第46話 よい国の王と強き友
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第1話の内容を変更しました。それに合わせて、主人公の好みを変更しています。ストーリーに矛盾が出ることはないと思われます。
よろしければ一度ご確認ください。
ある日、よい国と悪い国との間に争いが起こりました。
よい国の王は話をしようとしましたが、悪い国の王は聞いてくれず、たくさんの魔物を連れて攻めてきました。
よい国の王は民を守る為に戦いましたが、悪い国の魔物は強く、よい国はたくさん傷つきました。
よい国の王が困っていると、空からユルクルクスが、陸からベアディハングがやってきて言いました。
「共に戦おう。平和の為に」
よい国の王は、ユルクルクスとベアディハングと共に、悪い国と戦いました。
ユルクルクスは空から大きな炎を吹いて、魔物達を焼きました。
ベアディハングは地上を駆け回り、よい国の王や民を守りました。
そしてよい国は勝利しました。
よい国の王は強き友達を招きましたが、強き友達は空へ、陸へ、帰っていきました。
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「以上がニャオさんが買った、よい国の王と強き友、という絵本の内容ににゃります」
敷布団に寝そべって、ランプの灯りを頼りにニャルクさんに読んでもらっていた絵本の終わりのページを見て、おお、と声を出した。
家に帰ってから強まった雨脚が弱まり始めたのは深夜近くで、イニャトさんとバウジオは既に夢の中。雨音が気になって寝つけずにいたニャルクさんが、絵本をパラパラと捲る私に読みましょうかと声をかけてくれた。
「文章は少にゃいですが、その分絵がたくさん描かれていますね。可愛い絵本です」
「柔らかい絵なのに見開きいっぱいに描かれてるから迫力がありますね。特に漣華さんと福丸さんのところ」
「ええ、レンゲさんが火を拭くところが僕は一番好きです」
「私は福丸さんが走るところ。躍動感がありますよね」
イニャトさん達を起こさないように小声で感想を言い合えば、くぁ、とニャルクさんがあくびをした。
「あ、眠くなりました?」
「ええ、おかげ様で。ニャオさんも寝ませんか?」
「ちょっと夜風に当たってきます」
「濡れにゃいようにしてくださいね」
「はーい」
ハノア農園に卸しに行くのは明日の予定だから、そこそこで寝ないとね。
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「寝つけませんか?」
家の外に出ると、毛並みをしっとりと濡らした福丸さんがいた。
「寝床に帰ったんじゃなかったんですか? 何かありました?」
簾を下ろして小声で聞けば、ふふ、と笑われた。
「夜食に林檎を食べていたら違う味がほしくなりまして。葡萄をいくつかいただいても?」
「……どうぞ」
あんた、今から食べるんかい。もう深夜なのに。
あはは、と笑うと、ありがとうございます、と返された。
漣華さんはいない。用事があると言って、庭に帰ったままだ。
「レンゲから聞きましたか?」
葡萄を摘む福丸さんが聞いてきた。
「はい」
何を、とかは確認しない。雰囲気でわかるから。
「わたくしから言うことではないから黙っていましたが、やっと言えたんですねぇ」
満足げに頷く福丸さんに、今度は私から聞いてみる。
「福丸さんは、どうして漣華さんやシヅさんについていったんです?」
「そうですねぇ……。特に理由はありませんが、何やら面白そうだったもので。なんとなく、ですね」
なんとなく、か。第六感でも働いたのかな。
「人間同士の戦争に興味などありませんでしたから、シヅがいなければ関わらなかったでしょうね。レンゲも同じ。それほどに、わたくし達にとってシヅは大切な方でした。彼女の頼みだからこそ、いつ来るかわからない掌紋保有者を待ってもいいと思えたんです」
福丸さんは葡萄を両手に抱えて近づいてきた。
「そして来たのが、シヅと同じ匂いをさせるあなたです」
「……私、シヅさんみたいに立派じゃないですよ?」
「安心してください。シヅも人並みに我が儘で臆病な方でしたから。でもその分優しかった。ニャオさんも充分優しいです」
「私が?」
「あなたのおかげで、生活できている方々がいるでしょう?」
思い浮かんだのはダッドさん一家だ。
「あなたが気にかけることで、救われる人が現れ、解決する事柄が増えるでしょう。ですが全てを救えるとは思わないように。あらゆる不幸を振り払うには地上の魂は脆過ぎる。わたくし達はシヅの時と同じようにあなたの傍にいますから」
漣華さんがしたように、福丸さんは額に鼻をくっつけてきた。
「おやすみ。新たな掌紋の子。新たな友よ」
足音を立てないように、福丸さんは寝床に帰っていった。
簾を捲って家に戻る。敷布団に寝転べば、兄弟猫の寝息とバウジオのいびきが聞こえてきた。
やんだなぁ、雨。
福丸は20房持っていきました(笑)




