 これだけ個性が強いと、こんなにも苦労するものなんだな。


 俺がいなかったらどうなるか、すげえ気になるところだ。

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