Unlimited Fight
今回が最終回となります。
あと今更ですがタイトルを『それが僕たちの矛盾』から『Unlimited Fight』と改題しました。
『それでは、表彰式に移らせて頂こうと思います。Humito選手、Kurobaen選手、Ryu選手は表彰台へどうぞ』
試合後、簡単な表彰式が行われることとなり、僕と鈴羽、そしてちゃっかり三位決定戦で勝っていたリュウ兄が表彰台に呼ばれる。進行は変わらず実況の人が引き継ぐことになっており、僕は少しお願いをしに実況の人に話しかけた。
「あの、少しいいでしょうか?」
『お、Humito選手じゃないですか! どうしました?』
「あの、今回キャラ制作の真白と共同で出場ってことだったんですけど、彼女も表彰台に呼んであげてもいいですか?」
『おぉ、そういえばMashiro氏も来てるんでしたね。大丈夫ですよー是非連れてきてください!』
「ありがとうございます」
お礼を言い、僕は真白を探す。
「史人、どこいくの?」
「鈴羽……ちょっと真白のところへ」
「キャラ制作の子だっけ? その、私も行って良いかな? 少し話もしてみたいし……」
「あぁ、もちろん」
そうして、僕は鈴羽と一緒に真白を探しにステージ下に降りる。
「やっぱり、史人には勝てなかったな……」
ぽつりと鈴羽が、そうこぼした。だけど言葉とは違って、表情はどこか吹っ切れたようだった。
「ごめん、鈴羽……やっぱり、防御型で戦いたかった?」
「うぅん、私も本当はずっと攻撃型の戦い方をしたかったの。でも、どうしても勝ちにこだわりたかった」
「それも結局、僕のせいだよね」
「でも、もう史人はどこにもいかないよね?」
「あぁ、それは約束する」
そこまで言ったところで真白を発見した。向こうもこちらに気付いたようで、僕は急いで真白の元へ向かった。
「先輩! っと、鈴羽さん」
「……こんにちは」
「あ、はい、こんにちは……」
なんとなく気まずい雰囲気が鈴羽と真白の間に流れる……と思ったんだが、
「あの、鈴羽さんってすごいですね」
「えっ」
「だって、すごく強いじゃないですが。わたしなんて、キャラ作ることしかできないし……」
「そんなことないよ。キャラ作れるなんてすごいと思う。私はキャラもデフォルトだし、ただ戦うことした出来ないから……」
「ふふっ、わたしたち、お互い無いものねだりですね」
「うん、そうだね」
そう言って二人は笑いあった。
おぉ、なんか良く分からないけど、この二人が仲良くしてくれるのは嬉しい。っと、そうだ。
「真白にも表彰式に出て欲しいんだけど、大丈夫?」
「えっ、わたし!? いいのかな……?」
「大丈夫、ね、史人」
「うん、今回は二人で出場だし、実況の人も良いって言ってくれたし」
「それなら、出させてもらおうかな」
そうして真白も表彰台に上がることになった。鈴羽はいつも通りだが、僕も真白もガチガチに緊張してしまっていた。
『それでは、表彰式を始めましょう! まずは第三位、Ryu選手!』
「どーもどーも」
飄々とした感じでトロフィーを受け取るリュウ兄。
『続いて第二位、Kurobane選手!」
「……」
黙ったまま観客席にぺこりと頭を下げる鈴羽。
『そして、見事優勝しましたHumito選手&キャラ製作者であるMashiro選手!』
歓声がそこで最高潮となる。僕と、そして真白が歓声の波に飲み込まれる。
そして以前RimiCuで社長室まで案内してくれた――確か藍葉さんがトロフィーを持ってきてくれた。
「おめでとうございます、お二人とも」
真白と合わせてトロフィーを受け取る。トロフィーはずっしりと重く、自分たちが成し遂げたことの大きさを実感できた。
『そして主催であるLimiCu代表、そして今回解説もして頂いた蒼梅 拳志さんより今大会の講評をして頂きたいと思います。では、お願いします』
そして実況の人の言葉に合わせて、今度はケン兄がステージ上に上がってきた。そして、そこから観客の人たちを一通り見渡すと、ゆっくり言葉を紡ぎ出した。
「LimiCu代表の蒼梅です。この度はこのような大会を開催することができ、こうして無事に終了することができたのは、ひとえにここにいる格闘ゲームを愛する多くの皆さんの支えと、そして情熱があったからだと思います」
話が始まると、今までどこかにぎやかだったギャラリーも静かにケン兄の言葉に耳を傾けていた。
「私がこのゲームを作り始めたきっかけは、もっと格闘ゲームに自由度を持たせられないか? という想いからでした。ですが問題は山積みで、今でもまだ数多くの問題が残っています。それでも、少しでも人口が減少傾向にある格闘ゲーム業界に一石を投じられないかという想いは今でも変わりません」
人口の減少――それは敷居が高いとされている格ゲー業界では深刻な問題となっていた。
「もっと気軽に、もっと楽しく、もっと自由に格闘ゲームを楽しんでもらえるよう、これからもLimiCuとしてはさまざまなことに取り組んでいこうと思っています。そして、これからのUnlimited Fightの展開として、2対2のタッグバトルに対応していこうと考えています」
会場が騒めいた。今までも2対2ができる格ゲーもなくはないが、オリジナルキャラを使ったものとしては初めての試みになるだろう。
「まずは手始めとして、今大会の筐体に2対2で出来るモードを搭載しています。そして、今回は優勝者のHumito選手とKurobane選手にタッグを組んでいただき、体験してもらおうと思います」
そのケン兄の言葉で会場は一気に盛り上がった。自分で言うのもなんだけど優勝者と準優勝者のタッグバトルとなると、確かに見る方としては熱いものがあるかもしれない。
「で、でもケン兄。相手は……」
「その点は心配するな、相手は俺と……そして知紗だ」
「藍葉さん!?」
僕は驚いて先ほど自分にトロフィーを渡してくれた藍葉さんを見やった。彼女もどうやら今聞いたようで驚いた顔をしていたが、やがて仕方ないというような仕草をした。
「ね、ねぇ鈴羽……藍葉さんって、強いの?」
「え、史人気づいてないの?」
鈴羽に藍葉さんの強さを尋ねると、何故か質問で返されてしまった。
気付いてない? 一体何に……?
「あっ!」
そこまで考えて、僕はようやく思い出した。
ケン兄は七年前、確かに敗北した。けれど、格闘ゲーマーでケン兄を貶めるようなことを言う人はほとんどいなかった。何故なら、記録が残るような大会でケン兄はたった一回しか負けていないからだ。そう、引退を決定づけたあの試合だ。
つまり、全盛期のケン兄に勝てたのはただ一人。その人は当時、高校二年の女子学生だった。
しかも彼女は他の格闘ゲーム大会の出場記録はなく、手数の多いケン兄に対し全て適格な当て身でしのぎ切った。ついたあだ名は『当て身の女王』。そしてその人の名前が確か――藍葉 知紗。
『これはなんということでしょう! かつて一時代を築いたレジェンド、蒼梅拳志・藍葉知紗タッグと新時代のHumito・Kurobaneタッグ。格ゲー好きとしてはたまりません!』
いや、たしかにたまらないけど! 僕から見ても夢みたいなタッグだと思うけど……。
「どうしようか、鈴羽」
「史人……私、負けるつもりはないから」
うん、例え僕のことが無くなったからって言っても、鈴羽はやっぱり負けず嫌いのままだった。そして、そんなこと言われたら僕だって――
「負けられなくなっちゃうじゃないか」
「先輩、その意気その意気!」
「うん、頑張ろう、史人!」
そうだ、楽しもう! ケン兄の言ってたように、もっと楽しく、もっと自由に。そして、
「僕たちが新時代を切り開くぞ、鈴羽、真白!」
「うん!」
「ええ!」
そうだ、僕たちの戦いは終わらない。きっと際限なく続いていく。
『それでは準備は出来たでしょうか? ではいきますよ……エキシビジョンマッチ! レディ……』
『Fight!!』
これにて終了でございます。長らくお付き合いいただき、有難うございました。
評価して頂いた方、ブックマークして頂いた方、読んで頂いた方に改めてお礼申し上げます。
正直最後の方はエタりそうでしたが、読んでくれている方がいるということが何より励みになりました。
ブックマークが前作の1から5まで増えまして、少ないながらもとても嬉しかったです。
次回作は昔書いた作品を上げるか新作を上げるか悩んでおりますが、5を超えることを目標としたいと思います!
繰り返しになりますが、有難うございました!




