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第55話 さあ召し上がれ

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評価ポイントが100を超えました! ありがとうございます!

「ふぁ~、生き返るぅぅぅ~」


 あ~、やっぱり仕事終わりに入るお風呂は最高だねぇ。

 果実の収穫は一区切りつけてたから、納品を明日に控えた今日の作業は数の確認だった。だけど仔ドラゴン達が齧ろうとしたり転がして遊ぼうとしたりして邪魔するもんだから進まない進まない。にっちもさっちも行かないから通りかかった漣華さんに引き取ってもらって、どうにか終わらせたのは夕方だった。

 個数は、林檎が4000玉、シュテムが2000掬い、モラが2000セット、桃が3000玉、蜜柑が3000袋で、葡萄が驚きの6000房だ。

 先週も同じ数を納品させてもらったけど、1週間で売り切れるのか心配になる量だったし、何より預かってもらってる間に傷まないか不安で仕方なかったけど、ハノア農園の地下にはお祖父さんが生前の頃に増築した冷房機能つきの保管室があるらしくて、そこに入れておけば問題なしってことで、甘えさせてもらうことにした。

 加えて、ラミラさんがジャムにする林檎を200玉と、それとは別に葡萄を1000房用意してる。これはレストラン・ロナンデラに卸す分。

 先週イニャトさん達がハノア農園に卸しに行ってくれた時、また葡萄を買いに来たロナンデラのオーナー、イルヒラさんが直接購入したいって言ってきたらしい。

 なんでも、レストラン・ロナンデラでデザート以外に箸休めみたいな感じで出してみたらえらい受けがよかったらしく、たくさんほしいんだとか。

 で、いろいろ話した結果、ハノア農園と同じ卸値で、可能であれば1000房納品するようになったって、その日の夕飯時に説明された。

 うちの果実は収穫したのと同じ数が次の日に実るから量の確保は問題ないんだけど、かなり疲れた。世の中の農家さんは偉大だね。


「ねーねー、ねむいのー?」


 そう聞いてきたのはお風呂にぷかぷか浮いてる藍里だ。


「違うよー。ちょっと考えてただけー」

「ねたらしずんじゃうよー?」


 同じように浮いてた緑織が尻尾を器用に使って泳いできたから喉を撫でてやると、クルルッと鳴いた。


「沈んだら助けてなー」

「わかったー」

「わかったー」


 元気よく返事をして、2人はぷかぷか泳いでいった。

 しばらく前から仔ドラゴン達とは順番こでお風呂に入るようになった。溺れないように、と用意したのは浮き輪代わりの木だ。

 福丸さんに用意してもらった丸太をいい具合の厚さで切って、真ん中をくり抜いて作った浮き輪擬き。即席だったけど、なかなかいい仕事をする。


「あ、そうだ。あれ忘れないようにしないと」


 緑織の後ろ姿を見て思い出した。せせらぎで冷やしてるあれ、忘れずに持って帰らないとね。




 ▷▷▷▷▷▷




「ただいまー」

「ママーただいまー」

「おかえり、ランリ、ミオリ。ニャオさん、ありがとう」

「いえいえ」


 仔守りをバトンタッチして、抱えていた物を割らないように、のん木の近くに設置したテーブルに置いた。収穫作業の合間を縫って作った自信作だ。天板には大きな木を輪切りにした物を、脚には丁度いい太さの木を使用していて、昔テレビで観た凸凹方法で見様見真似でくっつけてみた結果、なかなかいい感じにでき上がった。

 天板には残っていたネムネの樹液を塗ってあるからささくれで怪我をする心配もないし、つやつやして綺麗なんだなぁこれが。


「ニャオさん、それは?」

「ずいぶん大きいのう」


 ニャルクさん達が近づいてきた。バウジオがふんふんにおいを嗅いでくる。寛いでいた福丸さんと漣華さんもこっちを見た。


「スイカです。ダッドさんからもらった種の中にあったんで、風呂の近くで育ててました」

「ほう。しかし育ち過ぎではにゃいか?」

「ええ、これでは塩漬けにできませんよ」


 首を傾げる兄弟猫に、ふふん、と笑ってみせた。


「ニャルクさん、イニャトさん。私の故郷ではスイカを塩漬けで食べる方が少ないんですよ」


 前にラミラさんからお裾分けしてもらった野菜の中に混じってたスイカは熟す前の物で、ニャルクさんが塩漬けにして夕ご飯に出してきて驚いた。この世界ではスイカは小粒の時に収穫するらしくて、種は実が完全に枯れてから取るらしい。驚きだ。今までこっちに来た異世界人は教えなかったのかね?


「うにゃ? どういうことじゃ?」

「こういうことです」


 興味津々の顔で覗き込んでくる兄弟猫と黒犬、福丸さんと漣華さん、いつの間にか集まっていた仔ドラゴン達と美影さんの目の前で、ペリアッド町で買った包丁を使って半分に切る。

 パカッと割れて、真っ赤な果肉が現れると、全員が目を丸くした。


「おや、美しい色ですね」

「ぼくのいろだー!」

「そうじゃにゃセキレイ。お前さんの色じゃにゃ」

「あまいにおいがするー!」

「おいしそー!」

「ほう、スイカとはこのような色になるのか。知らなんだ」

「はい、僕も初めて見ました」


 予想通りの反応を見せるみんなに笑いながら、スイカを切り分けていく。大玉とはいえ1玉じゃ全然足りないけど、味見ぐらいなら問題ない。


「はい、どうぞ。食べてみてください」


 全員分切り終えると、仔ドラゴン達が競うように持っていった。次に福丸さんと漣華さん。ニャルクさんとイニャトさんで、美影さん。バウジオの分は種を取ってやった。


「おいしー!」

「あまーい!」

「にゃんと! スイカとはこんにゃに美味い野菜だったのか?!」

「本当ですね……。塩漬けとは全然違う……。熟したスイカがこんにゃに美味しいにゃんて……!」

「凄く甘い。レンゲ姉さん、これ美味しい!」

「ふむ、なかなかいいな。ニャオよ、もうないのか?」

「わたくしもおかわりがほしいです」


 ほぼ一口で食べ終えたみんなが一斉にこっちを見た。橙地なんかもっとちょうだいってよじ登ってきてるよ。爪痛いがな。


「そう言うと思って、せせらぎでもう10玉冷やしてますよ。取りに行くんで、手伝ってくださいな」

「では行こう。ほら、乗れ」

「漣華さん。この距離で飛ばんでいいです」

「私に乗る?」

「飛ばんでいいて」


 その後はスイカパーティーを開くことになった。喜んでもらえてよかったよ。畑に植えたいけど、幅を取る野菜だから今植えてるキャベツとかの邪魔になるんだよね。だからまあ現状維持ってことで。

 1玉確保してあるから、明日ダッドさん達に食べてもらおうかね。

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