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運命の歯車が狂ってしまったのでしょうか?


「えっ! なぜだ、先日会った時にはこのキッチンカーを手伝ってくれると、」

「それは後から気がついたのですが、このキッチンカーにはシートベルトがございませんから、一緒に乗っていくには危のうございます」

「そのシートベルトとやらがあれば良いわけだな? すぐに用意しよう。それなら良いか?」

「おもてなしのお仕事が忙しいということもありますので……どなたかスタッフをお雇いいただければと思います」

「……そ、そうか」


明らかにしゅんとしてしまったアラハイラム国王陛下。ああ、なぜこんなことになってしまったのでしょうか。ゴミ箱に身を潜めていたのを見つかり、そこから助け出された日から、運命の歯車は狂ってしまい、噛み合わなくなってしまったようです。


「申し訳ありません……」


けれど、アラハムさまは顔をあげると、「だがよい! こうしてエレとベンチに並んで、キッチンカーフードを食すことができただけでも満足だからな!」

「え?」


私は訳がわからず混乱しました。


「はは。エレが以前公園で、庭師の男とベンチでカラアゲ&モチモチポテトを食べていただろ? あれを……やってみたかったのだ」

「庭師のカンジさんと……」

「仲睦まじそうに半分こしていたな。正直なところ、羨ましかったのだ!」

「え、と……」

「俺にもたこ焼きを食べさせてくれないか?」


こちらを向きます。憂いのお顔ですが、耳は真っ赤です。


「それくらい全然良いのですが……では失礼して、おひとつどうぞ」


たこ焼きをぶっ刺して、アラハムさまの口へと。アラハムさまは、大きな口を開け、もぐもぐと咀嚼しごくんと喉を鳴らすと、「うまいっ! うまいっ!」と連呼して、笑いました。


褐色の肌に白い歯が浮かびます。心から、心から素敵な笑顔でございました。


「ありがとう、エレ。あの時は、エレとカンジ殿を遠くから見るしかなくて、悔しい思いをしたが、こうして並んでたこ焼きを食べることができて、二倍の美味しさだな。しかも俺は今、超絶……幸せだ」


そんなこと言われたら……。どうしてそのようなことを……。

さらに混乱してしまうではありませんか。


「…………」


私がどう返していいかわからずに沈黙していると、

「どうした? 熱でもあるのか?」

手を額に当ててきます。


お優しい。

これはおモテになるのもわかりますね。きっと婚約者のサラ王女も、アラハムさまのお優しさに、感銘を受けることでしょう。


私はふるふるとかぶりを振りました。


「大丈夫です。次のお仕事のことで頭がいっぱいで」

「そうか。仕事熱心なのは知っていたが……ではもう行きなさい。俺はもうしばらく、ここにいるよ」


さっと立って、さっと立ち去りました。城の裏口のドアから入る時、そっと振り返ってみましたら。

ベンチに座って、なにかを堪能するように、アラハムさまは天を仰ぎ目を瞑っておいででした。


しかし、私こそ。

天を仰ぎたい思いでございます。


(……側にお仕えするだけでこんなにも辛い。お仕事が無事に終わったら、リオネルシア城に帰りましょう)


痛む胸を押さえながら、私は部屋へと戻るのでした。


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