ゲーセンへ行こう!2
四階についたエレベーターの扉が開くと、むわっとする独特の空気が流れ込んできた。ただ昔から禁煙だったから、タバコ臭くないというのは利点だ。
平日の昼間ということもあり人はそこまでおらず、ちらほらと確認できるくらいだった。そんな中、真白の車いすを押しながらUFの筐体を探す。すると、ちょうど二台分空いているのが目についたのでそこに入れさせてもらうことにする。
「ふう、ラッキーだったよ。いくらこの時間帯とはいえ、二台も空いているのは」
「そうなの?」
「あぁ、きのう下見に行った浅賀のゲーセンなんかは、もっと早くいったのに一台しか空いてなかった。しかも、その後どんどん人が来るもんだから、そこまでプレイもできなかったし」
「へぇーやっぱり人気なんだ」
真白の車いすのブレーキをかけ、筐体の前に固定する。
「でも、ストーリーモードもクリアできたし個人的には収穫があったよ。オンライン対戦もやりたかったけど、まあそれは今日の楽しみにってことで」
「……ごめんね先輩、わざわざ下見にも行ってもらって」
「いや、その辺は大丈夫だ。どうせ友達と遊ぶ約束もしてたし、むしろちょうどよかったよ。それよりほら、これICカード」
「……? これって何に使うの?」
「プレイヤーデータを保存しておくんだよ。キャラ作成ツールでアカウント作ったろ? それと連動させて自分が作ったキャラをゲームに登録したり、オンライン対戦での戦績を記録したりとかするんだ。真白はツールにはアップロードしてるけど、実機で使えるキャラ登録してないだろ?」
「あ、うん。そうね……どうしよっか」
真白の作ったキャラは2体。『HHSA』と『JOKER』という、両方とも主人公である『日暮 歩夢』を改変したキャラだ。『HHSA』は本当にスピード特化のキャラで、『JOKER』はスピードと火力のバランスを取りながらもスタイリッシュに戦えるキャラになっている。
だが実際にゲームで使用できるのは一体のみなので、問題はどちらを登録するかだが……。
「先輩はどっちが好みだった?」
「個人的な好みで言うなら『JOKER』かな。『HHSA』はAIで動かすには良いけど、手動だとさすがに早すぎる。あと『シリアルキラー』の方が必殺技がカッコイイってのもある」
「うん、あれは結構頑張った」
ダウンロードデータに入っていたキャラ説明が書かれたテキストファイルによると、真白は『JOKER』の必殺技モーションを自作したらしい。ちなみにHHSAの方には『HHSAの略です』という豆知識が書かれていた。なんとも独特なネーミングセンスだ。
「じゃあJOKERの方を登録するわね。えっと……」
「ここ、ここにカードをタッチして」
「あ、ここね。えい!」
僕が筐体の前面にある読み込み機を指すと、そこに真白がピッとICカードをタッチする。すると画面にユーザーネーム『Mashiro』とIDが表示され無事に読み込みが完了する。
「やった、できた!」
「よしよし、じゃあ次は……」
真白に各モードの説明や、アーケードコントローラ――アケコンの使い方なんかを教えていく。
「このアケコンっていうの使いづらくない? 普通のコントローラーの方が使い易いと思うんだけど……」
「確かに慣れてないと抵抗あるかもね。でも慣れるとこっちの方がコマンド入れやすいと思うよ」
「ふーん、そういうものかな?」
「僕も昔は真白とおんなじこと言ってたけど、今ではすっかりこっちに慣れちゃったし」
「先輩も誰かに教えてもらったの?」
「そう、だな……」
『いいか史人、確かに今は普通のコントローラーの方が使い易いだろう。だけど、アケコンは慣れたら圧倒的にコマンドが入れ易い。通常コントローラーを使う上手い人がいないとは言わないが、まずは試してみることをすすめる』
いつかのケン兄の言葉がよみがえる。そうだな、真白になら話しても良いか。
「むかし僕に格ゲーを教えてくれた師匠みたいな人がいたんだ。その人から言われてね」
「へぇー。ね、その人は今どうしてるの」
その真白の問いに、僕は目の前の筐体を指した。
「え、このゲームがどうかしたの?」
「その人ケン兄……蒼梅 拳志っていうんだけどさ、このゲームを作った人なんだよ」
「えっ、それってすごい人なんじゃ!?」
「うん、すごかった。元々格ゲーの全国チャンピオンだったんだぜ?」
「そっか、だから先輩も格ゲー好きになったんだ。今も連絡を取ったりしてるの?」
「いや、色々あって今は連絡を取れないけど、もう一度……」
そこで僕はもう一度筐体を見やる。画面には真白のユーザーアカウント連携が終わり『Unlimited Fight』の文字が表示されていた。そうだ、会いに行くんだもう一度。
「このゲームで強くなって、それで胸を張って会いに行きたいんだ」
「……そっか、ならわたしも手伝う。ここまで連れてきてくれたお礼ってわけじゃないけど、わたしのつくるキャラが先輩の役に立つなら手伝いたいの」
「ありがとな」
思わず真白の頭を撫でてしまう。なんだろう、自然とそうしたくなってしまったのだ。撫でてから女の子の頭をいきなり撫でるなんて不味かったかもしれないと思ったが、
「もう、先輩くすぐったい!」
そう言われるだけで、手を払われるなんてことはなかった。
「さ、はやくUFやるよ先輩! もっと色々教えてくれるんでしょ!」
「お、おう。とりあえず真白はアケコンに慣れるところからだな」
それから真白に格ゲーのノウハウを教えていくわけだが、数時間後に僕は驚愕することとなった。
何か書きたいことがとっちらかってる気がしますね(-_-;)
もしアドバイスや今後の展開の希望などありましたら、時間があれば書いていただけると幸いです。