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コーヒーに塩

コーヒーに塩

 缶コーヒーを飲んでいてふと成分表示を見てぎょっとした。原材料のなかに塩が入っている。

 高血圧で塩分を控えているのにコーヒーに入っていたら台無しだ。それでなくてもコーヒーだって血圧にはよろしくないというのに。

 ならば飲まなければよかろうが、眠気覚ましが欲しいときもあるのだ。緑茶の方がカフェインは多いそうだがコーヒーの方が眠気が覚める気がする。イメージは大事にした方がいい。偽薬効果が期待できる。


 塩対応という言葉があるそうだ。甘い対応の逆の意味らしい。こういった言葉を発案する人は本当にすごいと感心する。言葉は生きもの、刻々と変化し続けるが、塩対応発案者のような人が、言葉の海を開くモーセなのかもしれない。


 学生の頃、方言学の講義が好きだった。

 言葉は国の中央で急激に変化し、それが徐々に地方へ伝播し、中央ですでに忘れられたような言葉も地方では現在進行形で使われていたりしたというようなことを教わったわけだが。


 私は生まれも育ちも福岡で、福岡の言葉を喋る。福岡の言葉というと博多弁かというと、ちょっと違う。同じ福岡県内でも細かい方言の違いがあるが、博多弁はその中でも立ち位置が違うと私は思っている。


 博多というのは古くから貿易で栄えた港町だ。堺などとともに中世には自治制をとっていた。

 対して福岡というのはお武家さんの町だ。江戸時代にやって来た大名、黒田さんがお城を作って出来た城下町。

 この黒田さん、もとは備前あたりの人だったから、福岡の武士は備前なまりだったという話がある。それが九州の言葉と混ざったのが今の福岡弁。古来つづいた博多の言葉が博多弁。


 私が話すのは福岡弁で、博多の人が本気で話している博多弁はちんぷんかんぷんだ。距離でいったら、うちと博多は十キロも離れていないのに。博多弁を聞くとちょっとした小旅行気分が味わえる。


 それでも「博多んもんな~横道もん、青竹割ってヘコいかく、ばってんラーメン」くらいこてこてな博多弁は、もう小旅行と言うより海外旅行で、私のてにはおえないのだ。

 コーヒーに入っている塩ほどに私の中で違和感がある。でもそれが郷土愛の良いアクセントになっているのかも知れない。


 ちなみに缶コーヒーにはシリコーンというものも入っていたのですが……。

 博多弁にはそんな伏兵がいないことを祈りたいところだ。

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