表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/418

第99話 清ちゃん

ご閲覧、評価、ブックマークありがとうございます。

明日2回目のコロナワクチンを受けに行きます。体調次第では更新できない日があるかもしれませんのでご了承ください。

「ぅにゃ? にゃんじゃこれは。儂は林檎の生命力を種に移したかったんじゃが……」

「ラタナさんです。ラタナさんが、種は使えないから実の方を使ってって言ってきました」


 そう言えば、イニャトさんが目を丸くした。


「ラタニャ殿が? ここに来たんか?」

「いえ、湖にいるみたいですけど、話しかけてきたんです。この林檎を水路に埋めてほしいって」

「水路とにゃ?」


 イニャトさんが首を傾げる。アレン司祭が驚いたみたいに声を上げた。


『✕◎? □✕△○?』

「うむ、そうじゃ。先ほどメニャ湖に行った時、ニャオが会話をした精霊がラタニャ殿じゃ。子どもらの危機を知らせてくれたんじゃよ」


 イニャトさんの言葉に、アレン司祭は天を仰いで泣き崩れた。シスターさん達も、涙を流しながら祈り始める。何事?


「懺悔じゃな」


 漣華さんが首を伸ばしてきた。


「懺悔?」

「こやつらは種の存在を知ってはいたが、現物を見たことがなかったが為に信じ切れずにいた。種が見つかった後も、それが本当に精霊からの授かり物なのか疑っていた。しかし今、〈水神の加護〉を持つそなたが教会に伝わる精霊と話したと聞いて事実だったと知り、己の愚かさを嘆いておるのじゃ」

「……教会なのに授かり物を疑った、と?」

「混乱に乗じて紛い物が一気に増えたらしいからのう……。いつの時代にも馬鹿者はおるんじゃよ」


 うーん、司祭とかシスターでもそんなことあるんだね。まあ人間は疑う生き物だから仕方ないかな。


「いやいや、今そっちはどうでもいいからこっちですよこっち」

「うん?」

「林檎です林檎! 埋めに、植えに? 行きたいんですけど、ユニークスキル使ってもらっていいですか?」


 急がないとほんとに間に合わない。窓の外ももう真っ暗じゃん。


「構わんよ。ほれ入れ」


 漣華さんが私の目の前に魔法陣を描いてくれた。林檎を握り締めて飛び込むと、水路がある道に出た。城壁の内側だ。清ちゃんが入った竹筒の蓋を開けて、水路に向かってジャンプする。イニャトさん達が魔法陣から出てきたけど、水飛沫に隠れて見えなくなった。

 水中に卵は見当たらない。でもいつ流れてくるかわからないから、気を抜かないようにしないと。水路の底の、植えられそうな場所を探す。だけど見つからない。丁寧に石を敷き詰められてる。あれをのけるのは大変だな。


「清ちゃん、出てこれる?」


 声をかければ、にゅるり、と頭を出してきた。


「ごめんなぁ。これ、どうしたらいいかわかる?」


 竹筒を腰から外して、紋様が浮かんだ林檎を見せた。そしたら清ちゃんは体の半分を出して、林檎に突起がある口をくっつけた。と、思ったら、つるん、と呑み込んでしまった。


「……は?」


 太さ2センチぐらいしかない清ちゃんが、小さくない林檎を丸呑みにした。皮膚が伸び切ってる。苦しがってるようには見えないけど、大丈夫なの?


「ニャオー、だいじょーぶー?」


 ドボンッと音がして、緑織が飛び込んできた。青蕾と紫輝もついてきて、3人で目の前に並んだ。


「お前達、この石をのけられる? 土が見えるとこまで剥がしてほしいんやけど」


 底に敷き詰められた石を指差させば、やってみるー、と言ってくれた。いい仔らだなぁ。

 綺麗に敷き詰められてても隙間はある。緑織達はそこに爪を刺し込んで、思いっ切り引っ張った。だけど動かない。私も“バンパイアシーフの短剣”で手伝う。紫輝が引っ張る石の隙間に切っ先を刺して、テコの原理を使って持ち上げようとするけど、うまくいかない。

 踏ん張ってたら、緑織と青蕾が引っ張っていた石を離して加勢に来た。緑織は紫輝と並んで石に爪を引っかけて、青蕾は紫輝の尻尾に噛みついて紫輝ごと引っ張ってる。痛くないの? と聞こうとしたら、ボコッと石が浮いた。土が見える。


「「「とれたー!」」」

「ぃよっしゃ! ありがとうおチビ達! この調子でどんどん剥いでって!」

「「「はーい!」」」


 1つ剥がれれば後は簡単だからね。私も剥がそう。

 順調に石を剥がしていって、土が円形に1メートルぐらいむき出しになったところで手を止めた。緑織達の息が上がってる。魔力をたくさん使った後だもんね。疲れてるのにありがとうね。

 林檎を植える為の穴を掘って、清ちゃんを見た。林檎を吐き出してる。ころんと転がった林檎を持ち上げると、熟した柿みたいに柔らかくなっていた。紋様の形も少し違う。何したの?


「清ちゃん、大丈夫?」


 竹筒を持ち上げれば、清ちゃんはゆらゆら揺れた。大丈夫って言ってるのかな?

 清ちゃんに竹筒に戻るように言って、しっかり奥まで入ってくれたのを確認して、蓋をしてから腰に下げる。


「ニャオー、うえるのー?」


 青蕾が聞いてきた。他の仔らもこっちを見る。


「そうよ。何が起こるかわからんけぇ、気をつけてな」

「はーい」


 青蕾だけが返事をした。緑織と紫輝は尻尾でお返事。お疲れ様。

 膝をついて、掘った穴に林檎をそっと置く。横にのけてた土を被せて、平らにして、合掌する。

 水神さん水神さん。お願いします。子ども達を助けてください! お願いします!

 強く願えば、土が輝き始めた。地響きがして、仔ドラゴン達が駆け寄ってくる。3人まとめて抱き締めたところで、視界が反転した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ