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第32話 必要な物を買う為に

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

明日は閑話を挟みます。いつものあの方々です。

 当初は1人ずつ家を造る予定だったけど、なんとなく最初にでき上がった家にみんなで住むことになった。

 登りやすくする為の階段もつけようと考えてはいたけど、ニャルクさん達はもちろん私も軽々登れるし、バウジオもひょいと飛び乗れるから、木登りできない魔物対策としてなしになった。

 残る2本をどう活用しようかと考えた結果、1本は物置に、もう1本はのんびりできる場所にしようと決まったから、それぞれの木に願いを込めながら水をあげると、翌日には立派な成木に育ってくれた。

 物置予定の木は幹が緩やかな階段状になっていて、家を造った木と同じぐらいの高さにスペースがあって、そこにいろいろ置けるようになっている。床と屋根、簡単な柵だけで充分な物置になると思う。根元には私が入れるサイズの樹洞ができていて、中に入ってみるとひんやりとした地下空間が広がっていた。


「ここにゃら食べ物を保管するのにうってつけじゃのう」


 そう言って、イニャトさんは果実や燻製をせっせと運び込んでいた。

 のんびりする用の木はちょっと形が違っていて、中腹から上部分が太めに枝分かれしていて、葉が生い茂っている。


「ここはハンモックをかけるのに適しているかもしれませんね。葉が太陽光を遮ってくれるので熱が籠ることもにゃいですし、多少の雨にゃら通さにゃいと思います」


 枝の間に入り込んで内部を確認していたニャルクさんが言った。


「影が広くて濃いので、わたくしが昼寝をするのにも丁度いいですね」


 木を見上げていた福丸さんがにこにこ笑った。

 一通り確認し終えてから、私達は3本の木の真ん中辺りに腰を下ろした。


「じゃあ、今後必要になりそうな物は食品とハンモックですかね?」

「あと、床に塗るネムネの樹液も買いましょう。あれを使えば床がつるつるになってささくれもにゃくにゃりますし」

「ベッドはさすがに無理じゃろうから、敷布団を買おうかのう」

「敷布団があるんですか?」

「異世界人の知恵じゃよ。あれが伝わる前は固い板に薄い布をかけるだけじゃったらしいぞ」

「寝苦しそうですね」

「それと、植物に関する本もほしいですね。食べられる草や毒草が詳しく書かれている物がいいです」

「お金は足りそうですか?」

「今考えた物以外も買うとにゃると、ちと心許にゃいかもしれんのう。そうじゃ、果実をもっと植えて、それを商人ギルドに売りに行こう。ニャオよ、手伝っておくれ」

「もちろんです」

「にゃほほほほ、お前さんが願いを込めて育てた実は普通の実よりかにゃり美味いからのう。いい値がつくはずじゃぞ」


 軽いお昼を済ませてから、早速果樹園造りに取りかかった。

 林檎は本数を増やして、その近くにイニャトさんから預かった種を植えていく。ちなみにククルは柿、モラは無花果、シュテムはサクランボにそっくりだ。

 少し疲れたからのんびりする用の木にもたれかかって、ニョキニョキと伸びていく苗木の様子をぼんやり眺めていたら、バウジオが枝を咥えて近づいてきた。


「ぶぉふ、ぶぉふ」

「バウジオ、咥えたまんまだから吠えれてないじゃん」


 投げてほしいってことかな? それなら受けて立とう。と、思ってバウジオから枝を受け取ったら、どこかにいったと思っていたエアレーの角だった。


「……これ、捨てていい?」

「ぶぁっほいっ!」

「ごめ、ごめんて?!」


 謝るから目の前で吠えないでよ?! てかこれ美味しいの?




 ▷▷▷▷▷▷




 寝転んでエアレーの角を齧っているバウジオの背中を撫でていた時、あ、と思い出してマジックバッグに入れていた鶏捕獲用の木の実の種を取り出した。


「ニャオさん、それは?」


 焚きつけ用の小枝を集めていたニャルクさんが足を止めた。


「隠れダンジョンに呑まれる前に、鶏を捕まえるのに木の実を使ったでしょう? あれの種です。どこかに植えてもいいですか?」

「ああ、あれですか。もちろんいいですよ。ただ、林檎とかの近くは避けた方がいいですね」

「ええ、間違って食べたら大変ですし」


 そうして、植える場所を一緒に探した結果、物置用の木の根元に決めた。


「これ、なんて名前なんでしょうね?」


 目の前でわさわさと実り始めた木の実をつつきながら聞いてみた。


「僕はわからにゃいです。にゃんの実でしょう?」

「ニムザの実ですね」


 のっそりと福丸さんが覆い被さるように覗き込んできた。


「ニムザの実、ですか?」

「はい。昔から小動物を捕獲するのに使われてきた麻痺の効果を持つ木の実です。人間も食べれば多少痺れますから、気をつけてくださいね」

「ありがとうございます」


 もう経験済みですわ。


「イニャト、この実は痺れるそうですから食べにゃいでくださいね」

「わかったぞ。摘ままんようにするわ」

「福丸さん、最寄りの町はバンブーエリアの向こうでしたよね?」

「ええ。歩いて1時間ほどですよ。遠目に建物が見えますから迷うことはありません。安心してください」

「じゃあ2、3日後に向かうとして、その間に売る用の果実とスパルナの羽根をゲットしましょうか」

「グーロという魔物を希に見ますが、あれは1頭でそれなりのお金になるそうですよ。見かけたら捕まえておきますね」

「ふにゃ?! いいんですか、フクマルさん?」

「ええ。美味しい林檎のお礼です」


 林檎のお礼って、そもそもその林檎が私達からのお礼のつもりだったんだけどなぁ。なんかこの先お礼合戦になりそうな気がする。

 ともかく、深めの木の器も買い物リストに加えて、林檎ジュースをご馳走しようかな。

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