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第72話 なんか、すみません

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

「なるほど、そんなことが……」

「ああ……」


 泥みたいに眠った翌朝、朝食を終えて作業をしていたら、神妙な顔つきの兎人姉弟に呼び止められて過去を暴露された。内容が内容なだけにどんな顔をしたらいいのかよくわからない。

 えーっと、言葉を濁されたけど、《夢の先》に所属してた時にシシュティさんが男性冒険者相手に夜の相手してたってことで合ってるよね? で、そんなことしてた自分が加護を持ってる私と仲よくしていいのかわからないんだよね? そういうこと聞かれてるんだよね? 私。


「いきなりこんなことを打ち明ければ困らせてしまうのはわかっていた。だけど早い内に言わないと後々言いづらくなるからね。驚いただろう?」

「ええ、まあ、驚きはしましたけど……」


 アースレイさん、俯いちゃってまあ。シシュティさんなんか耳で顔隠しちゃってるし。でもそれだけ覚悟決めて話してくれたってことだよね。


「ありがとうございます、アースレイさん」


 お礼を言えば、は? って顔された。


「お姉さんのそういう過去、話しづらかったですよね。でもこれからの私達とのことを考えてくれて、話してくれたんですよね。ありがとうございます」


 身内のそういうことって言いづらいよなぁ。あれ、もしかして、昨日一晩中この件で悩んでた、とかないよね。寝てるよねちゃんと。


「にゃんの話かと思えば、そういう内容でしたか」

「兎の獣人族じゃからのう。他の種族からそういう目で見られるのも仕方にゃいというもんよ」


 あ、薄情兄弟が出てきた。私見てたからね? 泣きそうなシシュティさんと、シシュティさんに歩くよう促しながら近づいてくるアースレイさんに気づいた瞬間物置木の陰に隠れたの見てたからね? 置き去りにされたの知ってるからね?


「兎の獣人族って、酷い扱いされてるんですか?」

「兎の血を濃く継ぐ者達は、兎の本能そのものが強いことが多い。故にそういう目で見る者が存在することは確かじゃ。男ばかり、女ばかりのパーティーは、それ目当てで兎の獣人族をメンバーに入れることもあると聞くしのう」

「だからと言って、奴隷のように扱われることはにゃいんですよ? 冒険者であれば対等にゃんですから、もし無理強いするのであれば当然処罰されますし、場合によっては強いた方が奴隷落ちににゃります」


 ああ、よかった。いやよかったのかこれ? まあでも国がちゃんと守ってるなら、まあいいかな?

 そんなことを話してる間にアースレイさんがシシュティさんに翻訳してくれたみたいで、シシュティさんはぽろぽろと涙を流しながら抱きついてきた。不安だったんだろうね。よしよし。


「ありがとう、ニャオさん。姉さんはもうあんなことはしないって言ってるよ」

「ええ、そうしてください。体は大事にしないと」

「うん。ありがとう」


 あ、アースレイさんやっと笑った。その方がいいよ。


「で、なんだけど。君達さえよかったら、僕達もこの森に住んでもいいかな?」

「え?」

「いや、無理にとは言わないよ。だけど、ニャオさんはロスネル帝国とか、ドレイファガスに狙われてるんだよね? 町にいる間、レンゲさん達と離れてる時に接触してくるかもしれないし、そうなった時、僕達なら対処できる」

「あの、アースレイさん?」

「もちろん森での仕事も手伝うよ。果実の収穫と出荷作業だよね。故郷では農作業を手伝ってたし、きっと役立てるよ」

「アースレイさん?」

「仔ドラゴン達の仔守りもあるだろう? 仔ライオンもいるし、人手は多い方がいいと思うんだ。家事は……、やり慣れないけど、頑張るよ」

「アースレイさん!」


 やっと耳がピクッと動いた。ほんとに聞こえてなかったの?


「……やっぱり、図々しかった、かな?」

「いや、そうじゃないですけど……。見えます? 私の後ろ」


 シシュティさんの腕をほどいて、作業途中だった後ろに目を向ける。新しく下ろした毛布と予備の敷布団、そして2人分の食器一式。イニャトさんからもらったガジューの苗。離れたところにたくさんの木材と大きい葉っぱ。

 どう見ても新居の準備中ですよね。


「なんか、お2人がここに住む前提で動いちゃっててすみません……」

「む? お前さんら、ここに住まんのか? フクマル殿はよいと言っておったぞ?」

「だから先に本人達に確認しましょうと言ったじゃにゃいですか。冒険者にゃんだから旅に出るのは当たり前でしょう?」

「そんにゃこと言うてからに、真っ先にガジューの苗を取りに来たのはニャルクではにゃいか」

「ふにゃ?! そ、それは、あう……」

「……ふふ」


 笑い声が聞こえて振り返れば、アースレイさんが口を隠しながら笑ってた。


「ほれニャルクよ、笑われておるぞ」

「は? 僕が笑われてるんですか?」

「言動にそんだけ矛盾があれば誰だって笑いますよ。ほら、なんか察したシシュティさんまで笑い出した」

「うにゃぅ……」


 不満げにニャルクさんが唸った。


「君達って、ふふ、ほんとにもう、ふふふ、◎○△□』


 あれ? アースレイさんの言葉が聞こえなくなった?


『✕、□▽○、□✕』

「わかった、伝えよう。ニャオよ、アースレイは魔力を使い過ぎたらしい。しばらくユニークスキルは使わんと言っておる」

「ああ、そうなんですね」


 もしかして、私に合わせてくれてたのかな? なんか申し訳ないな。


「ある程度温存しとかにゃいと、いざという時に使えにゃい、にゃんてにゃったら困りますからね」

「無理しないでくださいって伝えてもらっていいですか? 魔力が充分ある時にお話ししましょうって」

「もちろんです。その間は僕達が通訳しますので」


 ニャルクさん達にもお世話になってるよなぁ。ありがたやありがたや。


「ニャオー! たいへんたいへーん!」


 橙地が騒ぎながら走ってきた。


「どしたん? 何が大変なん?」

「おなかぐるるーってなった!」


 ありゃま、そりゃ大変。


「じゃあお前達のご飯にするけぇ、みんな呼んできてくれる? 仔ライオンも連れてきてな」

「わかったー!」


 今走ってきたばかりの道を戻っていく橙地に、アースレイさんとシシュティさんがまた笑った。

 えっと、ガジューの苗はおチビ達に朝ご飯あげたら植えるとして、町に行くのはお昼過ぎでいいかな? 狩りに出てる漣華さん達もそれぐらいには帰るって言ってたし、それまでに家造りをやれるところまでやっておこう。寝床は大事だけど、斧のギルマスへの報告も急がないとね。

 ……あれ、ギルマスって私が家に帰ってること知ってるのかな?

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