第17話 事情聴取
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部屋に通されると長椅子に促されたから、むくれたニャルクさんを真ん中に下ろして隣に座る。イニャトさんは空いた反対側。バウジオはその向こうの床に寝そべった。
書類が山積みになってる机から紙とペンを持ってきたギルマスは向かい側に座った。
『✕○□○△?』
「何があったか聞かせてくれと言っとるぞ」
イニャトさんが翻訳してくれた。ニャルクさんが猫耳糞ジジイがばらまいた紙をギルマスに渡して説明してくれる。言葉が通じれば回復したばかりのニャルクさんに無理をさせなくてすむのにな。
『○◎□、✕△○✕』
「うんにゃ。このニャオはドレイファガス教徒ではにゃい。ちっと巻き込まれてしまった被害者じゃ」
『✕▽✕□、□✕……』
「にゃんと、それは大変でしたね」
『✕✕✕△、□✕▽✕……はぁ』
「お疲れ様です」
ギルマスがため息をついた。ニャルクさんとイニャトさんが心底嫌そうな顔をする。
「ニャオよ、どうやら先程の奴は数日前からこの村で依頼を出そうとしつこくしていたらしい」
「数日前って、私達もしばらくこの村にいますけど、全然会わなかったですよね?」
「夜、ギルドが閉まる直前ぐらいに人目を忍んで来てたみたいですよ。目立ちたくにゃかったようですね。陽のある内はどこかに隠れてたんでしょう」
「儂らは日暮れ前にテントに戻るよい仔じゃからのう。敵の目に触れんで済んでおったようじゃ」
「高慢にゃ態度も相俟って、誰にも相手にされにゃかったみたいですけどね」
ニャルクさん達の話をカリカリと紙に書いていたギルマスが顔を上げてこっちを見た。
『○□○△? ○✕?』
「えっとー……?」
「あやつが言っておった窃盗に覚えはあるかと聞いておるよ」
イニャトさんの翻訳に首を振る。
「盗みなんてしてません。絶対です。私は教会から放り出されたんですから」
怪我までしたんだから。
「その時に何か持って出た物はありますか?」
「持って出たというか、このマジックバッグをさっきのジジイに放り渡されましたけど……」
肩にかけていたマジックバッグを膝に置く。
「中身は簡単な地図と水が涸れない竹筒とお金、あとこれです」
取り出した短剣を机に置くと、ギルマスが眉間に皺を寄せて顔を近づける。
『○△□?』
「抜いてもいいかと聞いとるよ」
「はい、どうぞ」
短剣を手に取ったギルマスが鞘から抜いた。あれ? 真っ黒だ……。刀身は綺麗な青緑色をしてるはずなのに。
角度を変えながら短刀を眺めていたギルマスは鞘に戻して、机に置いた。そして紙に細かく何かを書いていく。
『△▽○○?』
「何かに使いましたか?」
「森にいる時、鶏や兎を捌くのに使いました」
あんまり詳しく言わない方がいいかもしれない。血抜きに向いてるとか、鳴くとか。聞かれない内はね。
「放って寄越されたマジックバッグを持ってきただけなんで盗んだ内に入らないでしょう?」
つい刺々しい言い方をしてしまった。まあまあ、とニャルクさんが手に前足を添えてくる。ギルマスが豪快に笑った。
『✕✕○! □✕□△!』
「あそこの教会は信者や気の小さい者達から御布施と称して金品を巻き上げておったから、これもその一部じゃろう。そのまま持っていけ、と言うておる」
「よかった!」
鳴くのはあれだけど、役立つ相棒だから助かった。
『✕○……』
ギルマスが顎を触りながらこっちを見る。何? その目。
『○□✕△?』
「……お前さんはケット・シー相手ににゃんにゃん鳴いとるが通じとるのか、と言っとるよ」
「おっふ……」
私、端から見たらにゃんにゃん鳴いてたの?
この小説を書くに至って一番気をつけないといけないのはニャルクとイニャトの名前を間違えないようにすることです。
何度かあべこべのまま投稿してました。
 




