白黒カラー
白黒カラー
色白、小太り、メガネで、スケベ心がまる見えの結婚しているオジサン。真由美は我ながら趣味が悪いなと思いながら、幾人もの色白オジサンたちと恋愛を繰り返し、3回目の干支を数えた。
好きなタイプの男性と相性が良いとは限らないと、やっと理解できたのは、今年の春に手痛い失恋をした後だった。
「年とると、やっぱり色々、智恵がつくものなのねえ」
ふと漏らした呟きは隣の席まで届いたらしい。後輩の木下君が「ぶば!」と吹き出した。
「どーしたんっすか? 悟っちゃったんすか?」
色黒、筋肉質、EXILEの一員に紛れても違和感ない木下君に盛大に笑ってもらって、真由美に久しぶりに笑顔が戻った。
「そうだねえ。悟っちゃったかな」
「いいっすね!」
木下君が親指をたてて「グー」とサインをくれる。
「あ、そだ。真由美先輩。オレ土日、沖縄いったんっすよ! お土産どーぞ」
デスクの引出しから雪塩ちんすこうを取り出して、うやうやしく差し出す。その芝居がかった動作も愉快だ。真由美を元気付けようとおどけてくれているらしい。
「まあ! ありがとう! 沖縄に行ったの? 一泊?」
「そうっす、日焼けしてきたんすよ!」
そう言って両袖を捲りあげる。なるほど、先週末より黒さが際立っている。
ふと、彼の左手に目が止まった。
真っ黒な肌の中、左手の薬指の根元だけが白い。真由美はドキリとした。木下君は独身だし、普段は指輪などしていない。きっと沖縄旅行は恋人と共に行ったのだろう。
真顔でそんなことを考えていると木下君が首をかしげた。
「どーかしたっすか?」
「うん、すごく焼けたな~ってびっくりしたよ」
真由美が慌てて答えると木下君は破顔した。
「でっしょー? やっぱ沖縄いいっすよ!」
輝くような笑顔。本当に楽しかったのだろう。
真由美は笑顔を返しつつ、胸の鼓動が大きくなっていることを意識していた。悪い性癖はまだまだ治っていないらしいことに気づかないまま、真由美の新しい恋は始まった。




