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第91話 窮地の時、現れたのは

「だが、いくら英雄とはいえ剣を持っていなければ無力だ。結婚し、跡継ぎさえ生まれれば殺したって問題ない」

「お前…!」


 リヴェスはルーペアトに限らず、周りの人間を自分の駒としか思っていない言葉に憤りを感じ、今すぐ掴みかかりたいほどだった。


 ルーペアトもミランの言葉に寒気が。


(ミランとの子供なんて死んでも嫌だわ…)


 正直なところ、ルーペアトは剣が無くなったとしても、ミランが思っているよりは強い。

 剣術と共に身につけた回避力があるからだ。

 ただ、男に大人数で来られたら不利というだけで。


「ここにいる奴らの命を保証して欲しかったら、そうだな……、お前の命だけで約束してやる」

「俺を殺したら、皆の命は奪わないと約束するんだな?」

「ああ、誓ってやるよ」

「リヴェス?!」


 リヴェスがミランの要件を受け入れるように感じて、ルーペアトは引き止めようとリヴェスの袖を掴む。

 この手を離したらミランの元へ行ってしまいそうだ。


「…ルー、スイッチは頼んだ」

「え?それは…」


 リヴェスは袖からルーペアトの手を外し、ミランに聞こえないよう小さく呟いた。


 スイッチだけ頼まれたということは、リヴェスは素直にミランに従うつもりはなさそうで少し安堵する。

 しかし、隙が一つも生まれなかったらとしたら。


(その時はどうするの…?)


 何が何でも絶対にリヴェスを死なせたりはしない。

 だけど、スイッチがある以上下手に近づけないし、守ることも出来ないではないか。


 不安が募る中、リヴェスはルーペアトの元を離れてミランの前へ行ってしまった。


「へぇ…死ぬのを受け入れるのか。お前を殺せると思うと楽しみだな」


 ミランはスイッチを持っていない方の手で剣を抜き、リヴェスの首へ剣先を近づける。


「お前はそんなに俺を殺したいんだな」

「ああ、だってお前は俺と同じく両親に愛されていなのに、お前は何でも手に入っているだろう?仲の良い兄弟と友人、信頼できる部下、そしてルーペアトまで。憎らしくて仕方ない」


 そんなの当たり前だ。ミランとリヴェスでは人柄が違うのだから。

 ミランは人助けなんてほとんどしない人間だろう。


 対してリヴェスは人助けをしていたからこそ、リヴェスの側にいたい、役に立ちたいと思う人が集まっている。


「だから早く死んでくれ」


 ミランは今、リヴェスに向けている剣に意識が集中している。

 それでもスイッチは奪えそうになく、ルーペアトは焦りを感じ始めた。


(どうしよう…、早く…早くスイッチをどうにかしないと)


 ルーペアトはスイッチを凝視して機会を窺い続ける。

 しかし、ミランはもう剣を振り上げており、すぐにでもリヴェスの首を切る勢いだ。


 リヴェスが目を閉じ膝を着く。

 その姿を見て、ルーペアトもまだ隙もなくて動くべきではないのに身体が動きそうになった時、何かが目の前を速く横切っていった。


「ぐっ…!」


 ミランの低く唸るような声と共に剣が落ちる音が聞こえるも、ルーペアトは状況を理解出来ないまま素早く剣を抜く。


(今だ!)


 剣で弾かれミランの手から離れたスイッチは地面を転がっていった。


 そこでようやくミランに何が起きたのかを理解する。


「やりやがったな…!!」


 ミランの手から血が流れており、側には弓が落ちていた。

 遠くから放たれた弓がミランの手を掠め、痛みで剣を落としたのだろう。


 一体誰が弓を放ったのか。

 リヴェスはこうなることをわかっていて首を差し出したのか、考えていたところで弓を放った主が現れる。


「全部僕の計画通りですね」

「俺の味方じゃなかったのか?!ノーヴァ!!」

「はて、いつ僕があなたの味方なんて言いましたかね?」


 ノーヴァは落ちたスイッチを拾い上げながら、満足そうに笑っている。


(何でここに居るの?ハインツに居たんじゃ…)


 疑問に思いリヴェスの方に目を向けるが、リヴェスもルーペアトと同じく驚いていた。


「この弓はノーヴァだったのか?てっきりジェイだと…」


 リヴェスの言葉にルーペアトは周囲を見渡すと、確かにジェイの姿が見えなくなっていた。

 ミランの意識がリヴェスに向いている間に、ジェイは遠くへ移動していたようだ。


「そんなことはどうだって良いんだよ!ノーヴァは俺にその爆弾を作ったくせに、俺の邪魔をするのか?!」


(ノーヴァが作った?!)


 この場に居るノーヴァを知っている者全員が、ミランの言葉に驚きを隠せなかった。


「当たり前ですよ。僕の計画を達成するには、あなたが邪魔なんですから。このスイッチも押しても何も起きませんよ」


 そう言ってノーヴァがスイッチを押したが、会場が爆発することはなかった。

 先程まで爆発に恐れていたのが馬鹿らしく思えてくる。


「なっ!一度目は爆発しただろう?!」

「そうしないと爆発すると信じてもらえないじゃないですか」


 爆弾についてどういう経緯があったのかはわかった。

 恐らく、ミランがリヴェスの過去を知っていたのはノーヴァが情報を渡していたのだろう。

 そして協力をするふりをして、ノーヴァは自分の計画を達成するために動いていた。


「ノーヴァの計画は何なんだ?」


 リヴェスは立ち上がりながら、ルーペアトも思っていた疑問を投げ掛ける。


「僕の計画はリヴェスをヴィズィオネアの皇帝にすることです」

「……は?」


 ルーペアトも意味がわからなかった。

 リヴェスも自分がヴィズィオネアの皇帝になって、国をあるべき姿に戻すために動いていたのに、ミランの計画も同じだなんて。


「他にも理由はありますけど、今はそれどころじゃありませんからね」


 そう、今はノーヴァがどうこうよりも、ミランをどうにかするのが先だ。

読んで頂きありがとうございました!


次回は木曜7時となります。

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