第15話 ギルドにて
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みなさま、ありがとうございます。
一晩という約束だったけど、テントの寝心地を気に入ったイニャトさんが離れるのを渋ったから、フアト村にいる間は一緒に過ごすことにした。
村を回って、ニャルクさんにいろいろ教えてもらいながら、旅に必要な物をちょっとずつ買い足していく。驚いたことに醤油や味噌が売っていた。もちろんゲットだ。
2日後、職員さんがニャルクさんを呼びに来たから一緒にギルドに行ってみることにした。
髪の色が目立つらしいからフードをかぶって建物に入る。もともと着てた服は勿体ないけど捨てた。今着ているフードつきの上着はこの村で買った物だ。
「ではイニャト、ニャオさん。ここで待っていてください。バウジオ、吠えたら駄目ですよ」
「頼んだぞ~」
「お願いしますね」
「ぅぉふ」
ギルド内にあるテーブルに着いて、カウンターに向かうニャルクさんを見送る。イニャトさんは軽食コーナーまっしぐらだ。
「お前が食べられる物もあるといいねぇ」
床に伏せたバウジオに言えば、尻尾で返事を返される。
この建物、入口は1つだけどカウンターが左右にあって、右が冒険者ギルド、左が商人ギルドになっているらしい。町や村を守る要であるギルドはどこもこんな造りだって、入る前にニャルクさんが教えてくれた。
意識して見れば、右側にはいかにも冒険者みたいながたいのいい男女が数組。左側には質のいい服を着たわたくし成功しましたみたいなぽっちゃりさんが10人ほど集まって何やら話してる。
「おぉ~い、いいのがあったぞ~」
平皿を抱えたイニャトさんが戻ってきた。盛られているのはなんと唐揚げだ。
「うわっ、美味しそう!」
いい匂いを嗅いだ途端お腹が空いてきた。
「ニャルクはまだ帰ってこんし、先に食べ始めてしまおう」
ニャルクさんはまだ冒険者ギルドのカウンターに座ったままだ。
「じゃあこれ、お金です」
「あいよ~。きっちり三等分じゃにゃ」
硬貨を渡すと、イニャトさんは首からさげている小袋にチャリンと入れた。こっちも笛同様普段は毛に埋もれて見えない。
爪楊枝で1つ取って齧ると、しっかり下味がつけられていて本当に美味しい。
「これも異世界人から習ったやつですか?」
「どうじゃろうにゃあ? 習ったもんと元からあったもんと混ざっとるからわからんわい」
湯気が立つ唐揚げをはふはふと食べながら、イニャトさんはもう片方の手でバウジオに1つ渡す。熱さなんか関係ないように、バウジオは2回だけ噛んで飲み込んだ。
「これ、ちゃんと噛まんか」
「ぅぉふ」
「バウジオ、私のもあげる」
「うおふ!」
「静かにせんか」
3つ目を食べ始めた頃、バタンッ! とギルドのドアが激しく開く音がした。目をやった先にいたのは、お下品教会にいた猫耳おじさんだった。
「げっ……」
「あの服、ドレイファガス教の奴じゃにゃ」
イニャトさんが言った。
「ドレ……?」
「ドレイファガス教じゃ。悪神ドレイファガスを崇拝する邪教じゃよ。召喚術を禁術にすることに最後まで反対しておった三つの国の1つに本山を置く宗教じゃ。噂では各地の隠れ教会で召喚術を試みておると聞くが……まさか」
イニャトさんが私を見た。
「私がこの世界に来た時、あいついました……」
「にゃんと……」
イニャトさんが机に乗り出してフードを直してくれた。髪がはみ出てたらしい。
『✕○□✕! □△!』
冒険者ギルドの受付嬢に猫耳おじさんが詰め寄る。本能で危険を察知したのか、ニャルクさんは既にカウンターを離れていた。
「なんて言ってるんです?」
「ふむ、頼んでいた依頼はいつ受けつけてくれるんだ、仕事が遅い、と喚いておるわ」
唾を飛ばす勢いで怒鳴る猫耳おじさんに対して、受付嬢は凄いいい笑顔で対応してる。肝の据わり方が半端ない。惚れそう。
『✕✕✕! ✕✕✕✕✕!!』
聞くに堪えない暴言だということは、受付嬢の引くついた口角や、冒険者、商人達の不快な表情、兄弟猫の膨れ上がった尻尾で察しがついた。
周りの空気が冷えていくことに気づかないのか、猫耳おじさんは握り締めていた紙の束を受付嬢に向かってばらまいた。近くにいた冒険者数名とニャルクさんが拾って内容を読む。ニャルクさんの目が見開かれた。
それを見たイニャトさんが机から離れて、一番近くに舞い落ちた紙を拾って戻ってくる。
「なんて書いてるんです?」
覗き込んでも当然読めない。イニャトさんは、あー、うー、と唸った。
「うーんとにゃ、これにはにゃ、情報求む。黒髪直毛、黒目の小柄。肌は明るい杏色。理由は窃盗、と書いておる」
「……はあ?! 窃盗?!」
思わず声を上げた。ここに書かれた人物の特徴は完全に私だ。でも盗みなんかしてない! 冤罪だ糞ジジイ! 寧ろ被害者だわ!
静かに! とイニャトさんに前足で口を塞がれる。バウジオが唸り始めた。
「声がでかいわ! いいかニャオ、儂もニャルクもバウジオも、ここにおる連中の全員がドレイファガス教の話なんぞ鵜呑みにはせん。受付嬢を見ればわかるであろう? しかしこの場であやつに見つかれば騒動ににゃる。謂われにゃき罪でも堪えるんじゃ!」
「けど……!」
「堪えろと言うに!」
そう言っている間に、紙を読んでいた1人の冒険者が猫耳糞ジジイに声をかけた。あれ? あの人川原のキャンプ地にいた人じゃない?
振り返った猫耳糞ジジイに冒険者が何かを話す。そして制止する仲間を気にも止めず、ニャルクさんを指差した。
「まずい! 逃げよニャルク!」
イニャトさんが叫んで、バウジオが走り出したけど遅かった。
ニャルクさんに近づいた猫耳糞ジジイは、あろうことかニャルクさんの首を鷲掴み、そのまま床に叩きつけた。
動物を虐める奴はぴーーーーーです。




