電話番
電話番
香織のやつは電話に出やがらない。何度かけてもコール音がなり続けるばっかりで、留守録にすらなりやしない。おかげで俺は電話から離れられねえ。
だいたい、香織はおっちょこちょいなんだ。だから俺が電話をかけつづけなければならなくなった。本当ならこんな面倒なことはごめんなんだ。誰だって人の尻拭いなんか嫌に決まってる。それが人に嫌われなきゃならないことなら尚更だ。
ち、いい加減に出ろよ。せっかくケータイにかけてやってんだから。ケータイ握りしめて「どうしよう、ほんとに電話かかってきちゃった、どうしよう」って慌ててるのは分かってんだよ。諦めて出ちまえよ。どうせ逃げられないんだからさ。
……まだ出やがらない。そのくせぶっちぎることもできない。肝っ玉が小せえ。そんなことじゃ立派な肝っ玉母さんになれない……、まあ、なれないわな。どうせ逃げられないんだからさ、電話からは。
お。やっと電話がつながった。さあ、お待ちかねの最後の電話だぜ。
「おまえが……俺を……ころした……ゆるさない……」
まあ、香織にはなんの関係もないとは分かりきってるが、仕方ねえ。呪いの言葉のテンプレだからな。
「俺と同じ……苦しみを……あじわえ……」
はい、通話終了っと。
あー、待ちくたびれて疲れたぜ。けどま、後は実行部隊に任せりゃいいからな。電話係は楽な方かもな。
それにしても、人間は暇だよな。呪いの電話番号にわざわざ電話する暇があったら、恋敵を追い落とすための策略でも練ればいいんだ。
いや、それも呪いに頼るようなら、新しい呪いたちが生まれるだけか。
ち、またかかってきやがった。なんでそんなに呪われたがるかね。しかたない、働きますかね。
「もしもし……」




