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剣王とネイキッド。

 首筋の出血は薄い。ポタポタと流血はしているが、動脈は切れていない。骨折も死ぬほど痛いだけで、呼吸は無理なく可能。


 ノーダメージと言った所だ。


 ただし、少しでも首に負担をかければ、その時点で骨がズレて、死に至る。もう首は動かせない。


キュッ


 首の筋肉を締めて、骨を固定。このまま戦う。


 剣王を相手に舐め切った戦い方だが。


 自力治癒が出来ない以上、致し方ない。



 一旦距離を取って、その様子を眺めていた剣王は、立派なものだと感心した。


 ユーベルが星剣を振り、剣の無事を確かめていた時。なんならユリストに治癒を頼んでも良かった。それぐらいの間はあった。




 斬れ味、強度ともに問題ないと認識したユーベルは、即座に戦いに戻った。


 消え、斬る。


ギイッ


フッ!


 ユーベルは少し驚いていた。ネイキッドから距離を取った上で、意外そうな顔をしていた。


 ネイキッドの真後ろから、右脇を斬り上げた。


 だが、防がれ、あまつさえ反撃された。


 斬り上げがネイキッドの防御を抜けないのを察し、剣を引いた瞬間。


 ネイキッドは脇を締め、星剣をへし折ろうとした。



 ユーベルの口元に、笑みが広がる。


 剣気が、ふくらむ。



 攻撃がそこに来るのは、なんとなく想像していた。メイストーム師匠も、そうしたから。歴戦の勇士はそこを狙うのだろうなと、おぼろげに考えていた。


 だから、脇は余分に固めて、本当にダメージが少ない。


 それでも。


 ネイキッドは剣王に正対しながら、止まらぬ冷や汗と今すぐ逃げ出したい心と戦っていた。


 来る。


 これから、本気の剣王を、おれは見るのだ。



 怖い!!!


 帰りたい!!!



 涙さえ流しながら、しかしネイキッドの巨大化アズマは、更なる密度を高めていた。


イ イ イ イ イ イ イ イ


 右のき手。かすめただけで人間など跡形も残らぬ一撃を溜める。


 それを全力で。


 持久戦になると、巨大化アズマは使えなくなる。


 短期決戦しかない。ユーシアが戦線離脱して、回復の手が足りない以上。


 ・・・ネイキッドは、ユリストを積極的に関わらせる気は、無かった。


 おれがやる。



 腹のわったネイキッドを見て、ユーベルは一切の手加減を捨てた。先ほどまでの、苦しませずに殺す情けを捨てる。


 常時天風を使っているネイキッドは、実は放っておいても勝手に倒れる。


 ゆえに持久戦を仕掛ける。


 ユーベルの天風はヴェルグと同じくオンオフの切り替えが容易く出来る。しかも戦いの経験差によって、体力の運用もこちらが上。



 本気の剣王は、このように戦う。


 敵を斬り刻むのに執着するのではなく、最終的な勝利を求める。


 これが、王の戦略。


 剣王の技量で戦いをコントロールされれば、この世の誰であろうとそれを打ち破るのは至難の業。



ド!!


 ユーベルは、少し本気で避けた。


 ネイキッドの右腕が、伸びた。そしてユーベルの眼前全てを覆い尽くし、襲った。


 巨大化アズマ、部分肥大。しかも肘から順に効力発揮する事によって最大加速させた貫き手。


 常人なら、死んだ後に気付く一撃。


 やる、なあ。


 ヴェルグと比較しても、決して見劣りしない破壊力。


 ユーベルは嬉しくなった。



 どう、する。


 首を動かせない今出来る最高の攻撃が、あっさり避けられた。


 ネイキッドは考えていた。


 せめて、一撃。どうにかして当てないと、勝つも何も無い。


 だが剣王は速く、間合いの取り方も純粋に達人。弱点と言えば、魔法が使えないだけ。しかしそれも魔王ユーシアを相手取って一方的に勝つのだから、弱点ですらない。


 現状、ネイキッドの勝ち目など、ただの1つとして無かった。



 勝てない。


 ユーシアの回復を待っていたユリストは、そう認識出来てしまった。


 平気な振りをしているが、ネイキッドはもう上半身の自由が効かない。首を振れない以上、姿勢制御にも影響が出るだろうし、常時首に力を込めているために柔らかな動きを取りにくい。


 完調でも相手になるかどうか怪しいというのに。


 これでは、勝負にならん。ネイキッドはいつ斬られるのか、の話でしかない。


 ユリストは、抱いたままだった魔王の肉体に話しかけた。


「右腕。ユーシアを守ってくれ」


 その声に、ユーシアの右腕はピクリとも動かなかったが。


 左手が、ぐっと拳を突き出した。


 ユーシアの意思が、送り出してくれる。



 剣王が第一子。


 ユリスト参戦。

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