後悔すればいい
私は一年前ある世界に召喚された。よくある魔王を倒さなければいけないわけでもないし、世界を救う巫女としてでもない。では、なぜ私が召喚されたのかという疑問が残る。それは私にもわからない。そこは重要だろというツッコミが入るかもしれないけど知らないものは知らない。知る必要がないと判断されたのだろう。
私を召喚したのはこの世界のある国の国王、第一王子、その側近である。それ以外のものは私が召喚されたことを知らない。隣国から来たとしか思っていない。それは国王側が情報操作しているから。私も別の世界から来たなんて言うわけないので誰も知らない。
一応、国王に招かれた立場なので王城では結構自由に生活できた。これもまた情報操作というものが関係しているのだろう。そんな生活をしている中一人の王子と会うようになった。話しているうちに私は少しずつだけど彼を好きになっていた。彼がどう思っていたかはわからないだからこそ私はあんなことを言ったのだから。
ある日のことだった。久しぶりに国王らに呼ばれた。私を元の世界に還すとのことだった。彼らがなんのために召喚したのかは結局分からずそんなに気にとめることもなかった。一つ心残りと言えば王子に気を伝えてないことだろうか。けれど伝えたところでなにかあるわけでもない。だから伝えなくてもいいと思っていた。ただそのことを国王らが話しているときに考えたのがいけなかったのか彼らには私の気持ちなどお見通しだったらしい。私としては一応隠しているつもりだったのだけれど。
国王らは私にちゃんと気持ちを伝えてきなさいと言ってきた。このあたりも彼らは勝手だと思った。私を還すことは決まっていたのに私に気持ちを伝えろと言うのだから。伝えたとしても私にとって何がいい答えたのかわからない。私の気持ちに応えてくれたとしても私は自分の世界に還らされる。応えてもらえなければそういうことだろう。
王子に気持ちを伝える気持ちは無かったけれど彼らに言われたからは分からないけど…
いや、言われたからなんだけど私は気持ちを伝えることにした。
「やっぱりここにいた」
ここは王城の真ん中らへんにある中庭。芝生が広がっていて花壇には季節の花が揺れていて憩いの空間。王子はこの場所が好きでよくいる。
「ん、なんかようか?」
王子は王子っていう容姿をしている。サラサラな金髪の髪に瞳は水色で典型的な王子だなって思う。
「私、王子のことが好き。」
「冗談だろ?ほんとこういう冗談いうの好きだよな。」
あーあ。冗談って捕らえられちゃった。まあ、私が悪いことは認める。確かに冗談を言うことはあった。でもさ恋愛の冗談は言ったことないんだけどな。目があっていたわけだから私が本気なことは伝わっていたはず、なのに冗談って言われたわけだからきっとそういうことなんだと思う。でもこれで私のこの世界での生活は終わりを告げた。
一世一代の告白が終わった私は国王らのもとに戻って無事帰還した。彼らは記憶操作をどうするか聞いてきた。私は人の記憶を操作する事は好きではない。だから私のことはそのままにしてもらった。隣国に帰って行ったということにしてもらった。
少し思うのは私がいなくなったあ 王子がどう思ったのかと言うこと。少しぐらい後悔してくれていたら私は嬉しい。でもそんなことは自意識過剰だということも知っている。
召喚されていた時間に還してくれたので日常生活に困ることは無かった。そしていつも通りに私は生活していく。