第57話 マジックアイテムの新調
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森に引き籠ってる間に、ラミラさんは林檎とニンジンのジャムを商品化したらしく、可愛い瓶に詰められて店頭に並べられていた。
林檎を多めに入れた甘めのタイプと、甘さ控えめのタイプを置いていて、両方とも売れ行きがいいんだとか。売場には数本しか残っていない。
だから、ジャム用に卸す林檎を100玉ほど増やしてほしいってお願いされたから、オッケーってイニャトさんに返事してもらった。
嬉しそうに笑ったラミラさんが店頭のジャムを3本ずつくれたからお金を払おうとしたけど、受け取ってくれなかったなぁ。まあ、スイカのお礼として受け取っておこう。
じゃれついてくる五つ子にさよならをして、仔ドラゴン達のリードをしっかり握って、ダッドさんに教えてもらったカナスラっていう店に向かう。レストランに行くのは買い物の後の予定だ。
赤嶺が早速走り出そうとしたから、スイカ、って呟いたらピタッと止まった。そして他の仔ドラゴン一人ひとりに、はしったらだめだよ、と声をかけていく。
うーん、やっぱり赤嶺がリーダーになってる気がする。最初に走り出したのも赤嶺だったし、どこの世界でも赤がトップなのかな?
町民の注目を浴びながら歩くこと20分。シンプルな店構えが見えてきた。
「ここじゃよ。ダッドが言っていたカニャスラは」
紫輝から飛び降りて、イニャトさんが看板を前足で指した。
「入ってみましょう」
そう言って、ニャルクさんが街灯に青蕾のリードを結びつける。それに倣って、3人と4人になるように私とイニャトさんも仔ドラゴン達のリードを結んだ。
「いい? ここで大人しく待っとってな。走ったり、誰かを噛んだりしたらいけんよ?」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
「おみやげー」
「はーい」
「はーい」
返事はいいんだよなぁ。1人違うのがいるけど。
「バウジオ。みんなと一緒に待っとってくれる?」
「ばっほい!」
「ありがとう。よーしちっちゃい虹達よ。もし約束破ったら……わかるな?」
「スイカたべられなーい」
「よろしい。じゃあ行ってきます」
7色のいってらっしゃーい、とばっほい! に送られて、店の扉を開ける。と、杖をついたお婆さんがいた。
「ぉおっと?」
「あの、お店の方、ですか?」
ビクッと跳ねたニャルクさんが尋ねると、お婆さんはにこにこ笑って頷いた。
『○○、○◎』
「あ、店主さんでしたか」
「びっくりしたのう」
なんだ、店主か。出ようとするお客さんの邪魔をしたかと思ったよ。
カナスラの店主、ユエラさんは私達の話を聞いて、マジックバッグを並べてある壁の棚に案内してくれた。
「一番上の棚が時間経過にゃし、真ん中が今持っとるのと同じで、下が時間経過ありじゃよ」
「買うとしたら時間経過にゃしですが、どれがいいですか?」
時間経過なしのマジックバッグは4つ置いてあって、お洒落な刺繍ありと刺繍なしが2つずつだ。
こういうのってあんまり悩まないんだよねぇ。はい決まり。
「刺繍ありの、山鳩っぽいカーキ色がいいです」
「うにゃ? もう決めたのか?」
「カーキ色、ってどっちの色ですか? 鳩?」
ああ、カーキって言わないのか。
「金色の刺繍に、深緑っぽい方がいいです」
「深緑ですね」
頷いたニャルクさんがユエラさんに声をかけると、ユエラさんはにこにこしたまま杖を持ってない右手を振った。
そしたら、カーキ色のマジックバッグが浮き上がって目の前に下りてきた。手を出すと、羽根みたいにふわりと乗った。
「おお、凄い」
「杖に魔石が嵌め込まれてますね。初歩的にゃ浮遊魔法ですよ」
はぁ~、お婆ちゃん凄い。あ、これいくらだろう?
「すみません、これっておいくらですか?」
「240万エルじゃよ」
……にひゃくよんじゅうまん??
「あの、高過ぎ……」
「時間経過にゃしでこの価格にゃらお手頃ですね」
「うむ。しかも容量は前のマジックバッグの3倍ときた。買いじゃにゃ。お前さんも買うか?」
「いえ、僕は今のでいいですよ」
「そうか。では店主殿。会計を頼んでいいかの?」
『◎◎〜』
ああ~、値札が切られてしまった……。てかこれで安いの? 嘘でしょ?
「あと、“乾き知らず”もほしいんですけど」
『◎○○▷』
「あっちですね」
案内されて、ニャルクさんとイニャトさんがついていく。慌てて後を追って、アンティーク調の猫足の棚に並べられた色とりどりの“乾き知らず”に思わず目を見張った。
「竹筒じゃない?」
「タケ? ああ、バンブーのことでしたね。あれは一番安い種類の“乾き知らず”にゃんですよ」
「1人で飲む分には問題にゃいが、何人かで飲み回すには水の量を回復させるのに時間がかかるでにゃ。こっちの“乾き知らず”は素材はバンブーじゃが、塗装に魔石の粒子を混ぜてあって、飲む端から水を作り出してくれるんじゃよ」
「それでも限界はありますが、今持ってる物より断然いいです。さ、選んでください」
「えっと、じゃあ黒っぽいやつ……」
「ふむ、これじゃにゃ。店主殿、頼む」
『◎◎〜』
「あ、待って。それの値段は……?」
「280万エルですね」
「マジックバッグより高い?!」
「水は命ですからね」
そんなお金ぽんと払っちゃうなんてこの兄弟猫の金銭感覚どうなってんの?? この10分間で520万エル使っちゃったよ……。いや払えるけどさ。
「ありがとうの、店主殿。また寄らせてもらうわい」
店を出て、イニャトさんがお礼を言うと、ユエラさんは相変わらずのにこにこ笑顔で頭を下げてきた。そして、私達を見てる仔ドラゴン達に向かって軽く杖を振る。
ぽん、と音がして、仔ドラゴン達とバウジオの首に花のリングがかけられた。
「わーい、おはなー!」
「きれー」
「いいにおーい」
「ばっふばっふ!」
「おみやげー!」
自分の体と違う色の花のリングに喜ぶ仔ドラゴン達の姿に、ユエラさんは満足そうに微笑んだ。
「あの、ありがとうございます」
頭を下げると、またぽん、という音がして、私の頭を白い花冠が飾った。ニャルクさんとイニャトさんにも、花のリングがかかってる。
「お見事じゃ、店主殿。ありがたくいただこう」
「ありがとうございます。大切にしますね」
見送ってくれるユエラさんに手を振って、店を後にする。次に向かうのは靴屋だ。その後レストランだな。
「ニャオさん、それがルーサの花ですよ」
「石鹸の香りの花ですね。匂いが同じです」
軽く花を触って、すんすんと嗅ぐ。いい匂い。
「新しいマジックバッグは使わんのか?」
「ちょっともったいなくて……。とりあえず、今日はいつものにします。次に町に来る時に下ろしますね」
「構わん構わん。ではその時に前の“乾き知らず”と一緒に処分しよう」
「はい、そうします」
簡単に言ってくれちゃってまぁ。総額500万超える物をやすやすとは使えんよ……。こちとら庶民やぞ。
……いや、“乾き知らず”だけ使おうかね。




