第53話 話が違うんですけど?
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次は閑話を挟む予定です。
「ええ、わたくしはかまいませんよ」
「絶っっっっ対嫌にゃんですけど?」
ペリアッド町が見えるところまで来ると、門の外にどこぞの動物園の名物熊よろしく手を振る福丸さんを見つけたから降下したら、ニャルクさん達やギルマス達もいて騒ぎになった。
まあしょうがないか。漣華さんだけでも騒ぎになるのにもう1頭連れてきてるんだもんな。
で、森で世話したいって言ったらまーあ意見が割れる割れる。
「いいですかニャオさん。どんにゃに大人しくしていてもドラゴンにゃんですよ? 捕食者にゃんですよ? 僕達餌にゃんですよ? 一緒に暮らせるわけがにゃいじゃにゃいですか。第一あそこはフクマルさんの森にゃんですから勝手に連れていっていいわけにゃいでしょう?」
「だから、わたくしはかまいませんよ」
「森の主はいいって言ってますが?」
「フクマルさん、僕達の味方をしてください。嫌ですよドラゴンと一緒に暮らすにゃんて」
「ほう。妾もか?」
「レンゲさんはいいんです。言葉がわかりますから。だけどそのブラックドラゴンは意思の疎通ができにゃいじゃにゃいですか。ついうっかりお腹が空いてる時に近づいてぱくっとされたらどうするんです?」
なんとまあ、いつも以上に喋ること。そんなに嫌か。だけどさぁ……。
「ニャルクさんニャルクさん」
「にゃんですか? まだ僕の話は終わってませんよ。だいたい、こんにゃ大事にゃことを僕達に相談もせずに」
「すみませんニャルクさん。弟さんとわんこがあそこにいるんですけど」
「にゃ?」
ブラックドラゴンを指差せば、ニャルクさんが首を傾げてそっちを見る。ブラックドラゴンは降りた場所から動いてなかったけど、足元ではバウジオが尻尾を振っていて、頭にはイニャトさんが乗っていた。
「イイイイニャト?! 何をやってるんですか?!」
「ニャルクやーい、こやつ大人しいぞ~。お前さんも来てみるがいいぞ~」
「ばっふばっふ!」
「降りにゃさい! 食べられたらどうするんですか?!」
あわあわと慌ててるけど、近づく勇気はないんだな。よし、手伝ってやるか。手荒かもだけど仕方がない。
「ニャールクさん」
「ふにゃ! ニャオさんも早く降りるよう言ってください! でにゃいとぱくっと食べら、れ? へ?」
ふふふふふ、捕獲成功。逃がさないもんねーだ。
「あの、ニャオさん? にゃんで抱っこするんですか? え? どこに行くおつもりで?」
「はいはい、大丈夫ですよー。怖くないですからねー」
「どこに行くのか聞いてるんですが? にゃんでドラゴンに近づくんですか? ちょっと?」
「はーい、すぐに終わりますからねー」
そんなこんな言いながら歩いてたら、ブラックドラゴンはもう目の前だ。ニャルクさんのちっちゃいお手々が服を掴んできて可愛い。
「ほら、これから一緒に暮らす仲間だぞ~。仲よくするんで?」
そう言えば、ブラックドラゴンはクルルッと喉を鳴らしてニャルクさんの頬を鼻でつついた。
「ああ、このドラゴン卵持ってるから近い内に産むと思うんですけど、森の中にいい場所ってあります?」
「それでしたら、わたくしの寝床の北側がいいかと思います。陽当たりもいいですし、柔らかい草が生えていますから、多少やんちゃでも怪我をしないかと」
「ドラゴンの鱗が容易く傷つくわけなかろう。だがまあ、赤子の内は用心すべきかもな」
「ご飯はどうすればよいかの? 果実は食うか?」
「それも追い追いですね。で、ニャルクさん。寝床も決まったことですし、森に連れてっていいですよね?」
弟すら認めたんなら文句言えないでしょ、と思いながら抱っこしたままのニャルクさんを見れば、魂が抜けてしまっていた。
「ありゃりゃ、気絶してる」
「丁度いい。起きる前に寝床や食事の準備を済ませてしまおう。既成事実を作ってしまえばこっちのもんじゃ」
そう言うイニャトさんに、あれ? と思って首を傾げた。
「イニャトさん。このブラックドラゴンは怖くないんですか? 漣華さんのことは怖がってたのに」
「怖くにゃいと言えば、まあ嘘にはにゃるが……。まだ仔どもじゃからのう。敵意がにゃいのにゃらそこまで怯えては可哀想じゃろう」
え? 仔ども? このブラックドラゴンが?
「ドラゴンは300年ほど生きると成熟して仔を成すようになるが、こやつはまだ200を超えたばかりじゃ。体の成熟が早かった分、心が大人になり切れておらんのじゃよ」
漣華さんが説明してくれた。
え? じゃあ何? このブラックドラゴンもしかして人間だと13歳ぐらいだったりする? そんなに若いの?
「ほれ、ニャルクが目覚める前に帰るぞ。イニャト、バウジオ。今回は妾のユニークスキルを使うことを許そう」
「ふにゃ! ありがたやありがたや……」
「ばっほい!」
ニャルクさんを起こさないよう気をつけながら漣華さんに跨がる。イニャトさんは福丸さんの肩に乗って、バウジオは横にぴたりとくっついた。
「ほら、お前も行くんよ」
手招きすれば、ブラックドラゴンは嬉しそうな声を上げて頬擦りしてきた。
「今から魔法陣を出すから、妾の後についてこい。景色ががらりと変わるが、怖がらんでよいぞ」
漣華さんに言われて、ブラックドラゴンは頷いた。
門の方を振り返ったら、ギルマスとか冒険者とか商人とかが引きつった顔をしていた。解体屋の女の人だけがくすくす笑ってる。ダッドさん達も目を真ん丸くしてこっちを見てた。
「帰りますね~」
通じないだろうけど、一声かけて手を振った。女の人だけが返してくれた。
魔法陣をくぐれば、見慣れた我が家の真ん前。果実の甘い匂いがやけに懐かしく感じる。それぐらい濃い1日だった。
「ほら、ここがうちらの家」
魔法陣から出てきて目をぱちくりさせているブラックドラゴンに教えると、くんくんとにおいを嗅いで確認していた。
「では、先にドラゴンさんの寝床を見ましょうか」
最後にくぐってきた福丸さんが言うと、イニャトさんが肩から飛び降りた。
「ほれ、早う行こうぞ。ニャルクが起きたらやかましいでにゃ」
「はーい。じゃあ福丸さん、お願いします」
「はいはい」
せせらぎを渡って歩くこと10分。福丸さんの寝床に向かうのとは違う方向に斜めに歩いていくと、木が生えていないエリアに出た。
「ここです」
福丸さんが前足で示すと、ブラックドラゴンはくるくると周りを見て、満足げな声を上げた。
「気に入ってくれたみたいですね」
「はい、よかったよかった」
嬉しそうなブラックドラゴンにこっちまで嬉しくなってくる。あとは産みやすい環境を整えてあげれば充分だな。
さ、次のハノア農園への納品準備もあるし、忙しくなるぞ。
と、思ってたらいきなり産気づかれてみんなで慌てた。ニャルクさんも気がついて、森に帰ってることにもブラックドラゴンがいることにも驚いてたなぁ。まあ構ってられなかったけど。
結局ブラックドラゴンは7つの卵を産んだ。4、5個って言ってなかったっけ?
漣華さんも卵を見て、はて、と首を傾げてたから、珍しいことなのかな?
どれぐらいで孵るんだろう? ちゃんと準備しとかないとなぁ。




