好きだった先生のおはなし。
好きだった先生のおはなし。
中高とカトリックの女子高に通っていました。
カトリックなので、道徳の授業の変わりに宗教の授業がありました。
中学時代の担当教師はシスター諸石。
正真正銘の修道女さんでした。
50代くらいの小柄でおだやかなシスター。
ある初夏の一日、窓を全開にして、爽やかな風が吹き込む中での宗教の授業中。
窓から、ぶぶぶぶぶぶぶぶ!と重い羽音をとどろかせ
ドでかいスズメバチが飛び込んできました。
一瞬で教室は阿鼻叫喚に。
スズメバチはよりによって、つぎつぎと少女たちの頭めがけてダイブ!!
少女たちが悲鳴をあげ逃げ惑います。
シスター諸石は、つかつかとスズメバチに近づいていくと、
手にしていた聖書で
バチーーーーーン!!!
スズメバチを叩き落しました。
教室は、一瞬にして静まり返りました。
「……あの、シスター、……よろしいのですか? その、……聖書で……」
シスターはおだやかに
「あなたたちの無事が何より大切です」
とおっしゃいましたが、聖書を持った手はフルフルと震えていました。
(やべ! やっちまった!!)
という心の叫びが聞こえてきそうでした。
あれから三十年近くがたちました。
キリスト教とは無関係に生きてきましたが、今でも聖書を捨てずに持っています。
もうページを開くこともありません。ですが今でも聖書を見るたびにシスター諸石の勇姿が思い出されます。
そうして思い出すたびに、私たちのためにスズメバチに立ち向かってくださったシスターの愛と信仰心のどちらが大きかったのだろうと今でも思うのです。
ともかくも、神の言葉はスズメバチさえ退けるのだなあ、ということを中学生の私は学んだのでした。




